番じゃない僕らの恋~俺の唯一だった君~

伊織

文字の大きさ
6 / 50
第1章

6 俺じゃ、だめなのに

 陽は目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。


「蓮…?」


 立ち上がろうとしたその時、ふと何かに気付いた様子だった。
 バスローブ姿の自分。そして、自分のいる乱れたベッド。
 陽はその場で、固まった。


 ーーヒートのこと、思い出したんだな。


 そのまましばらく俯いたあと、何も言わなかった。


 やがて、ぽろぽろ涙をこぼす。


「巻き込んで、ごめん。…ごめん。」


 弱弱しい声に、俺の胸も締め付けられる。

 ーーやっぱり、俺となんて…嫌だったのかもしれない。
 ただの幼馴染。
 その現実を、突きつけられた気がした。


 俺は小さく息をついて、陽に歩み寄る。
 出来るだけ陽に優しく。
 そう思って、しゃがみ込み、陽を見上げた。

「陽は悪くない。俺が、連れてきたんだ…」


 俺が、陽を好きだからー誰にも、任せたくなかったから。
 でも、陽はーー

 陽は小さく首を振った。
 涙は止まらない。

 その時、スマホが鳴った。

「蓮、大丈夫?陽君のご両親にも話したら、一緒に行くことになって…もう向かってるから。ロビーで待つから、早く準備してね。」

「わかった…。じゃあ、ロビーで。」

「陽、ごめん。着替えて、家に帰ろう?もうすぐ、親が迎えに来るから。」

 陽は涙を拭い、小さく頷く。

「制服、取ってくるから。待ってて。」

 陽が静かにベッドから足を下ろす。
 俺が制服を取りに行こうとした、その瞬間ーー

 ガタッ
「…っ」

 振り返ると、陽が床にしゃがみ込んでいた。
 俺は慌てて駆け寄る。陽も戸惑った表情を浮かべている。

「陽、大丈夫?」

「…立てない」

「え?」

「足に、力が、入らない…」


 2人の間に一瞬の沈黙が流れた。


「それは…ごめん。ベッドに上げるから、俺の腕掴んで。」
 ーー俺のせいだ。


 少しだけ手伝って、陽の支度を済ませた。

 途中、陽がネックガードに気付く。

「蓮、外せる?」

 そう聞かれたが、これは一度付けると外せない。
 フロントに行って、専用の鍵で外してもらうしか方法は無い。
 ネックガードのそばに置かれていた注意書きに、そう書かれていた。

 陽は少しだけ、落ち込んだような顔をした。

「すぐに外せるから、大丈夫。」
 そう言って、肩を貸す。

 フロントまでは、ゆっくり歩いた。
 そこで、陽はネックガードを外してもらう。


 その時――


「蓮!」「陽!」

 振り返ると、俺と陽、それぞれの両親がこちらに向かって歩いてくるところだった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。最後におじいさまの番外編を追加しました。

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

庶子のオメガ令息、嫁ぎ先で溺愛されています。悪い噂はあてになりません。

こたま
BL
男爵家の庶子として産まれたサシャ。母と二人粗末な離れで暮らしていた。男爵が賭けと散財で作った借金がかさみ、帳消しにするために娘かオメガのサシャを嫁に出すことになった。相手は北の辺境伯子息。顔に痣があり鉄仮面の戦争狂と噂の人物であったが。嫁いだ先には噂と全く異なる美丈夫で優しく勇敢なアルファ令息がいた。溺愛され、周囲にも大事にされて幸せを掴むハッピーエンドオメガバースBLです。間違いのご指摘を頂き修正しました。ありがとうございました。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。番外編をちょこちょこ追加しています。

夢の中の告白

万里
BL
バレー部のムードメーカーで、クラスのどこにいても笑い声の中心にいる駆(かける)。好奇心と高いコミュニケーション能力を持つ彼は、誰とでもすぐに打ち解けるが、唯一、澪(れい)にだけは、いつも「暑苦しい」「触んな」と冷たくあしらわれていた。 そんな二人の関係が、ある日の部活帰りに一変する。 あまりの疲れに電車で寝落ちした駆の耳元で、澪が消え入りそうな声で零した「告白」。 「……好きだよ、駆」 それは、夢か現(うつつ)か判然としないほど甘く切ない響きだった。