異世界のんびり料理屋経営

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第3章 魔国での一幕

第63話 城下町で買い物と安い魔物の串焼き!

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朝の朝食を終えた拓哉達は、今から城下町を見て回る予定である。 

貴族街

「セバスさん、この辺りは、豪華な屋敷ばっかりですね」

右を向いても、左を向いても、広い庭に豪邸という現実離れした風景が続いている。

「この辺りは、侯爵や伯爵が住んでおります。 あのちょっと先に見える辺りからは、子爵や男爵や準男爵の区画になっておりますね」

セバスが指を差した方を見ると明らかに小さく屋敷の規模が違う。

「区画分けされていて面白いですね。 私の住んでいた所は、貴族が居なかったので新鮮ですよ」

「ほぉ~拓哉様の所は、貴族制度がなかったのですね。 では、今回は色々楽しめるかもしれませんね」

セバスは、できる執事なのだろう。 お客様に対してプライベートを深く探ろうとはしない。 

「旅行自体初めてですので楽しんで帰ろうと思います」

「是非最高の思い出になるよう願っております。おっと!そろそろ、城下町です。 あちらにいる兵士に貴族の証明書を渡して通してもらう感じになります」

犯罪者が入れない仕組みなんだなと思う拓哉。

そう考えていると、兵士とセバスが話し始める。

「貴族証の提示と失礼ですが、城下町へはどのようなご用件で参られるのですか?」

セバスは、従い1枚の証明書を提示して目的を話す。

「魔王様のお客様を城下町へ案内しようと思いまして通ってもよろしいでしょうか?」

証明書を見た辺りから兵士達は直立不動となった。

「どうぞ、お通りください」

流石は、貴族街の兵士というだけあって、昨日の兵士とは違い、人間だからと変な目で見てくることもなく笑顔で対応する。

「拓哉様、まずどこか行きたい場所はございますか?」

「う~ん、食材を見て回りたいのと、昼は屋台に行きたいですね! 串焼きを食べたくて。 3人はいきたいとこある?」

ラリサとアニカと桜花に尋ねる拓哉。

「僕はないんだよ」

「アニカは、パパが行くとこに着いて行くの」

「私も、初めてでよくわかりませんのでお任せします」

3人が言う。

「そうか!じゃあセバスさん、まずは食材があるお店を案内してください」

「畏まりました」

セバスの案内で、一軒目の青物屋に着いた。

「いらっしゃいませ」

頭に一本のツノが生えたふくよかな女性がお出迎えしてくれた。

「あら!珍しい組み合わせしと~ね。 ゆっくりしていきんしゃい」

拓哉と桜花が付けているバッジを一瞬見たが、表情に変化はなく普通に接客をする女店主。

「見たこともない野菜がチラホラありますね。 これとかおもしろい形ですね」

拓哉が、目にした物は茶色ゴツゴツした棘のある野菜だった。

「これは、ククミスさね。 お肉と炒めて食べとおいしいんよ」

うまいかはわからないけど興味が湧くな。

「1つククミスをください。 ここで、味見してもいいですか?」

「汚さないなら構わないさね」

セバスがお代を払い、拓哉は受け取ったククミスをナイフで皮を剥いてカットして食べる。

「おっ!これはきゅうりの味に似てるな。 きゅうりより薄味で苦さもあまりないな。 みんな、これをつけて食べてみて」

もろみ味噌を取り出す拓哉。

3姉妹とセバスは、味噌をつけて食べる。

「味噌懐かしいんだよ。 普通の味噌とはちょっと違うけど、甘口な味噌とククミスが合うんだよ」

普通の味噌で食ったら塩辛過ぎて食えたもんじゃないからな。 やっぱりきゅうりは、もろきゅうにして食うのがうまいんだよな。

ここで、セバスもうまかったのか!?発言する。

「これは驚きしました。 ククミスは味が薄くてどうしても苦手だったのですが、これを付けて食べたらおいしいですし、この食感がよりおいしくさせますね」

それを聞いた女店主が話してくる。

「お客さん、あたしにも食べさせてくれんかね?」

「構いませんよ。 どうぞ」

それを聞いた女店主が食べ始める。

「なんね!?こんなうまいもん初めてさね。 うちに置いたら売れるさね。どこに売っとるか教えくれんかね?」

興奮しながら話す女店主。

「すいません! たまたま行商人から買った物でして、もう手に入らないと思います」

「そりゃ、残念さね。 珍しく売れそうだと思っと~のに」

「申し訳ございません。 そろそろ行きますね。 ありがとうございました」

逃げるように言う拓哉。

「またきんしゃいね~」

次の目的地に向かう時に、ラリサが話しかけてくる。

「なんで、売ってあげなかったのですか?」

「う~ん? まずは、今売ってしまったら絶対に次も要求されるだろ? そしたら、どうやって卸すの?ってなる。 更に広まったら出荷量が膨大になる。 手が回らないし、住んでる場所までバレて面倒なことになるだろ? まぁ信用できる人ならいいけど、見ず知らずの人に売ることは今後もないかな。 ラリサもアニカも桜花も、皆が善人という訳ではないから悲しいけど、まずはその人をよく観察して信頼できるか見極めなさい」

