異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
84 / 203
第4章 新たな出会いと充実していくスローライフ

第81話 閑話 任務よりもお弁当!更にシャドー進化する。

しおりを挟む
王国近くの森の中

桜花とシャドーは、アレンの家族を迎えに行く為に、夜になるまで身を潜めていた。 
空が暗くなり月明かりだけが照らす。 行動開始の合図だ。 しかし桜花は、まだ動かない。

「まずは、お弁当を食べるよ。 シャドーもほら座って」

何を言ってるのだ?こいつはという感じで桜花を見るシャドー。 シャドーは、元は人間の暗殺者であり、死んでレイスになってからもスキルをそのまま継承した特異レイスである。 無口なシャドーは、首を横に振る。(いらないの合図だ)

桜花が神気をレイスに向けて放ち脅す。
「あるじのお弁当が食べられないの? 早く座るんだよ。 わかった?」

神気を浴びたシャドーは、冷や汗をかいてプルプルしながら言われた通り座る。
シャドーは、心の中で俺はレイスだ!食べられる訳ないだろと思っている。 

だが、何故だろうか?先程から地に足がついている感覚がある。 シャドーが、自分の足を見ると生前に見た自分の足があるのだ。それだけではない腕も手も触ってみると顔もあるのだ。 

思わず叫ぶシャドー。
「なんじゃこりゃ~。 なんで手と足もあるんだ~」

桜花は、弁当に夢中でシャドーが変化したことに気づいていなかった。 叫ぶ声を聞いて桜花がシャドーを見る。

「うるさいんだよ!急に大声出さないでほしいんだよ。 えっ?シャドー肉体あるけど、そんなこともできたの?」

そこにいたのは、片方の目が隠れるくらいの長髪で青髪の切長の目をした。 闇を抱えていそうだがイケメンの部類に入る男がいた。

「イヤイヤ! 俺レイスだから。 肉体元々ないから。 貴女のあり得ない力を浴びたら変化したんだ」

無口なシャドーは、これでもかと饒舌に話す。

「アハハ、よかったんだよ。 まぁとりあえず食事をして任務に向かうんだよ。 これシャドーのお弁当だから」

桜花も何故進化したのかわからないので、敢えて触れないように弁当を食べようと言う。

納得してないが仕方ないかと言うような返事をするシャドー。
「はあ...よくわからないけど、肉体が戻って有難いのは確かだ。 死んで以来の食事頂こう。パクっモグモ...ググスン」

急に泣き出すシャドー。 慌てる桜花。

「シャドーどうしたんだよ。急に泣き出して?」

泣きながらも次々弁当を口に運ぶシャドー。

「うま~い。 これが魔王様が愛してやまない拓哉さんの料理。 グスン。陰から見ながらずっとおいしそうだなと、毎日思っていた料理を口にする日がくるなんて。 唐揚げの噛んだ瞬間の肉汁としっかりタレに漬け込まれた肉の旨味! それを優しく包み込み更なるうまさへと昇華するライス。 幸せだ~生きている時ですら味わったことがないうまい料理」

諜報活動以外は魔王様にバレないように、出かける際は密かに後を追ってきた。 影として生きるそれが自分の仕事だ。ある日から、料理屋に通うようになった魔王様を遠目から眺める日々。 唐揚げ ドラゴンの焼き肉 ナポリタン キマイラのたたき エンペラーカツ ラーメン!見たこともない美しく、おいしそうな料理を目の当たりにして、いつか夢が叶うなら一度でいいから食べたいとそう思っていたシャドー。 今その夢が叶ったのだ。 歓喜するシャドー。

「桜花様、夢を夢を叶えて頂きありがとうございます。 こんなことが叶うなど思ってもいませんでした。 はぁ~この至高の卵焼き。 どうしてこんなに美しくうまいのでしょうか。 食べるのがもったいない」

恍惚な表情で卵焼きを見るシャドーに引き攣った顔で答える桜花。

「そ、それは、よかったんだよ。 これから、いっぱい料理が食べられるよ。 それより食べ終わったら任務を遂行しないとだよ」

それを、聞いたシャドーは恍惚な表情から一変真剣な顔になる。 やはりこういうところはプロなのだろう。

「あの~お茶頂けませんか?」

それを聞いた桜花は、任務で真剣な顔になったんじゃなくて、食べ終わって満足後の一服したい顔かよとズッコけるのであった。

「はいはい! 飲んだら行くんだよ。 それからキャラ崩壊してるけどいいの?」

もうどこをどう見ても無口キャラではなくなっているシャドーにツッコむ。

シャドーが言う。
「ん~この緑茶は、体に沁みますねぇ。 今後仕事前には緑茶にしましょうかね。 ん?キャラですか?元々こうですよ。 影とかシャドーとか呼ばれていると、こうした方がかっこいいかなと思いましてね。 陰のある感じを演出するとモテそうでしょ?」

完全に和むシャドーを見て、こいつ大丈夫なのかと思う桜花。

「よくわからないけど、今のシャドーの方が万人受けすると思うんだよ。 無口は近寄り難いと思うよ」

顎に手を当てて考えるシャドー。

「ふむ~桜花様が言うなら正解なのでしょう。 今から無口キャラを捨て生まれ変わりましょう。 よし!では生まれ変わった初任務行きましょう。桜花様」

自分に肉体を与えてくれた桜花を崇拝して様をつけるようになったシャドー。

この後、果たしてこのコンビはまともにアレンの家族を連れてこれるのであろうか?
しおりを挟む
感想 1,411

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...