幼馴染に俺の推し活が全力で邪魔されている件について

伊織

文字の大きさ
10 / 10

10

 目を覚ますと、そこはベッドの上だった。
 ふかふかの枕から香る、レオンの匂い。
 そうか、ここはレオンのベッドで……。

 はっ……!
 俺、さっき、2人にすごいことされてたよな。
 途中からもう、何が何だか分からなかったけど。
 確か、二人で張り合っていたような……。

 その時、隣の部屋から声がした。
 どうやらレオンと殿下が話しているらしい。
 俺はそっと、ドアに耳をあてた。

「偶然知り合ったんだから、仕方ないだろう?」

「本当に偶然なのか、怪しいものです」

 レオンの声は低く、刺すようだった。

「ひどいな。俺だって、君に幼なじみのことは聞いてたから、
 手を出さないようにしてたんだ。
 でも、あの子は最初、名前を名乗らなかったから」

「でしたら、ルカかもしれないと思ってください。」

「無茶言わないでくれ。それに、ルカも私を知らない様子だったし」

「知らないはずないでしょう。きっと、言えなかっただけです」

「そんなこと、今さら言われても困るな」
 殿下の声がわずかに笑みを含む。
「もう、ルカを好きになってしまったんだから」

「あなたは、どうしてそう軽いんですか!?
 とにかく、ルカは諦めてください。
 何度もお伝えしてきたはずです。私は幼なじみのルカが好きだと」

 え……、好き……?

 キィ……。

 あ、まずい。
 ドアを開けてしまった。驚いた顔のレオンと、微笑む殿下が同時にこちらを見る。
 扉に耳を当てていただけなのに、いつのまにか、ドアノブを握っていたみたいだ。

「あ、その……ご、ごめん。俺、起きて、その――」

「体は大丈夫か? すまない、無理をさせすぎた」

 すぐにレオンが駆け寄って来て、俺の手を取った。
 さっきレオンが「俺を好き」と言ったのを思い出して、顔が熱くなる。
 レオンが…俺を?

 レオンは俺の表情を見て目を見開いた。
 急に恥ずかしくなり、俺は視線を逸らす。

 今までのレオンを思い出す。
 もしかして、今まで俺を助けてくれていたのは、……好きだから?

「レオン、殿下じゃなくて……俺を好き、なの?」

「聞いてたのか。そうだ、俺は……ルカが好きだ。
 何か、勘違いしてると思ったが。
 俺が殿下に恋愛感情を抱いたことは、一度もない」

「そうなの? ……ごめん、俺まだ頭の中が整理できなくて」

 レオンと殿下は付き合っていなかった。
 じゃあ、殿下もレオンのことは何とも思ってない?

「今は、それで良い。これからルカが分かるように、伝えていくから」

 レオンがそっと抱きしめてくる。
 その腕の中で、俺の心臓はドクドクとうるさいほど鳴った。

「ルカ、俺も君のことが好きだよ?」

 今度は殿下が近づいてきて、俺からレオンをそっと引きはがす。
 俺の手を取って、その甲に口づけた。殿下の背後に、薔薇が舞って見える。
 ……推し脳は健在だった。

「あなたは婚約者がいるでしょう」

 レオンが殿下の手から、俺の手を取り戻す。

「レオンにだっているじゃないか?」

「勝手に親が決めた相手です。俺は断るつもりだと親にも話してます」

「私の婚約者も同じようなものだ。気持ちが無いことは相手も了承している。
 だから、好きな相手が見つかれば、一緒になって良いと言われている。
 外部には秘密だけどね」

「ルカ、俺は殿下とは違う。ルカ以外にはいない。……愛している」

 レオンが俺の指と自分の指を絡めて、真っ直ぐな声で告げる。
 お前、そんな愛を囁くキャラだったか?
 俺の心臓は鳴りやむ気配を見せなかった。

「俺もそうだよ」

 殿下も俺を好きなんて…。
 俺は殿下の目をじっと見つめた。
 本当に……?

 殿下が微笑み、そっと顔を近づける。
 キス、される……そう思った瞬間。

 咄嗟にレオンが俺の腕を引き、唇が触れる寸前で遮った。

「殿下。ルカはまだ整理できないと言っているでしょう。
 そういうことは、おやめください」

「そりゃ、レオンはさっきルカの体を触りながら散々キスしてたんだから、良いよな。
 俺は、まだ一回もしてないんだけど?」

 殿下の言葉に、レオンは「うっ」と喉を詰まらせる。

「ルカ、レオンは誤解されてるのをいいことに、君の体を好き放題してたんだからね。
 あんまり信用しすぎるのも良くないよ?」

 た、確かに……!
 俺はレオンの顔をちらりと見る。
 わかりやすく動揺していた。

「あ、あれは! その……すまなかったと思ってる。
 ルカに触れられると思ったら……我慢できなかった」

 真面目なレオンが「我慢できない」なんて。
 しかも、それが「俺に触れたい」っていう理由で?

