異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
194 / 203
第9章 新たに集まるお客様!

第191話 料理とお酒でドワーフの気を反らせ作戦!

しおりを挟む
店的に似合わないが、立食形式で食事を用意した拓哉はみんなに食べるように伝える。ちなみにお酒も大量に用意している。

「皆さん好きな物を取って食べてください。あとお酒も飲んでくださいね。ちなみに今までバルトがこの村に貢献してくれたことに対してのお礼として食事とお酒を用意しています。バルトに感謝して食べて下さい。それからバルトはここの大事な住人です。自ら出て行きたいというまで最大戦力で応戦致しますのでそのつもりでいて下さいね」

一見歓迎しているように見せながらも、バルトは絶対に渡さないという強い意志を見せる拓哉。建築に関して居てほしいのは当たり前なのだが、それよりも本当に仲間としてずっと居てほしいと心の底から思っているのだ。

ドワーフ側もバカではないので、さっきの圧倒的戦力を目の当たりにしては納得せざるを得ないでいる。しかし、目の前にある見たこともない料理と見たこともない酒に目移りしてしまい、バルトを連れ戻す目的など今はどうでもよくなっている。
そして、我慢できなくなったドワーフは料理とお酒に手を出すのだった。

「うめぇ~それにこの酒もうめぇ~」

「なんだなんだなんだ?これは神が呑んだと言われる酒なのか?」

「ちくしょ~こんなうまい飯と酒があるなんてよ。色々ずるいですぜ。バルト様」

このようにドワーフ達全員が料理と酒に舌鼓を打っている。

「バルト様、こんなおいしいお酒と感謝致します。このサクサクとした外側に中にはとろ~りとした卵、それにこのタレ...なんていう料理なのですか?それと、この冷たくて喉越しが素晴らしいお酒もなんですか?」

「これはスコッチエッグじゃな。驚いたじゃろ?サクサクの中から出てくる卵の黄身が堪らんのじゃよ。そして、この素晴らしい酒こそがビールじゃ!基本どんな料理にも合うんじゃ。この喉越しと苦味とシュワシュワがええじゃろ?」

バルトは、長くいるからかある程度の料理の名前も覚えている。なんだかんだ言いながら同郷の者と分かち合いながら呑んだり食べたりすることが嬉しいようだ。
そして、拓哉もバルトに話しかける。

「久しぶりの同郷の人達と会ってみてどう?もし帰りたくなったら言ってくれたらいいからな。でも正直な話...バルトがいなくなると寂しくなるけどな。友人がいなくなってしまうからさ」

「ブッハハハ!ワシはずっとここに居座り続けるわい。毎日新しい刺激にうまい料理にうまい酒を味わえるのはここしかないからのぅ。それに、ワシも友人と別れるのは辛いわい。あとのぅ、偶には同郷の者とおるのもええわい。じゃが、ワシには孫同然の愛弟子がおるからな」

照れ臭そうに語るバルトに対して、拓哉は素直な気持ちが聞けたと思いなんだか嬉しくなる。

「それよりバルトは、それが気に入ったんだね。確かに酒のつまみにはいいけどね」

バルトが気に入ったのは、からし蓮根である。

「普通の蓮根より柔らかいが、しっかりした食感に少しピリっとくる辛さと味噌の風味が混ざってうまいわい。それに、ビールにも日本酒にも合うんじゃ。最高だわい」

ドワーフは、本当に酒呑みの集まりだなと思う。そして、見渡すと3人くらいで酒を呑みながら歌っている人達やどうやったらこの酒が作れるのか談議している人達もいる。

「すいません。少しよろしいですか?」

そこに話しかけてきたのは、拓哉が話す前にバルトと言葉を交わしていたドワーフだった。

「どうしましたか?」

「この料理もお酒もあなたがお作りになられたのですか?素晴らしいの一言です。是非一度ドワーフ国に来て頂きたいのとお酒を売ってもらいたいのです」

やっぱりそう来るか~と思う拓哉。正直、ドワーフ国は面倒くさそうだし行きたくないのとお酒は売りたくないなと思った。絶対に切りがなくなるからだ。

「すいません。お店とこの村が第一ですからどこにも行く気はありません。それとお酒の交易も村以外の個人販売もしていないんですよ。門外不出の料理とお酒だと思ってください。ドワーフの方も自分の技術を同じドワーフ以外に伝授したりしないでしょ?それと同じです」

昔バルトから基本ドワーフは他人に技術を教えたりはしないと教わっていたので、それを理由に断る。では何故バルトがダークエルフなどに技術を提供しているかというと拓哉から新しい技術が載った本や資材を提供されて、誰かに伝えて広まる大切さも学んだからだ。ちなみに本の翻訳はボーンに頼んでいるらしい。

「ウッ...それを言われると納得せざるを得ないですね。ですが、諦められませんので、何か対価になるものを考えて売ってもらえるようにします」

拓哉は、絶対売らないけどねと思いながらも熱意が伝わり「頑張って下さい」と言う。
こうしてドワーフ達の連れ戻し計画を阻止?したのである。そしていまだにドルンは、外に放置されたままであった。
しおりを挟む
感想 1,411

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...