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青い金糸雀 (サチ視点)
永遠の別れ
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「ううん、違う。何でもない」
「何でもないことないだろ」
「本当に。何でもないから」
来なければ良かった。
シンさんと再会できて浮かれていた自分がバカだった。
どうにもならない現実を突きつけられて。
帰ろうとする僕をシンさんが引き留める。
「何か気に触ったなら謝る」
「シンさんは悪くないよ」
「じゃあ何で泣いてる」
「大丈夫だから」
「大丈夫じゃないよな」
シンさんは優しい。
僕が幼なじみの弟だから心配してくれてる。
彼にとって僕は。
それだけの存在。
「……シンさん」
「何があった」
「僕じゃダメかな」
「何が?」
「僕じゃ恋人の代わりにならない?」
シンさんは困惑してた。
当然だよね。
弟みたいな男から急に告白されたら誰だって戸惑う。
「……ごめんなさい。変なこと言って」
「……サチ」
「もう、諦めるから。ずっとずっと好きだったけど。これで終わりにする」
「お前。俺のこと好きなのか?」
ストレートに聞かれ過ぎて答えられなかった。
「俺もサチのことは可愛いと思ってる」
でもそれは弟みたいに可愛いだけだよね。
「……ごめんなさい」
「何で謝る」
「だって……気持ち悪いよね」
「謝るようなことじゃないだろ」
「この町に住んだのもシンさんが居たから。シンさんに会いたくて商店街をウロウロしてた」
「……そうなの?」
「……気持ち悪いでしょ。だから、ごめんなさい」
嫌われた。完全に終わった。
でも、これでいい。
言いたいことは言ったし、諦めもつく。
「もう、来ないから。嫌な思いさせてごめんなさい」
頭を下げてもシンさんの返事は無かった。
口もききたくないか。
玄関に向かう僕の手首を、シンさんが掴む。
「……待てよサチ」
「……離して」
「あのさ。急に言われて俺も驚いてるけど」
「だから、それはもういいから」
「男同士って。どうヤんの?」
「……は?」
今度は僕が驚いた。
僕は好きって言っただけで。
そんなことしたい訳じゃない。
「サチさえ良ければだけど。俺は今すぐお前とヤりた……」
僕は反射的にシンさんの頬を殴ってた。
いくら僕が男でも、遠慮が無さすぎる。
だから彼女に捨てられたのか。
ちょっと幻滅したけど。
シンさんが僕を、そういう対象として見てくれたのは素直に嬉しかった。
◆
その後、何度かデートして。
僕とシンさんは結ばれた。
初めて結ばれた日の翌朝。
キッチンに立つシンさんが、昔よく聴いていた歌を口ずさんでた。
「懐かしいね。その歌」
「もう起きたのか?まだ寝てていいぞ。疲れただろ」
「大丈夫」
何だか新婚さんみたいだ。
嬉しくて僕は、後ろからシンさんに抱きつく。
そして彼と同じ歌を口ずさんだ。
「……サチ」
「なに?」
「もう一度。しっかり歌ってくれ」
「やだ」
「何で」
「恥ずかしい」
「どうして」
「シンさんみたいに上手くないし声も良くないし」
「いいから。歌ってくれ」
振り向いたシンさんはいつになく真剣な様子だった。
だから恥ずかしかったけど、小さな声で歌ってみる。
僕を見るシンさんの目は輝いていた。
彼は僕の両手を握り、噛み締めるように言う。
「……見つけた」
「え?」
「俺がずっと探し求めていた声。サチだったんだ」
「……僕?」
「サチ」
「はい」
「俺の為に歌ってくれないか」
シンさんが最高の笑みと共に口にした言葉が。
僕の人生を大きく変えた。
どんどん広くなって行くライブ会場。
僕たちは、あの部屋を出て別々に暮らし始めた。
愛が冷めた訳では無くて。
事務所の方針と言うか世間体と言うか。
僕とシンさんが恋人同士で同棲しているというのは都合が悪いらしくて。
「……寂しいな」
広いマンションの部屋に一人。
冬なのに暖かくて快適だけど。
あの狭い部屋が懐かしかった。
インターホンの音がする。
モニターに映っていたのは宅配業者の男性の姿だった。
差出人はシンさん。
直接渡せば良いのに。
不思議に思ったけど僕は荷物を受け取る為に鍵を開ける。
直後。
僕の人生は唐突に終わった。
最期にもう一度だけ。
