嘘つきミーナ

髙 文緒

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第十四話 一回呪われちゃえば?

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 二人は気に入りの雑貨屋を覗く。

 ここにもガシャポンコーナーがあり、以前からミナが欲しかった写真の入れられる推し活キーホルダーがあったのだけれど、ミナは素通りしようとした。
 プラスチックの破裂音と破片の指に刺さる感覚がまだ近くにあって、やる気にはなれなかった。

「これ欲しいやつでしょ、いいの?」

「だって怖いもん」

「もえが代わりにやったげる! どれ欲しいの? もえ運良いんだよ」

「じゃあこの、『顔面国宝』のやつ」

「オッケ~! 『顔面国宝』出ろ出ろ出ろー!」

 ミナは三歩ほど下がったところで、体を背けるようにして萌加がガチャポンを回すのを待った。
 果たして、『顔面国宝』枠のキーホルダーは一回で出た。

「もえすご! 今度から全部もえに回してもらおうかな」

「もえのパワーは安くないよお。トクベツ!」

 どうだと言わんばかりに胸を張る萌加に、ミナは素直に手を合わせて大袈裟おおげさに感謝を示してみせた。
 それからぬいぐるみの棚、文具の棚、キャラのプラコップや弁当グッズがならぶ棚を見て、今度お小遣いもらって来る時はどれが欲しいとか、新しいお弁当箱そろそろ欲しいなとか、いっそ壊れないと買い替えてもらえなくない? とか、触っては戻し、買わずに店内を見て回る。

 萌加のあとについて、韓国コスメコーナーに移動する。
 欲しいリップがあるけど高い。と手の甲に試しては名残惜しげにくるくると手を回して見せて、ラメのちらつくのをうっとりと眺めるので、アツシ先輩にプレゼントしてもらうとかどう? と提案すると、それは拒否された。

「アツシ先輩に貰うのは、アツシ先輩があげたいと思ったものでいいから」

 やけにきっぱりと言い切って、それから萌加は備え付けのコットンとリムーバーで手の甲を拭った。
 ティントリップの色素は皮膚表面の細かな皺に入り込んで、軽く拭いた程度では落ちきらなかった。


「そういえばさ、さっきあーやが居た時は言わなかったんだけど」


 手の甲を撫でながら萌加が切り出した。


「さえぴ、裕太だけじゃなくてミーナも避けてるでしょ?」


 ミナとしては全く気付いていないことだったので、驚きのうちに、返事をするタイミングを逃した。

「なんかね、ミーナが変なこと言うせいでクラスみんなが迷惑してるって、他の見えない子たちと話してるらしいよ」

「はあ?」

 思わず大声が出てから、慌てて口をおさえて周りを見まわした。
 女の子たちの集う店内からは、そこかしこでかしましくはしゃぐ声が響いていて、ミナの出した程度の声など誰も気にしていなさそうだった。

「意味わかんない、みんなが知りたい知りたいってあたしに色々聞いてきたんだよ? それで自分が見えない側だし怖いからってあたしのせいにして陰口言うとか普通にありえん」

「見えない人から僻み受けるのはしょうがないよ。その分注目されてちやほやされたんだからさあ、ミーナもいい気分だったしょ」

「別にちやほやとか求めてないし」

 わざわざイヤなことを告げ口した上に味方になってくれない萌加に苛立って、ミナは足早に駄菓子コーナーに移動した。
 小さなカゴを手にとって、缶ジュース型のミニラムネを全種類カゴに放り込んでいく。その隣のコーラ餅、こざくら餅、ソーダ餅、ミックス餅も全部一つずつ放り込む。ストレス解消には買い物が一番だ。

 プラスチックのラムネ型ケースに粉のラムネが三本セットで入っている駄菓子を、勢いでみっつカゴに放り込んだところで、萌加が横からピーヒャラと紙が伸びるおもちゃを入れてきた。『吹き戻し』だ。

「何これ」

「伸びるやつ」

「それは知ってるけど、これ買うの?」

「さっきガチャ出してあげたじゃん。それにさえちゃんのことも、相談に乗ったげるよ」

 まあ高いものでもなし、萌加なりに雰囲気を変えようという気遣いなのかもしれない。それに『顔面国宝』を出してくれたのも確かだ。
 会計を済ませると萌加は早速ピーヒャラと紙を伸び縮みさせながら、本屋の方へと足を向けた。

「さえぴもさあ、一回呪われちゃえば、絶対見えるようになると思わない?」

 後を追うミナを振り返らないまま萌加が言った。

「呪い?」

「そう。それで裕太が王子様になって助けてハピエン。どう思う?」

 足を止めて、吹き戻しを吹く萌加から伸びる紙が、ミナの喉元に伸びた。

「ね、どう?」

「どうって、呪いとかいきなり言われたら怖いよ。……でもさえちゃんも見える側になれば、あたしの苦労も分かるだろうし、それしかないかも……みたいな気はする」

「決まりだね」

 煙草のように指に吹き戻しを挟んで揺らしながら、萌加がにぃっと笑った。
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