異世界で神が認めたシェフになる

ジェル

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第3章

王家の定め8

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俺は1人で城の前に来ていた。

「そこのお前っ。何の用で来た。」

「クレアに呼ばれてきたんだけど、きいてませんか?」

「王女様を呼び捨てなどと、お前いったい何様だ。」

…ヤバイ、これじゃあ前回と同じだ。

「すいません。く、クレア様に城に来るよう言われたソラです。」

「はぁ?お前、王女様といえっ!誠に無礼だぞ。」

「お、おお、王女様に言われて…」

「衛兵さん、そこの男性を通してください…。」

俺がクレアを王女呼びするのに抵抗をしていると、中からエリスさんが出てきた。

「エリス様、しかしこいつは…」

「クレア様からの命令です。通しなさい。」

門兵たちは引き下がると、鋭い目で俺を見てくる。

「助かったよ、エリスさん。それと、この前は言い過ぎた。」

「…いいです。あなたの言うことには筋が通っていました。私も、勉強させていただきました…。」

「でも、さすがにあなたが泣くなんて思わなくて…。」

俺がそう言うと、エリスさんは顔を赤くしていった。

「そ、そのことは兵士たちの前で言わないでくださいっ!私にも立場があるので…。」

周りの兵士は俺が普通に話していることに驚いている。

「それはごめんなさい…。ところで、俺はなぜ城に呼ばれたんですか?」

「それについてはクレア様からお話があります。」

おれはエリスさんの案内で、城内を歩いた。
さすがお城だなぁ。廊下だけでも広いし、天井も高い。

「こちらです…。今からクレア様がおみえになりますので静かにお待ちいただけますでしょうか。」

俺は静かに待っていた。ここは応接室なのか。机とソファー以外特に目立ったものはないが、誇りひとつなく、清潔な部屋だった。

コンコン…

俺が部屋に入って程なくしてドアがノックされた。

「クレア様がいらっしゃいました。」

と、エリスの声がしたのでおれは、一応、ソファーに浅く座り直す。

「ソラ、ごきげんよう。」

そこには以前にも増して王女らしいクレアがいた。

「ご、ごきげんよう。く、クレア様」

「「……」」

…あ、あれ?

「ふふふっ。ソラ、笑わせないでいただけますか?」

「い、いやでも、エリスさんのこともあるし…。」

「ソラ様、今更です。それに、私はあなたの言い分も納得しましたので、普段のようにしたください。あまり下手な敬語を使われても、話が進みませんので。」

「わかったよ…。クレア、朝はごめん…。大切な話だったんだろう?」

「ふふっ、そうですね。
では、あらためて…本題に入りましょう。その上でソラにいくつかお願いがあるのです。」

「話してくれ…。俺にできそうなことならやるよ。」


「まず、事情から話しますね。ある程度、王都で噂を耳にしたと思いますが、一昨日の晩、私の母である現女王陛下が何者かに毒を盛られました…。」

そういえば…レムばぁがそんなことを言っていた。
ちょうどラパンの厨房を借りる時に聞いた気がする。
王族って結構つらい人たちなのかもしれない…。

「毒の種類は2つ、闇魔法による呪毒と毒物による全身麻痺です。」

「呪毒?」

「はい…。いわゆる呪いです。これをかけられると時間経過とともに身体が衰弱し、最悪死に至ります。」

「それは早く助けよう…。俺、魔法はあまり得意じゃないが、精一杯やってやるよ。」

「そ、ソラ…お気持ちは嬉しいですが、呪毒ははらいました。問題なのは…毒物の方なのです。」

…毒物?

「毒物ってどういう毒なんだ?」

「それが…、詳しくはわからなくて。だから、あなたをお呼びしました。」

「なんで俺なの?解毒のこととか正直わからないけど…。」

「ソラには、解毒というより…、お母様から毒素を体外へ排出させることをお願いしたいのです。」

「どういうこと…?わかりやすく説明できる?」

「はい…。人の身体には魔法のもとになる魔素がありますよね。それが少ないと魔法に対抗しにくくなりますし、身体の回復も遅くなります。

今回の毒物は、身体の機能を麻痺させるものです。

そのため、呪毒に抵抗して使われた魔素の吸収が思うようにできてないのです。

幸いと言うべきか、毒の進行は止まっています。
死に至ることはないでしょう。

しかし、お母様の毒をある程度、体外へ排出しなければお母様はしばらく眠り続けたままでしょう。」

「なるほど…。で、なんで俺なの?」

「理由は主に2つです。ひとつはあなたの知識に期待しているからです。あなたは私が食べたことのない料理を見せてくれました。明らかにこの国の出身ではないのでしょう。
だから私たちの知らない毒に対しても知識があるのでは?と、考えています。」