桜花は、大丈夫かもしれないけど、ラリサとアニカは人の醜さを知らないだろうし、今後生きていく上で人の見る目を養ってほしいと思う拓哉。

「はい! 言われてみたら、その後を考えていませんでした。 それと、ちゃんと見極められるようになります」

「アニカも、パパみたいになれるように頑張るの」

「僕は、ある程度オーラとかでわかるから大丈夫なんだよ」

3人が返事をする。

それを聞いたセバスが話してくる。

「拓哉様も、立派な父親ですね。 しっかりした教育をされていて感心致しました」

「まだまだ全然ですよ。 分からないことがいっぱいです。私でよかったのか心配になりますよ。 真っ直ぐ育ってくれたらいいのですが」

「大丈夫ですよ。 ラリサ様もアニカ様も普段から優しい素直な子ですし、桜花様も父親思いのいい子だと感じますよ」

「ありがとうございます。 それにしても、久しぶりですよ。こうやって、娘の話を聞いて頂いたのは、セバスさんは聞き上手ですね」

「そうでしょうか?ありがとうございます。 おっと、次のお店が見えてきましたよ」

肉屋と干物屋を回ってみたが、目新しい物はなくセバスさんに、魚を見たいとお願いしたのだが、朝一に市場が開かれるらしく朝一に行かないとないとのことだった。 

歩き回っていると、お腹が空いたので屋台を見に行くことにした。

屋台街に近づくと、タレの焦げたいい匂いやジューっという焼ける音、それから1番は客引きをする声があちこちから聞こえる。

一軒の屋台の男性から声をかけられる。

「そこのカッコいい兄ちゃん達と美人さん方、よかったら食っててくれよ」

カッコいいと言われて悪い気はしない拓哉は買うことにした。 

「じゃあ、人数分くれないか?」

「おっ!あんがとな。 今すぐ焼くから待っててくれ」

ガタイのいい真っ黒に日焼けしたおっちゃんが言う。
それから、何の肉かはわからないが、串に刺された肉をタレに漬けてから焼き始める。

拓哉は、当たりの店だと確信する。 何故なら作り置きではなくその場で焼いて熱々を食べさせてくれるからだ。

「おっちゃん、それなんの肉使ってるの?」

拓哉が気になって聞く。

「ホーンラビットの肉だな。安い肉だが、うちはしっかり処理をしてタレも特製だからな。期待してくれ。 にしても国賓待遇の兄ちゃんが、それも珍しい人間がこんなとこで飯とは驚いたぞ」

ズケズケと聞いてくるおっちゃんだが、拓哉は全然悪い気はしない。 むしろ、裏表の無さそうな感じに好印象を抱く。

「高い料理を食べるよりこういう料理の方がうまいからな。 それにしてもいい匂いだ」

「違いねぇ~。肩こりそうな料理よりこいつの方がうまいぞ! よし! 焼き上がったから食ってくれ」

手渡しされた串焼きを食べる。

「おっ!甘辛いタレがうまいな! しかも、おっちゃんの言う通り下処理がしっかりされてて臭みもないし柔らかいお肉だし最高だよ」

ラリサも、おいしいのか笑顔で話し始める。

「おじさん、凄くおいしいです。 ホーンラビットが、こんな柔らかいとかビックリしました。 普通は、固くて臭くて全然おいしくないのに」

「パパ~おいしいの。 もっと食べたいの」

横で桜花も何かを言っている。

「モゴモゴモゴモゴモゴモゴ」

「桜花、飲み込んでから話しなさい」

「ゴクン! 僕もまだまだ食べたいんだよ」

それを見ていたおっちゃんが笑う。

「ぶははは! 嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。 何本食べる?」

嬉しそうに聞いてくるおっちゃん。

「みんな、後何本食べる?」

ラリサとアニカは3本と言い桜花は20本と言った。 セバスを見ると恥ずかしそうに「5本」と指で伝えてきた。 

「おっちゃん、34本だけど大丈夫かな?」

「こりゃ、ありがてぇな。 今すぐ焼いてやるから待っててくれ」

おっちゃんが、焼き始める。

その後、焼き上がった34本を受け取り食べながらブラブラする拓哉達。

「まさか、セバスさんもこういう物を食べるとは思いませんでしたよ」

「昔は一切食べなかったのですが、最近あるお菓子にハマりまして、休みの日に息子と一緒に行くのですが、その時に屋台や酒場でお昼を食べることが多くなりましてね。 それにしても、あんなにおいしい屋台は初めてでしたよ。 ついつい食べ過ぎてしまいお恥ずかしいです」

やっぱりあのクオリティーの屋台は珍しいんだな。

「そうだったのですね。 それにしても、お菓子ですか?気になりますね~」

「ちょうどよかったです。 今そのお店に向かっておりますので一度味わってみてください」

一体どんなお菓子なのか、楽しみになる拓哉であった。
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