「堅物のレオンも男だったってことだね。
 俺には散々注意してたくせに」

「殿下は羽目を外しすぎです。
 来るもの拒まずで、複数と関係を持って……。
 嫉妬で殿下に危害を加えようとする生徒を取り押さえる、こちらの身にもなってください」

「そんなこと、あったかな。俺は皆に同じように接してただけどね。
 でも、これからはルカだけにするよ。
 ルカ、私と付き合って欲しい」

 やっぱり殿下は天然の人たらしだったんだ。
 レオンの口から聞かされた話に驚くのに、突然の告白に、心臓を射抜かれる。
 殿下の顔でそんなこと言われたら…思わず「はい」と返してしまいそうだ。

「殿下!」

 レオンが俺を抱きしめて、視界をふさいだ。

「殿下、今日はもうお引き取り下さい。
 ルカも、家まで送る」

「う、うん……」

 レオンが俺の手を引いて、ドアへ向かう。
 後ろの殿下から、声を掛けられる。

「またね、ルカ」

「は、はい。また明日」

 俺は、レオンに腕を引かれながら、殿下にぺこりと頭を下げた。
 レオンの温もりを握ったまま、俺は心臓の音をごまかすように歩く。

 色んなことがありすぎて、翌日俺は熱を出した。
 まだ俺は告白の返事をどうするのか、決められていない。

 きっと、俺はこれからも波乱とときめきに振り回されるんだろう。
 でも、どちらを選ぶにしても、その先に待つ未来は、幸せに繋がっている気がした。
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

内緒の話
2025.09.05 内緒の話

2、でカイが 3回 「ルカ」と言ってしまっています。

解除

あなたにおすすめの小説

断られるのが確定してるのに、ずっと好きだった相手と見合いすることになったΩの話。

叶崎みお
BL
ΩらしくないΩは、Ωが苦手なハイスペックαに恋をした。初めて恋をした相手と見合いをすることになり浮かれるΩだったが、αは見合いを断りたい様子で──。 オメガバース設定の話ですが、作中ではヒートしてません。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

幼馴染が結婚すると聞いて祝いに行ったら、なぜか俺が抱かれていた。

夏八木アオ
BL
金髪碧眼の優男魔法使いx気が強くてお人好しな元騎士の幼馴染の二人です。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

姫ポジ幼馴染の貞操を全力で守っていたのに、いつの間にか立場が逆転して伸し掛かられた件

イセヤ レキ
BL
タイトル通りのお話しです。 ※全七話、完結済。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました

多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。 ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。 ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。 攻め ユキ(23) 会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。 受け ケイ(18) 高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。 pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中

魔王に転生したら幼馴染が勇者になって僕を倒しに来ました。

なつか
BL
ある日、目を開けると魔王になっていた。 この世界の魔王は必ずいつか勇者に倒されるらしい。でも、争いごとは嫌いだし、平和に暮らしたい! そう思って魔界作りをがんばっていたのに、突然やってきた勇者にあっさりと敗北。 死ぬ直前に過去を思い出して、勇者が大好きだった幼馴染だったことに気が付いたけど、もうどうしようもない。 次、生まれ変わるとしたらもう魔王は嫌だな、と思いながら再び目を覚ますと、なぜかベッドにつながれていた――。 6話完結の短編です。前半は受けの魔王視点。後半は攻めの勇者視点。 性描写は最終話のみに入ります。 ※注意 ・攻めは過去に女性と関係を持っていますが、詳細な描写はありません。 ・多少の流血表現があるため、「残酷な描写あり」タグを保険としてつけています。

王宮魔術師オメガは、魔力暴走した王子殿下を救いたい

こたま
BL
伯爵家次男のオメガで魔術師のリンは変わり者として知られている。素顔を見たものは少なく、魔力は多いが魔力の種類が未確定。いつも何か新しい魔道具を作っている。ある時、魔物が現れ、その魔術攻撃を浴びた幼馴染のアルファ王子クリスが魔力暴走を起こしてしまった。リンはクリスを救おうと奔走するが、治癒の為には…。ハッピーエンドオメガバース、魔法ありの異世界BLです。