「そうか、俺の知識な…。もうひとつはなんだ?」

「もう一つも…、話さないといけませんか?」

「別にいいけど…、隠さなきゃいけないことなのか?」

「あなたを…巻き込みたくはないのです。」

「そんなのここに来た時から、巻き込まれてる。それに、その覚悟で俺も来た…。」

「そ、そうですね…。申し訳ありません。では、話しますが、その、王城には…信用できる人がいないのです…。」

…なるほど、だいたいわかった。
王城内にいるやつは毒を盛った可能性があるから城外の協力者をってことだな。

やっぱり王族は結構可哀想な人たちなのかもしれない。

「言いたいことはわかった…。」

「ソラのことを知ってからまだそれほど話しもしてませんが、ある程度信用できます…。昨日と今朝のことを踏まえて判断しても、あなたは誠実で真っ直ぐな人です。私とエリスが保証します。」

エリスもうなずいていた。

「それが…、俺にやってほしいことでいいのか。」

「…実は、もうひとつやってもらいたいのです…。」

「信用してもらっといて断るのも気が引けるし…話だけでも聞くよ。」



「ソラにはこれからしばらくの間、私の身辺警護をしてもらいます。」


…それこそなんでだよ!!
さっき巻き込みたくないって言わなかったか?まあ、覚悟しているといったが…

「いや、信用できる人が少ないのはわかるが、なんで俺が身辺警護をしないといけないんだよっ!刺客に襲われたらどうするんだ。」

「その点は気にしていません…。昨夜、私はソラにご馳走になってから、少しソラのことを調べました。エリスと一緒になって。

すると、ギルドで噂になっている黒髪の青年という話を耳にしました。」

「ギルド?なんで?」

「ギルドの職員は言っていました。ディーンウルフを10頭ほどアイテムボックスから取り出した、と。」

「ああ、王都に来る前に倒したやつな」

俺がそう言うとエリスが口を挟んできた。

「ソラ様、横から失礼します。ディーンウルフはギルドではBランクの魔物です。数によってはAランクの募集がかけられます。おかしいと思いませんでしたか?
なぜ、毛皮で金貨2枚ももらえるのか」

…そこまで調べられたか。でも確かに今思うと、戦闘奴隷の人たちがあんなに苦戦してたのを俺たちは無傷で倒していたのか。

「だから、警護は問題ないと…。」


「そういうことです。」

「……戦闘になったら守るってことだけでいいのか?」

「いえ、できれば私と妹のご飯もソラに担当していただきたいのですが…、」


…こいつ、朝のエリスさんに言った言葉をどう思ってたんだ?

俺はクレアに腹を立てていた。朝も怒って気分が悪いのに。

「クレア、お前妹いるのか…。なら、お前、継承権破棄しろ。それで全部上手くいく…。」

「え?ソラ、突然どうしたんですか。」

「女王様のことはなんとかしてやるから、お前は継承権のないただの王女になれっていってんだ。」

俺は冷たくクレアに投げかけた。

「エリスさん、女王陛下のところまで案内してくれないか。容態を見たい。」

「……かしこまりました。」

「ソラ、待ってください。私にはソラとエリスしか…」

「悪いな、クレア…。俺、今のお前に信用されてても全然嬉しくないし、尽くそうと思えないわ…。」

そう言って、俺とエリスは部屋を出た。

「ソラ様、私…、尽くしすぎたのでしょうか。」

「さすがエリスさんだな。俺が言いたいことが理解できるとは…朝怒ったかいはあった…。」

「ソラ様、私は本気でいってるのですよ。」

「ごめん。エリスあさん、様付けはやめてくれないか。ソラでいい。」

「なら、ソラさんとお呼びいたします。」

「さんもいらないけど…。エリスさんはクレアによく尽くしていると思いますよ。俺の、クレアにいった意味が理解できるってことはそういうことでしょうね」

「私は…これからどうしたらいいのでしょうか?」

「どうもこうも、俺がいった通り、継承権なんて破棄したら解決なんですけどね。」

俺とエリスさんは少し、頭を悩ませながら女王のもとに向かった。
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