異世界のんびり料理屋経営

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第3章 魔国での一幕

第70話 おっさん達の飲み会! 魔国での最後の夜!

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決闘の後すぐ、ヴァレリーに対する愚痴をひたすら言いながら、ひたすら肉を焼き酒を振る舞う時間を過ごした拓哉。 途中からメイドや執事やジュドーや他の料理人が来てくれて助かったが、城に滞在している招待客や城で働く人や兵士まで来る始末で流石に、疲れ切ってしまった拓哉は夕飯も食べずに夜まで寝てしまった。
まさかここまで、おおごとになると思っていなかったヴァレリーから謝られたのと代金として大金貨20枚(2000万)を渡された。大金貨を見た瞬間、ヴァレリーへ愚痴を言ってすいませんと心の中で思う現金な拓哉であった。

城の一室

目覚めた拓哉が、時計を見ると23時であった。 周りを見渡しても桜花の姿はない。
ふとテーブルに目をやると、置き手紙が置いてあり日本語で《あるじが、起きないからラリサとアニカのところに行ってくるんだよ》と書いてあった。 昨日の女子会のことを知らない拓哉は、いつの間に仲良くなったのだろうと疑問に思うのであった。

拓哉は、お腹が空いたのでアイテムボックスにある物を何か食べようと思った時にドアのノック音が鳴る。
トントン!

「ヴァレリーだ。 起きているだろうか?」

拓哉は、こんな時間にどうしたのだろうかと思う。

「は~い!さっき起きたばかりですが、どうされましたか? 鍵は開いているので入って頂いていいですよ」

それを聞いたヴァレリーは、ドアを開けて入ってくる。

「改めて昼間は申し訳なかった。 それから、また迷惑をかけることになるがお願いを聞いてくれないだろうか?」

そう言いながら頭を下げるヴァレリー。

拓哉は、何事かと思い尋ねる。

「どうしましたか? お役に立てる事なら言ってください」

それを聞いたヴァレリーは、目を輝かせる。

「本当か! 拓哉にしか頼めないお願いなんだ。 昼間に呑めなかったジュドーとセバスと宰相のダミアンがどうしても拓哉の酒が呑みたいと話しているのが聞こえてな。 あの3人は日頃からよく働いておるから褒美をあげたいと思っておる。 今からお願いできないだろうか? あ!金はちゃんと払う」

確かに、あの3人は何かと動き回って手伝ってくれてたなと思う拓哉。 せっかくなら呑ませてあげたいし、ヴァレリーの優しさも関係してお願いに答える拓哉。

「構いませんよ。 一緒に向かえばいいですか?」

「いや、俺が声をかけておくから集まり次第、呼びに来るから待っててくれ」

そう言い残してヴァレリーが出て行った。

拓哉はその間に、ネットショッピングでワイン・焼酎・ウイスキー・日本酒・ビールとつまみを購入しておいた。

購入し終わった辺りで、ノックの音とセバスの声が聞こえる。
トントン!

「拓哉様、お迎えに上がりました。 ご準備はよろしいでしょうか?」

普段よりも、テンションが高いのか1段階高い声になっているセバス。 

「は~い! 今行きます」

ドアを開ける拓哉。
「参りましょう」とセバスに言われて、後をついていく拓哉。

連れてこられたのは、魔王城にある一室だが、ドアが普通より豪華だった。 
セバスさんがノックをし開けると、3人が待っていた。

「拓哉、待ってたぞ」

「お待たせ致しました。 それよりヴァレリーさん、ダミアンさんのことそろそろ紹介してくださいよ」

最初に会って以来、何かと忙しく紹介される暇がなかった。 せっかく、一緒に呑むならと拓哉が聞く。

「おぉ~悪かった。 確かに、紹介していなかったな。 こいつは、俺の右腕だ。 親父の代からずっと仕えてくれている。 仲良くしてやってくれ」

なんとも適当なヴァレリーらしい紹介をされる拓哉。

「魔王様は相変わらずですなぁ。 そのような紹介だと誰にも伝わりませんぞ。 改めて、私は魔国で宰相をしているダミアンと申します。 ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません」

宰相というだけあって、しっかりした人だなと思う拓哉。

「こちらこそ、ご挨拶する暇もなく申し訳ございませんでした。 料理屋をしている拓哉と申します。 いつもヴァレリーさんには大変お世話になっております」

ダミアンは、拓哉の素性を一切知らされておらず、ヴァレリーとヴィクトリアから丁寧にもてなすようにだけ伝えられていた。本当は、このタイミングで関係を尋ねたかったが、宰相としての経験上、今聞いてはダメだと感じていた。

