異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
45 / 203
第2章 日常の憩い亭

第42話 骸骨様は常識人!?それとも変な骨!?

しおりを挟む
バルトと師匠が森から帰宅したと桜花が知らせにきた。

バルトと小次郎が厨房までくる。

「オリハルコンを手に入れてきたわい。 あと珍しいヒヒイロカネも出よった。 今日は刀とナイフを作るでのぅ。これから鍛治場にこもるわい。 すまんが冷えたビールを何本かと飯を作ってくれんか?」

え?ヒヒイロカネって日本で伝説になってる鉱石だよな!?こっちにもあるのか。 是非ヒヒイロカネの刀を見てみたい。

「おかえり、遅いから心配していたけど、2人が無事でよかったよ。先にビールは渡しておくよ。 飯は後で桜花に届けさせるから。 代金もその時に」

「すまんすまん。オリハルコン以外にも鉱石が色々あって、時間を忘れて掘っておったらこんな時間になってしまったわい。 ワシは鍛治場にこもるでのぅ。飯を頼んだぞい」

色々?どんだけ掘ってきたんだ! まぁバルトが楽しければいいか。

「俺もバルトと一緒に鍛治場に行ってくるから。 飯とキンキンに冷えたビールを頼む」

「え?師匠もですか。わかりました。ビールは渡しておきます。 料理は後で持って行きますね」

頷いて2人は鍛冶場に行った。

じゃあ今日は、お客さん少ないかもなと思う拓哉だった。

18時

「あ!もうこんな時間だ。 桜花、看板出しといて」

「うん」

看板を外に出しに行く桜花。

カランカラン!

「ヴァレリーさんいらっしゃいませ」

「今日は冷酒と適当につまみを頼む。 うむ?バルトと小次郎がおらんみたいだが...」

いつもの席に座りながら話すヴァレリー。

「鉱山で色々鉱石を入手したらしく、刀とナイフを作製してますね。 今日は外へ出ないと言ってましたよ」

「アハハハ。ドワーフらしいな、 酒と鍛治しか興味がないからな」

「まぁそのおかげで、道の舗装や武器やナイフ作ってくれますから助かってますよ。 ちょっと待ってください。作ってきますから」

拓哉は注文のおつまみを作りに厨房にいく。
程なくして完成したので桜花を呼ぶ。

「桜花、きてくれ」

「どうしたの?」

「これをヴァレリーさんのとこに持っていてくれ。 黄色いのがだし巻きで、こっちが明太子入りチヂミで、あとは冷酒な。 お盆から落とすなよ~」

バルトと師匠用の料理を作るので、桜花に配膳を頼む拓哉。

「わかってるもん。 これくらいできるんだよ」

そう言いながら厨房を後にする桜花。

ちゃんと手伝いもできるし、桜花はいい子だな。 う~ん...それにしても、なにを作ろうか? 冷たいものは、すぐぬるくなるし。 あ!スタミナ丼大盛りにするか!ビールにも合うしな。

大量のご飯とお肉を盛り付けていく拓哉。

「作ってみたが、直径30センチの器デカすぎたな。それにニンニク入れすぎたし鍛治場が大変なにおいになりそうだ。 まぁ作ってしまったものは仕方ないか」

拓哉はまだ知らなかった。 明日元気になった2人が地竜を越える大物を狩ることを...ちなみにニンニクは1つ丸ごと入れている。

ホールに戻る拓哉。

「ちょっと重いけど、これを2人に持って行って」

「わかったよ」と言って鍛治場に向かう桜花。

カランカラン

入れ替わる様にお客さんが入ってきた。

「いらっしゃいませ」

あ!久々のフェンリルだ。 後ろにだれか...骸骨?もしかして以前言ってたノーライフキングか!

「またきたよ。 今日はね~前言ってたノーライフキングも連れてきたんだ。 おいしい料理食べさせてね」

以前と変わらずフランクなフェンリルだなと思う拓哉。

「初めまして。ノーライフキングさん。俺はここで店主の拓哉です。よろしくお願いします。 そう言えばフェンリルさんにも、名前名乗ってなかったですね。すいませんでした」

見た目は聖職者のような衣装をきているが、顔が骸骨だからか、凄い怖いノーライフキング。 でも拓哉は平常運転である。

「これはこれはご丁寧なご挨拶ありがとうございます。 フェンリルからここで料理屋をしてる人間がいると聞いた時は、揶揄(からか)われているかと思いましたよ。 それと拓哉さん、私達は名乗れる名前がないんですよ。 フェンリルは名付ける習慣もないですし、私に至っては、今やただの骨ですからね。適当に呼んでください」

カタカタ骨を鳴らしながら笑うノーライフキング。
凄い気さくだけど、骨カタカタ鳴らすのやめて怖いから。

「では、フェンリルはフェンさんでノーライフキングさんはボーンさんで如何でしょうか?」

「フェンリルのフェンはわかりますが、何故私はボーンなのでしょう?」

「私の生まれた所では、骨をボーンと呼んでまして。 ダメでしょうか?」

流石に安直過ぎたかな?

