異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
71 / 203
第3章 魔国での一幕

第68話 獣人側の王子と決闘!?

しおりを挟む
城の中庭

ライオンの獣人と目が合ったゼーランが話し始める。
「ドミニク王子、こんなところにどうしたのですか?」

ドミニク王子が、その場に腰を下ろして話し始める。
「うまそうな匂いがする方に来てみたら、ゼーランとその男がうまそうなもん食ってんじゃねぇ~か、俺にも分けてくんねぇ~かと思って声をかけたんだ」

拓哉は、昨日のドミニクの行動を見ているからか、めんどくさいのが来たな~と思うのであった。 だが、王子であると聞いてしまった為、無下にも出来ず了承する。

「いいですよ。 ちょうど焼けましたし、良ければお酒も呑みますか? それと、拓哉と言います。よろしくお願いします」

拓哉は、皿に肉を盛り付けてドミニク王子に酒と一緒に渡す。

「こりゃ本当にうまそうじゃねぇ~か。 う...うめぇ~これなんの肉だ? 柔らけぇし、旨味が凝縮されて噛んだ瞬間、旨味という旨味が爆発しやがる。 ゴクっゴクっ!ぶはぁ~がははは、これもうめぇ~! こんだけキレのいい酒は初めてだ。 無限に呑めちまうじゃねぇ~か。あとで、この酒をあるだけくれ」

昨日と同じように豪快に食べるドミニク。 ビールが気に入ったのか、全部くれという意味不明な要求までしてくる。 更には途中から入ってきたにも関わらず、一切の遠慮もない。

「この酒うめぇ~な。 まだあんならくれよ。それから肉もどんどん焼け焼け」

拓哉は、遠慮がないのかこいつはと思う。せめて金くらい出せと。嫌いな人種の為、早くお開きにしたくなった。

笑顔のまま話す拓哉。
「これ火竜の肉なんですよね。 あとこのビールってお酒も普通だと手に入らないんですよ~。 せめてお礼くらい言って欲しいのですが? 急に来て、王子だがなんだか知りませんが、あるだけくれだの肉焼けだの俺はあんたの使用人じゃない。 王子だろうが、常識を持てよな」

その言葉を聞いてビールを呑んでいたゼーランが驚いて咽せる。 普段から礼儀に欠ける王子なのだが、王子ということと怒ると手が付けられないこともあり、周りは見てみぬフリをいつもしている。それを知らないにしても、拓哉が王子に対して言った言葉にゼーランは驚いたのだ。

王子も初めて言われたのか、最初はぽかーんとしていたが、次第に青筋を立てて顔が赤くなる。

「おい! お前が何者か知んねぇ~が、俺様に楯突いてんじゃねぇ~ぞ。 喜んで肉も酒も差し出しゃいいんだよ」

拓哉は思った。
あ~獣人にもこういうやついるだと。 正直、王子だろうがなんだろうが関係ない。拓哉にとっては、どうなろうと知ったことではない。

「はぁ~まさか、人間以外の国の王族にもどうしようもないやつがいるとはな。 あんたとは関わりたくもないからどっかに行ってくれないか? 顔を見るだけで虫唾が走る」

拓哉の言葉を聞いたドミニクは、拓哉の顔面を殴ろうとする。

拓哉は、絶対防御がある為、わざと殴られて腕を掴み捻り上げる。 

「ぐぅぅ! 放しやがれ。 クソが~」

ドミニクが吠える。

「おいおい、そっちから殴ってきて放せは、都合良すぎると思うんだが!?」

本当に頭大丈夫なのかと思う拓哉。

これを見ていたゼーランが提案する。
「拓哉、とりあえず放してやれ。 このままだと拓哉が悪者になるぞ。 そこで、お互い納得がいかないなら決闘するというのはどうだ? ドミニク王子、獣人なら強いことが全てでしょ? 拓哉も、国との問題より個人的な解決の方がいいだろう? どうでしょうか?」

拓哉は腕を放してやる。

「俺は構いませんよ。 それで、ドミニク王子が納得して関わらないで頂けるなら」

「俺も構わねぇ~! 人間に負けるわけがねぇ~からな。 もし、俺が勝ったらこいつは俺の奴隷だ」

ゼーランが、それを聞いて話そうとした時にヴァレリーがやってくる。

「話は聞かせてもらった。 それと、両者の要求が釣り合っておらん。ドミニクが奴隷を要求するなら、お前が負けた場合、関わらない+迷惑料を払え。いいな? それから、俺と拓哉は友人だ。 負けた場合、お前は2度と魔国に立ち入るなよ。 国王にも伝えておくからな」

ヴァレリーがやってきて話をまとめ始める。

ドミニクがヴァレリーの問いに答える。
「魔王様、私は構いません。 負けるはずがありませんので、負けた場合はその条件を受け入れます」

魔王に対しては、しっかりした受け答えをするドミニク。

「ヴァレリーさん、俺も構いませんよ。 今からでも問題ありません」

ヴァレリーは、拓哉が勝つだろうと考えている。 
それから何故、獣人の国の王が来なかったかというと、人間の国との奴隷問題が大きくなり王が多忙な為に、第一王子であるドミニクが代わりにやってきたのだ。