「挨拶も済んだことだし、早速呑もうではないか。 拓哉、出してくれ。それから乾杯の音頭も頼む」

そう言われたので、アイテムボックスから購入した酒とつまみを出す拓哉。

「ビール行き渡りましたね。 最終日に、皆さんとこうやって呑むことができて嬉しく思います。 この4人の出会いに乾杯」

一斉に呑む4人。

「ぷはぁ~いや~念願のビールおいしいですね~。 昼間は見ているだけでしたからおいしそうに呑んでる姿が羨ましくて。 この茶色の四角いお肉(角煮)おいしいですよ。濃厚なソースに漬け込まれたお肉とプルプルとして舌に触れただけで崩れるお肉。 素晴らしい」

角煮を食べながら称賛するジュドー。

「これは、皆様止まらないわけですね。 呑んだ瞬間の味わいに喉を通る時の刺激と後味の良さ。 エールとは比べ物になりませんね。 それに、白い枝(さきイカ)のような物も噛めば噛むほど、味が滲み出ておいしいですね。 それからビールを呑んだら...これは合いますね。 最近お酒はやめていましたが、また呑み始めてしまいそうですよ」

言葉の丁寧さとは、裏腹に豪快に呑むセバス。

「皆さんの言う通りビールもおいしいですが、ワインもいけますぞ。 雑味がなく、渋みもないブドウ本来の味がしっかり感じられ、舌触りも滑らかでまるでシルクのようですなぁ。 こんな高級なワイン呑んだことがありませんぞ。 拓哉殿、感謝致しますぞ。 ですが、明日からの晩酌が思いやられる...私のコレクションのどのワインでも、このワインには勝てませんなぁ」

ワイン好きなダミアンは、饒舌に語る。 晩酌が思いやられると言いながらも嬉しそうにワインを呑むダミアン。

「拓哉、本当に感謝する。 これで、部下も労うことができる。 今までは、金でしか報いてやることができなかったが、今後はジュドーに頑張ってもらい、食でも労うことができるだろう。 これも拓哉のおかげだ」

頭を下げるヴァレリー。

「もう頭を下げるのはやめてくださいよ。 ヴァレリーさんには、普段からお世話になっていますし、ジュドーさんは見込みある方だったので教えたまでですよ。 こちらも、ジュドーさんのおかげで負けられないと思わされましたからね」

「拓哉様~。貴方のおかげで私の料理人としての進むべき道がわかりました。 感謝してもしたりません。 見込みあるなどと、ジュドー感激であります」

ジュドーは、泣きながら語りだす。 ダミアンが、ジュドーの肩を抱き期待しているぞと声をかける。 それを聞いて更に泣き出すジュドー。

「普段見られない光景だな。 偶にはいいものだ。 それから、拓哉に伝えておくことがある。 明日、不正を働いていた貴族と先日の門番が粛清される予定だ。あとは、第一王子だが、使者がきて引き取りに来るそうだ。 その時、拓哉に謝罪をしたいとのことだが、断っておいたぞ。 代わりに謝罪にくるなら王自ら来いとな」

ワハハハと笑いながら語るヴァレリーだったが、この場で言うことかと思う拓哉。 貴族や門番の粛正は好きにしてくれと思うが、第一王子の件で謝罪はいらないし、ましてや煽るようなことを言わないでくれと思う拓哉。

「ヴァレリーさん、なんてこと言ってくれてるんですか? 王自らとかいりませんから! もし、来ちゃったらどうするんですか? あの親ですよ。会いたくありませんよ」

もうめんどくさいことに巻き込むなと思う拓哉。

「あいつは、バカではない。 それにわざと送り込んできた節があるからな。 今回のことで厄介払いが出来てよかったとおもっているんじゃないか? 手紙に、直接ではないが、感謝する的なことが書いてあったからな。 それに、拓哉のことを自慢する手紙を送っておいたから多分訪ねてくるだろうな」

ちょっと、要らん政治に巻き込まれた挙句、めんどくさくなるような手紙まで送りやがって思う拓哉。

「本当に何してくれちゃってるんですか? ヴァレリーさんが、その気なら新しく考えたナポリタンはお預けですね」

それを聞いたヴァレリーが慌てて話しだす。

「ちょっと待て拓哉、それとこれとは違うではないか!? 新しくナポリタンとはなんだ?」

肩を揺らして聞いてくるヴァレリー。

「揺らさないでくださいよ。 内緒です」

その後も、しつこく尋ねてくるヴァレリーに対して無視をして呑み続ける拓哉。 それを見ていた他の3人も笑いながら酒を呑んだりつまみを食べる。 
最後は、ヴァレリーが土下座までしてくるので仕方なく今度作ってあげますと伝えた。 嬉しかったのかヴァレリーは泣いてしがみ付いてくる。 久々の男同士の集まりに、ふと笑みが溢れる拓哉であった。
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