「ボーンボーン!?素晴らしい!骨の私にピッタリですね。 拓哉さん、行きますよ! 骨だけにボーン」

ちょっ!いきなり骨を飛ばすな~!あぶね~。 ダジャレにもなってないし、おもしろくないわ。 急に骨飛ばして恐怖しかないぞ。

「いきなり何してるんですか!危ないですよ。 その骨どうなっているんですか!!」

カタカタ鳴らしながら笑うノーライフキング。

「申し訳ございません。 久しぶりに人間と話せたことと、名前を頂きましたから興奮してしまいました」

仕方ないけど骨飛ばすのやめてねと思う拓哉。 

骨は知らず知らずのうちに、ノーライフキングに吸収されて元の位置に戻っていた。

「拓哉ありがとうね。 僕にも名前を付けてくれて。早速だけど、ビールと暑い時期に食べられそうな料理をお願い」

「わかりました。お席に座ってお待ちください」

カランカラン!

桜花が戻ってきた。

「おかえり。 帰ってきて早々悪いけど、桜花ビールを出してもらっていい?」

「うん。わかったよ。 お客さんいらっしゃい」

早くも慣れた感じで対応する桜花。 拓哉は厨房に向かう。

ノーライフキング・フェンリル・魔王の会話

「ノーライフキングにフェンリル...いや、今はフェンにボーンか久しいな。 最近見なかったが、どこか行っていたのか?」

ヴァレリーが2人に話しかける。

「私は、部屋にこもって新しい魔法の研究をしてましたね。 フェンは、人間の街を見に行っていたそうですよ」

ノーライフキングが言う。

「そうなんだよね。 ここの料理が美味しかったから、人間の料理スキルが上がったのかと行ってみたけど、全然ダメだったね。 拓哉程の料理人は1人もいなかった」

そこにビールを持ってくる桜花。

「お待たせ。 生ビール3つだよ」

みんながありがとうと桜花に言う。

「では、久しぶりの再会を祝って乾杯」

ヴァレリーが音頭を取り、みんなと乾杯をする。

「ぷはぁ~これこれ。街の温いエールとは大違いだね」

「ほほぉ~これはフェンが言うだけのことはありますね~疲れた骨に沁みますよ」

なんでも骨基準なノーライフキング。

「本当にここの酒と料理はうまいからな。 ボーンも料理を堪能していくがいい。 ぷはぁ~キンキンのビール最高だ」

ヴァレリーが上機嫌に言う。

そんな感じで盛り上がっていると、拓哉が厨房から料理を運んできた。

「お待たせしました。 皆さんお知り合いだったのですね。 今日の料理は、冷やし中華です。 暑い日にピッタリですよ。 お好みでマヨネーズかけてください」

暑い季節は、"冷やし中華始めました"の文字を見ると食べたくなるんだよな。 それを思い出しての冷やし中華だ。

「見たことない料理だね。 見た感じ麺と乗ってる具材と一緒に食べる感じかな?」

「私も見たことがありませんね。 それにしても美しい料理ですね。斬新な美しさがありますよ。 フェンそろそろ頂きましょうか?」

2人は同時に口に含む。

ズルズルモグモグモグモグ!

「燻製!?に似たお肉(ハム)と麺をスープに絡めたらさっぱりしてるけど、肉の味もあるし、おいしい! どんどん食べれちゃうね」

「このシャキシャキした野菜(きゅうり)との相性もいいですね。 酢の酸味が食欲を掻き立てますね。見た目も味もいいです」

「次はこのまよねーずだっけ?かけてみよ。ん~これ凄いよ!ボーン早くかけて食べてみて」

フェンリルがはしゃぎながら言う。

「そんなにですか? ほほぉ~ほんのり酸味があり、こってりまろやかな風味が何故かこの卵と麺に凄く合います。 そのまま食べるのもいいですが、まよねーずをかけたらよりおいしいですね」

マヨネーズは、かける派かけない派に別れるけど、味変にはもってこいだからなと思う拓哉。 次は胡麻ダレで作ってみるか。

それよりボーンさんはどこで消化されるのだろう? 謎過ぎる。

「拓哉おかわりね」 「私にもおかわりをお願いします」

2人がおかわりを注文する。

「すまんが、俺にももらえないか?」

ヴァレリーが、うまそうに食べる2人を見て注文してくる。

「わかりました。 皆さん待ってください。 桜花の賄いも作ってくるから席に座っといて」

「やった~僕も冷やし中華食べたかったんだよ」

今日も憩い亭は、新たなお客さんと常連さんで盛り上がるのだった。
しおりを挟む
感想 1,411

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...