言っておけば良かったな。
シンさん。大好きだよ。
ずっと、ずっと。
【 完 】
「何でもないことないだろ」
「本当に。何でもないから」
来なければ良かった。
シンさんと再会できて浮かれていた自分がバカだった。
どうにもならない現実を突きつけられて。
帰ろうとする僕をシンさんが引き留める。
「何か気に触ったなら謝る」
「シンさんは悪くないよ」
「じゃあ何で泣いてる」
「大丈夫だから」
「大丈夫じゃないよな」
シンさんは優しい。
僕が幼なじみの弟だから心配してくれてる。
彼にとって僕は。
それだけの存在。
「……シンさん」
「何があった」
「僕じゃダメかな」
「何が?」
「僕じゃ恋人の代わりにならない?」
シンさんは困惑してた。
当然だよね。
弟みたいな男から急に告白されたら誰だって戸惑う。
「……ごめんなさい。変なこと言って」
「……サチ」
「もう、諦めるから。ずっとずっと好きだったけど。これで終わりにする」
「お前。俺のこと好きなのか?」
ストレートに聞かれ過ぎて答えられなかった。
「俺もサチのことは可愛いと思ってる」
でもそれは弟みたいに可愛いだけだよね。
「……ごめんなさい」
「何で謝る」
「だって……気持ち悪いよね」
「謝るようなことじゃないだろ」
「この町に住んだのもシンさんが居たから。シンさんに会いたくて商店街をウロウロしてた」
「……そうなの?」
「……気持ち悪いでしょ。だから、ごめんなさい」
嫌われた。完全に終わった。
でも、これでいい。
言いたいことは言ったし、諦めもつく。
「もう、来ないから。嫌な思いさせてごめんなさい」
頭を下げてもシンさんの返事は無かった。
口もききたくないか。
玄関に向かう僕の手首を、シンさんが掴む。
「……待てよサチ」
「……離して」
「あのさ。急に言われて俺も驚いてるけど」
「だから、それはもういいから」
「男同士って。どうヤんの?」
「……は?」
今度は僕が驚いた。
僕は好きって言っただけで。
そんなことしたい訳じゃない。
「サチさえ良ければだけど。俺は今すぐお前とヤりた……」
僕は反射的にシンさんの頬を殴ってた。
いくら僕が男でも、遠慮が無さすぎる。
だから彼女に捨てられたのか。
ちょっと幻滅したけど。
シンさんが僕を、そういう対象として見てくれたのは素直に嬉しかった。
◆
その後、何度かデートして。
僕とシンさんは結ばれた。
初めて結ばれた日の翌朝。
キッチンに立つシンさんが、昔よく聴いていた歌を口ずさんでた。
「懐かしいね。その歌」
「もう起きたのか?まだ寝てていいぞ。疲れただろ」
「大丈夫」
何だか新婚さんみたいだ。
嬉しくて僕は、後ろからシンさんに抱きつく。
そして彼と同じ歌を口ずさんだ。
「……サチ」
「なに?」
「もう一度。しっかり歌ってくれ」
「やだ」
「何で」
「恥ずかしい」
「どうして」
「シンさんみたいに上手くないし声も良くないし」
「いいから。歌ってくれ」
振り向いたシンさんはいつになく真剣な様子だった。
だから恥ずかしかったけど、小さな声で歌ってみる。
僕を見るシンさんの目は輝いていた。
彼は僕の両手を握り、噛み締めるように言う。
「……見つけた」
「え?」
「俺がずっと探し求めていた声。サチだったんだ」
「……僕?」
「サチ」
「はい」
「俺の為に歌ってくれないか」
シンさんが最高の笑みと共に口にした言葉が。
僕の人生を大きく変えた。
どんどん広くなって行くライブ会場。
僕たちは、あの部屋を出て別々に暮らし始めた。
愛が冷めた訳では無くて。
事務所の方針と言うか世間体と言うか。
僕とシンさんが恋人同士で同棲しているというのは都合が悪いらしくて。
「……寂しいな」
広いマンションの部屋に一人。
冬なのに暖かくて快適だけど。
あの狭い部屋が懐かしかった。
インターホンの音がする。
モニターに映っていたのは宅配業者の男性の姿だった。
差出人はシンさん。
直接渡せば良いのに。
不思議に思ったけど僕は荷物を受け取る為に鍵を開ける。
直後。
僕の人生は唐突に終わった。
最期にもう一度だけ。
言っておけば良かったな。
シンさん。大好きだよ。
ずっと、ずっと。
【 完 】
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