甘美なる隷属

氷華冥

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羞恥と恐怖の新たな一歩

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新宿のカフェを後にした麗子と陽翔は、麗子の黒い高級セダンで歌舞伎町へと向かった。夜のネオンがきらめく街を抜け、麗子は雑居ビルの前で車を停めた。ビルの2階には、「C'est si bon」という看板が掲げられたアダルトショップがひっそりと佇んでいた。麗子は運転席から陽翔を振り返り、妖しい笑みを浮かべた。「陽翔、ここで降りなさい。ちょっとしたお買い物を頼むわ。」

陽翔は一瞬戸惑い、緊張した声で尋ねた。「麗子様…何を…?」

麗子の瞳が嗜虐的な輝きを帯び、ゆっくりと命じた。「『Heaven and Hell』っていう商品、買ってきなさい。店員にちゃんとそう伝えなさいよ。」彼女の声は甘く、しかし絶対的な命令の響きを帯びていた。

陽翔は顔を赤らめ、羞恥心に苛まれた。アダルトショップに足を踏み入れたことなど一度もない彼にとって、麗子の命令は耐え難い屈辱だった。「麗子様…僕、そんな店…。」彼は言葉を濁したが、麗子の冷たい視線と、調教部屋での鞭の記憶が彼の抵抗を押し潰した。

「ふふ、陽翔、恥ずかしがってるの? 私の奴隷なら、そんな小さな羞恥くらい乗り越えられるわよね?」麗子は可笑しそうにクスクス笑い、車の窓から陽翔の様子をニヤニヤと見つめた。「早く行きなさい。遅れたら、鞭でお仕置きよ。」

陽翔は震える足で車を降り、雑居ビルの階段を上った。心臓が早鐘を打ち、羞恥と恐怖が彼の全身を支配していた。

(麗子様…どうしてこんな…。)

 だが、麗子の命令に逆らうことなど考えられなかった。彼は「C'est si bon」のドアを開け、薄暗い店内に足を踏み入れた。

店内は、色とりどりの商品と刺激的なポスターで埋め尽くされていた。陽翔は店員に「Heaven and Hell」を探していると伝えると、カウンターの奥から黒いパッケージの商品が手渡された。そのパッケージには、裏に小さな金属製の尖った鋲が無数に付いた革製の部分と、亀頭を覆うパーツが描かれていた。ポップには、「極端な苦痛と至高の快楽」「支配者の思うままに奴隷を支配」「遠隔操作で完璧なコントロール」といったおどろおどろしい言葉が並び、陽翔の背筋に冷たい恐怖が走った。

店員が淡々と説明した。「これ、最近Femdom界隈で話題の商品ですよ。スマホのアプリでBluetooth連携して、遠隔で操作できるんです。鋲が食い込んで苦痛を与えるモードもあれば、亀頭のパーツが振動して快楽を与えるモードもあって、支配者がその場にいなくても奴隷を自由に操れるって評判です。」

陽翔は商品を手に震えながら、麗子の意図を悟った。

(これを着けられたら…麗子様に、いつでもどこでも支配される…。)

 恐怖と同時に、麗子の完全な支配を受け入れる覚悟が、彼の心に奇妙な安堵感をもたらしていた。店員の視線を感じながら、陽翔は商品を手にレジを済ませ、急いで麗子の車に戻った。

麗子は陽翔が手に持つ黒いパッケージを見て、満足げに微笑んだ。「ふふ、陽翔、よくできたわ。ちゃんと私の命令通り買ってきたのね。」彼女はパッケージを受け取り、陽翔の頬を軽く撫でた。「これ、最高の玩具よ。私の奴隷にぴったり。どこにいても、私がボタン一つで、お前の苦痛と快楽を操れるの。素敵でしょう?」

陽翔は首輪の重みを意識しながら、震える声で答えた。「はい…麗子様…。」彼の心は、羞恥と恐怖、そして麗子の支配への深い依存で満たされていた。麗子は車を走らせ、陽翔を調教部屋へと連れ帰る準備をしていた。

(ふふ、陽翔、いい子ね。これで、お前の心と身体、もっと深く私のものになるわ。)

麗子の冷たい笑みが、車内の暗闇に溶け込んだ。陽翔は「Heaven and Hell」のパッケージを握りしめ、麗子の支配がさらに深まる未来を予感しながら、彼女の足元に跪く覚悟を新たにしていた。
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