滞在中も、王族らしからぬ態度や行動が見受けられたが、ヴァレリーと国王が仲が良いことと、ドミニクが王族であることで、目を瞑っていた。 しかし、友人であり、国賓待遇で招いている拓哉に対して、あのような行動を取ってしまった為、これ見よがしにヴァレリーは仕掛けたのだ。
それといつから見ていたかというと、焼肉の匂いがして俺も食うぞと思いヴァレリーが中庭に向かった時、ドミニクが使用人にするような光景を目にした。

「その減らず口をすぐ叩けなくしてやらぁ。 今から相手してやるよ」

それを聞いたヴァレリーは、3人を転移させて闘技場に連れて行く。

「俺が審判をしてやろう。 武器の使用はなしだ。 スキルや魔法は認める。降参あるいは戦闘不能と判断したら負けだ。 殺すことは認めんからな。 2人とも用意はいいか?」

拓哉もドミニクも頷いて同意する。

「では、試合はじめ」

ヴァレリーが叫ぶ。

その瞬間、普段でもデカいドミニクの体が倍になり、赤いオーラを放つ。

「俺は、一回キレると手加減ができねぇ~んだわ。 初めから本気で行くから簡単にくたばんじゃねぇ~ぞ」

身体強化と獣神化を使ってくるドミニク。 闘技場の地面が抉れる程の蹴り出しで、一瞬にして拓哉の目の前まで行き殴る蹴るの連打をする。
あまりの猛攻に、一撃一撃凄い音が鳴り響く。 

それを見ていたゼーランが焦る。

「魔王様、今すぐ止めるべきです。 拓哉が死んでしまいます」

「ゼーランよく見ろ。 あの連撃を食らって拓哉は顔色1つ変えてないぞ。 それよりも、そろそろ拓哉が決めにくるからよく見ておけ」

ゼーランは、耐えている拓哉は凄いと思うが、一向に攻撃をする気配を見せず防戦一方
なんだと思い込みヴァレリーの言う事を信じられない。

「オラオラオラ! どうした?全然攻撃してこねぇ~じゃねぇか」

拓哉は、内心もう終わりにしようと考えた。

「そろそろ、満足したかな? ちゃんと舌噛まないように歯を食いしばれよ」

爆散しない程度に、最大の力を込めて腹にパンチを食らわす。
その直後、「うぐっ」という声を出しながら、ドミニクは、くの字に曲がり場外の観客席の壁へとぶつかる。
しばらくすると、ぶつかった勢いで生じた砂埃の視界もクリアになり失神しているドミニクが姿を現した。

「勝者拓哉! 賭けの事は、俺が責任を持って対処してやるから安心しろ。 それにしても遊びすぎだ。 開始直後にヤれなかったのか?」

「めんどくさい対応ありがとうございます。 簡単に倒せましたが、一瞬で倒したら後々難癖つけてきそうじゃないですか。 手加減したので、本来ならさっきの1発で終わらすつもりなく、もっとギリギリまで追い込もうとしたんですがあの有様です」

ヴァレリーは思った。 王子は、決して弱くはない。 魔族なら将軍クラスの実力はあっただろう。 しかし、スキルをフルに使った攻撃を全て止めて一発でしとめる拓哉を見て、思っていた以上に強いと感じた。

「難癖をつけてきても大丈夫なように魔道具でしっかりと記録してある。 魔王城での行いや国賓待遇の拓哉に対する態度それに戦い全てだ。 これで本人然り王族然り問題はない。 それと、獣人の国に引き渡しが終わるまで、牢屋にぶち込んでおくから出会うこともないだろう」

ヴァレリーも相当悩みの種だったんだなと思う拓哉。

「会わないのはありがたいですね。 それに用意周到ですね。 いいように利用された感じがしますが、助けてもらったのも事実ですしお互い様ですね」

「それより、あそこで顎をあんぐりさせているゼーランさん大丈夫でしょうか?」

拓哉のあまりの強さに驚いて顎を外してたまま立ち尽くすゼーラン。

「ゼーラン終わったぞ。 いつまで呆けているつもりだ」

無理矢理引っ張って行くヴァレリー。

ゼーランは、我に返り。
「なんですか? あの強さは! あれが人間なのですか?」

慌てた様子で話すゼーラン。

「そんなことはどうでもいいから、ドミニクを担げ。 拓哉戻ったらなんか作ってくれ。 腹が減った」

「人使い荒いですね。 さっきまで戦ってたのに。 仕方ないですね、何が食べたいのですか?」

「あんなやつ拓哉なら余裕だろう? もちろん食べ損なった火竜の焼肉とビールだ」

かなり食べたかった様子のヴァレリー。

ゼーランは、あんな激しい戦いをしたにも関わらず何もなかったかのように話す2人に信じられないという目をする。

「はいはい! なら早く転移お願いします」

戻った後は、王子が負傷したことで大騒ぎになったが、獣人側の護衛とそこに居合わせた魔国側の貴族に映像を見せたところ納得されて何もお咎めがなかった。

その後は、何故か大量の焼肉を焼かされてみんなに振る舞うこととなった。 正直、拓哉は何か解せぬと感じるのであった。
しおりを挟む
感想 1,411

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...