甘美なる隷属

氷華冥

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自我の崩壊と最後の仕上げ

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陽翔は、麗子のペントハウスからどうやって帰宅したのか、ほとんど記憶がなかった。身体に刻まれた鞭痕の疼きと、麗子の冷酷な笑みが脳裏に焼き付き、彼の意識を混濁させていた。その後、1週間を放心状態で過ごした。大学にも行かず、狭いアパートの自室に籠もり、ただベッドに横たわるか、ぼんやりと壁を見つめるだけの日々。何をする気も起きず、何をすればいいのかもわからなかった。心のどこかに、ぽっかりと大きな穴が空いたような感覚があった。

静かに、だが確実に、陽翔は自分の自我が崩壊していくのを感じていた。麗子の与えた痛みと恐怖、彼女の圧倒的な支配が、彼の心を侵食し、かつての自分を少しずつ消し去っていた。

(僕は…誰なんだろう…? 何のために生きてるんだろう…?)

そんな疑問が頭をよぎるたび、麗子の嬌声と鞭の音がリフレインのように響き、陽翔の思考をさらに混乱させた。

そんな中、麗子からの気まぐれな電話が、陽翔の唯一の救いだった。スマートフォンが振動するたび、彼はふと正気に戻ったような気がし、不思議な安心感に包まれた。電話に出ると、麗子の甘く冷たい声が耳に響いた。「陽翔、ちゃんと私の奴隷として、私のことだけ考えてる?」彼女の声は、陽翔の心を縛る鎖のようだった。

陽翔は躾けられた通り、震える声で答えた。「はい…麗子様…。麗子様に仕えることが、僕の全てです…。麗子様の支配に、感謝します…。」その言葉が心からのものなのか、陽翔自身にもわからなかった。ただ、麗子の声を聞くたび、彼女の存在が彼の心の空白を埋めるように感じ、恐怖と同時に安堵が胸を満たした。

そして次の週末、麗子から「話したいことがある」と呼び出された。陽翔は恐怖と期待が入り混じった気持ちで、麗子のペントハウスへと向かった。

(麗子様が…何を話したいんだろう…?)

彼の心は、彼女の次の行動を想像するだけで震えた。

---

一方、麗子は自分のペントハウスで、ワイングラスを手にソファにくつろいでいた。彼女の唇には、静かだが悪魔的な笑みが浮かんでいた。陽翔の被虐願望の芽が、彼女の圧倒的な暴虐によって開き始めていることに、深い満足を感じていた。

(陽翔、ほんと良い子ね。私の鞭と恐怖で、とうとうお前の心を砕いたわ。)

彼女はグラスを傾け、陽翔の崩壊した自我を思い浮かべ、ほくそ笑んだ。

麗子の調教は、陽翔の元来持っていた被虐願望の芽を、無理やり開花させることに成功していた。彼女の与えた痛みと恐怖は、陽翔の自我を崩壊させ、その空白を麗子の存在で埋める段階へと進んでいた。

(もう少しよ、陽翔。あとは型に嵌めるだけ。)

麗子は陽翔を完全に自分の支配下に置く最後の仕上げを計画していた。

彼女の頭の中では、陽翔が自らの意思で全てを捧げ、麗子の完全な支配を受け入れる姿が鮮明に描かれていた。

(私が少し導いてあげるだけで、お前は私の足元に跪き、自ら私の支配を望むようになる。どす黒い被虐の沼に、喜んで沈んでいくわ。)

そうなれば、陽翔にはもう抜け出す術はない。麗子の支配は、彼の心と身体を完全に絡め取り、永遠に彼女の奴隷として縛り付けるだろう。

麗子はワインを一口飲み、静かに笑った。「ふふ、陽翔、楽しみにしてなさい。次は、お前を完全に私のものにするわ。」彼女の瞳は、嗜虐的な欲望で燃え上がり、陽翔をさらに深い闇へと引きずり込む準備を整えていた。
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