異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
38 / 203
第1章 様々な出会いと別れ!

第35話 ラリサとアニカ魔族領への旅立ち!

しおりを挟む
「拓哉とアニカ、気が抜けているぞ!今日はこれで終わりだ。このままなら怪我をする」

小次郎の怒声が響き渡る。

「師匠申し訳ございません。気合いを入れ直しますのでよろしくお願いします」

「小次郎さんごめんなさいなの」

「今日はお終いだ。 もうすぐ迎えが来るのだろ?3人の時間を過ごすといい」

上の空な理由を知る小次郎が提案する。

「すいません。師匠ありがとうございます。 お言葉に甘えさせてもらいます。 アニカ、風呂に入ったらラリサをリビングに呼んでくれないか?」

「わかったの」

それから風呂に入り、リビングに集まる3人。
だが、普段と違い誰も話そうとせず沈黙が続く。 このままだといけないと思い拓哉が話を切り出す。

「ラリサとアニカ、俺は結婚もしたことがなく、ましてや娘を持ったこともなかった。最初は同情心もあり、2人を受け入れたのかもしれない。でも毎日2人と過ごす中で、どんどんかけがえのない存在に変わっていったんだ。 今や、何が起ころうと2人を守ろうと思えるくらいに、これが親心なのかも知れないと最近気づいたよ。 正直離れたく無い気持ちでいっぱいだ! だけども親として子の成長を願わないといけないと思っている。うまく言えなくてごめんな。 ただこれだけは伝えたい。ラリサとアニカが戻る場所はここにあるから。離れていても家族だからな。何かあれば帰ってこい」

この時は何故かスキル冷静沈着が発動していなかった。 神様が気を効かしてくれたのかはわからない。 

拓哉は混乱しながらも涙ながらに2人に思いを告げた。

ラリサもアニカも初めてみる拓哉の泣いた姿に思わず涙が出る。

「うぅぅぅ...お父さん、寂しい...離れだくないよ~」

「うわぁぁぁんパパ~パパ~怖いの。ずっといっじょがいい...」

2人は泣きながら思いを伝える。アニカに至っては珍しく大泣きしていた。

思わず抱きしめながら話をする拓哉。

「よしよし俺も離れたくないよ。こんなかわいい2人を送り出すとか不安しかないからな。まだ将来のことはわからないけど、もしここで3人一緒に暮らすならアニカが強くなって魔物を狩る。怪我をしたらラリサが治す。 そんなことが平然とできたら今以上に暮らしやすくなると思わないか? アニカの狩った魔物は絶対おいしいぞ。 毒があるけどおいしい魔物にはラリサが浄化をかけたらおいしく食べれちゃうぞ。 食べてばっかりだけどそういう今はない楽しみが増える。キツイだろうけど俺はここでずっと待ってるから頑張ってきてほしいな?」

今語ったことも本当ではあるが、本心は2人の将来を考えてだ。 どこに行っても生きていけるような力をつけてほしいと拓哉は願っている。 だが敢えてそれを言っても2人は納得しないだろうと、将来ここで暮らす時の話を混ぜながら話したのだ。

「グスン...ごめんなさい。私頑張って少しでも役に立てるようになって帰ってきます」

本当はそうじゃないんだけどな~と拓哉は思いながらも、せっかく決意したラリサに口を挟むようなことはしない。

「グスン、ジュルル。 アニカもパパみたいに魔物を倒せるようになって、いっぱいおいしいものを食べるの」

アニカはまず鼻をかもうな。鼻水だらけだぞ。

ラリサの涙を拭いてから、アニカの鼻をチーンしてあげる拓哉。

「せっかくの門出だし、縁起のいい料理でも作ろうかな。 その名も何事にも負けない勝つという意味を込めてカツ丼だ」

ありきたりなダジャレっぽくなってしまったが、まぁいいだろう。 

「やった~久々のカツですね。はぁぁ~あの肉汁思い出しただけでジュルリ」

「やったの~カツカツカツ。お姉ちゃんから聞いて食べてみたかったの」

ラリサはヨダレを拭きなさい。 あ!そういえば、アニカはまだ食べたことなかったな。

「早速作ってくるから2人は荷物の最終チェックをしておきなさい」

「は~い」と返事をして二階に上がっていく2人。

オークの肉が腐る程あるからな。貴重なヒレを使うか。

オークヒレを切って叩いていく。 いい具合に柔らかくなったとこでパン粉を付けて揚げていく。パチパチキツネ色に揚がっていきいい匂いがしてくる。
玉ねぎの入った出汁に卵を流し込み半熟になるまで熱する。
炊き上がりの米をどんぶりによそい、半熟卵の出汁を上からかけて、サクサクカツを乗せて、上に三つ葉を乗せて完成。

リビングに持って行くと既にスタンバっている2人がいた。

「お待たせ!サクサクカツのカツ丼だよ」

待ってましたと言わんばかりに歓声が上がる。

「「「いただきまーす」」」

パクッもぐもぐもぐもぐ

「おいしい~脂身が少ないのに凄く柔らかくて濃厚な味がします。 カツはサクサクで卵はトロトロでご飯に凄く合います」

この食レポを当分聞けないと思うと寂しくなる拓哉。

「カツ丼おいしいの。 こんな美味しいオークを食べたことないの。 いつもパサパサしてて不味かったの...肉汁が凄くて甘~い。タレも甘くて卵もふわとろで幸せなの~」

はぁ~こっちのかわいい食レポもなくなるのか...寂しい。

「うまいな。 2人のおいしそうな顔見てると更にうまさが増すよ」

あ!あとで師匠にもお裾分けしなきゃな。多分、除け者にしたら闇討ちされそうだ。

その後、ワイワイしながら食事をして時間を見るとそろそろ迎えがくる頃となっていた。
そう思っていると外からヴァレリーの声がした。

「拓哉、迎えにきたぞ。準備はいいか?」

「わざわざお迎えありがとうございます。準備は整っていますのでよろしくお願いします」

「お別れの挨拶はしなくていいのか?」

気を使って言ってくれるヴァレリー。

「先程終わらせましたので大丈夫ですよ。ラリサとアニカ元気でな。成長を楽しみにしておくよ。 それから昨日のレシピな」

「お父さん、ありがとうございました。自慢できるくらいに成長して帰ってきます。 レシピもありがとうございます。アニカと試行錯誤してもっとおいしくしてみせますね」

「パパ~アニカも強くなってくるの!帰ってきたら一緒に魔物狩りに行きたい」

「2人には期待してるよ。ラリサ、俺に自慢してくれ、自慢の娘になってこい!アニカ、帰ってきたらいっぱい魔物を狩ってうまい料理作ろう。 2人ともいってらっしゃい」

「「はい!いってきます」」

2人は元気のいい挨拶をする。 ヴァレリーさんに「任せました」と伝えると頷き、転移をしてその場から消えた。
後ろから話しかけてくる小次郎。

「2人は行ったのか。寂しくなるが2人の成長を期待して待とう。 寂しくなったら酌くらいは付き合ってやる」

照れ臭そうに声をかける小次郎。

「ありがとうございます」

朝とは打って変わり迷いがなくなった拓哉は力強く返事をする。
しおりを挟む
感想 1,411

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...