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第五章 贅を尽くされた部屋
夜の訪れと処刑の時間(2)
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「……あっ!」
ついに、端の長い髪の少女が棒の勢いに負けて、舞台の前側に落ちた。隣の黒髪の少女の首が絞まり、すぐに謝りながら長い髪の少女は舞台に戻る。
反対側の少女も、首を絞められた少女も、どんなに苦しくても笑顔を崩さないように心がけており、胸が締め付けられそうになってきた。
演奏が終盤を迎える頃には、三人の少女のヒップは赤く爛れてしまい、足先は痙攣を繰り返していた。舞台から落ちた少女以外の二人は縄を解かれて、観客の前で丁寧な挨拶と祝福を振る舞う。
「……演奏中に、不備が有った事をお詫び申し上げます。罰として、歪んでしまった楽器の音色をレイン侍女長が正して参りますので、どうぞお怒りを鎮めて下されば幸いでございます」
一人残された少女は、首に括られた縄を更に締め付けられて全身を震わせていた。本当なら舞台から逃げ出したいだろうにそれも許されず、笑顔で振る舞い続けるよう指導の鞭が打たれた。
専任楽師が高らかにドラムを鳴らし、ギロチンに似た刃の無い金属の台が運び込まれていく。本来なら刃が取り付けてある丸い穴に長い革紐が括り付けられ、その先に皮で出来た家畜用の首輪がぶら下がった。
先ほど取り残された少女は全身をブルブルと震わせ、歯をカチカチさせながら凍りついた笑顔で首輪の前に立った。手足を小間使いたちがギロチンの木枠に嵌め込み、首を括られた馬のような姿勢にされた少女は、限界になるまで革紐を締め上げられ、輪の中に固定された。
宙ぶらんになった少女は、苦痛を逃れようと身体を浮かせるが木枠の重みでそれは許されず、何度か咳を漏らしてからようやく元の凍りついた笑顔を見せた。
「それでは、第二曲を弾いて参ります。良い音色を奏でられ、皆さま方の歓談の花となれるよう精一杯弦を弾きますので、新人小間使いのご無礼はご容赦下さいませ」
雉のローストに手をつけられないまま、蕪のポタージュと採りたて温野菜が運ばれてくる。ディーリ専任家令は激しい嵐のような曲を弾きだし、レイン侍女長は少女の衣服を中心に鞭を振るう。
乳房を隠している僅かな布以外は掠め取られ、打たれる度に少女の首は締め付けられた。舌を噛まないように枷を嵌めさせられ、顔以外の全ての箇所が鞭で薔薇色に染められていく。
「……召し上がる気力も無いのかしら…? それとも、演奏に見惚れてしまっていて?」
それまで黙っていたターニアが、手を付けられないままの雉の皿を指差す。ナイフを切り分ける仕草は非常に上品で、公爵家や来賓の貴族の誰よりも美しかった。
「貴方が目指している位置は、鞭を振るう側なのかもしれないけれど…。それはとても、困難で難しい事よ。あの少女のように首を括られて鞭で打たれるのは、苦痛こそ与えられるけれど、責任はない。ただ流されるだけで済むのだから、何も考えなくても良いの……。
打つ者は、相手を殺さずに傷付けずに労りを持って接しなくてはならない。時には殺しを命じられる事だって有るけれど、その時もいかに死なせずに引き伸ばすかを調整しなくてはならない。セレンティア、貴方は雉や鴨にナイフを突き立てる側になりたいの? それとも、私に縄で首を括られて鞭で打って欲しくて?」
「ただ、緊張していただけよ…。ちゃんと食べるわ…」
すっかり冷めた雉のローストにナイフを入れ、砂のような味にしか感じられない肉を飲み込む。飢えた獣のように食事を繰り返し、最後に不作法にポタージュを飲み干すと、大ぶりの鴨肉がソテーになって運ばれて来た。
演奏は更なる激しさを増し、少女は口から涎や鼻水を垂れ流しながらも何とか笑顔を保っていた。何箇所かは皮が剥けてしまい、赤い血が滴り落ちている。それでも、首が締まりきらない程度に加減はされているようで、喉元が青黒く染まっていても少女はこと切れる様子も無さそうだった。
料理がどんなに素晴らしく調理されていても、セレンティアには死体を口にしているようにしか感じられない。縛られて剣を突き立てられた鴨にフォークを刺し、他の婦人を真似してお代わりを頼む。
相変わらずターニアは涼しい顔をしており、舞台で泣き叫ぶ少女の姿を心底つまらなそうに見つめていた。
ついに、端の長い髪の少女が棒の勢いに負けて、舞台の前側に落ちた。隣の黒髪の少女の首が絞まり、すぐに謝りながら長い髪の少女は舞台に戻る。
反対側の少女も、首を絞められた少女も、どんなに苦しくても笑顔を崩さないように心がけており、胸が締め付けられそうになってきた。
演奏が終盤を迎える頃には、三人の少女のヒップは赤く爛れてしまい、足先は痙攣を繰り返していた。舞台から落ちた少女以外の二人は縄を解かれて、観客の前で丁寧な挨拶と祝福を振る舞う。
「……演奏中に、不備が有った事をお詫び申し上げます。罰として、歪んでしまった楽器の音色をレイン侍女長が正して参りますので、どうぞお怒りを鎮めて下されば幸いでございます」
一人残された少女は、首に括られた縄を更に締め付けられて全身を震わせていた。本当なら舞台から逃げ出したいだろうにそれも許されず、笑顔で振る舞い続けるよう指導の鞭が打たれた。
専任楽師が高らかにドラムを鳴らし、ギロチンに似た刃の無い金属の台が運び込まれていく。本来なら刃が取り付けてある丸い穴に長い革紐が括り付けられ、その先に皮で出来た家畜用の首輪がぶら下がった。
先ほど取り残された少女は全身をブルブルと震わせ、歯をカチカチさせながら凍りついた笑顔で首輪の前に立った。手足を小間使いたちがギロチンの木枠に嵌め込み、首を括られた馬のような姿勢にされた少女は、限界になるまで革紐を締め上げられ、輪の中に固定された。
宙ぶらんになった少女は、苦痛を逃れようと身体を浮かせるが木枠の重みでそれは許されず、何度か咳を漏らしてからようやく元の凍りついた笑顔を見せた。
「それでは、第二曲を弾いて参ります。良い音色を奏でられ、皆さま方の歓談の花となれるよう精一杯弦を弾きますので、新人小間使いのご無礼はご容赦下さいませ」
雉のローストに手をつけられないまま、蕪のポタージュと採りたて温野菜が運ばれてくる。ディーリ専任家令は激しい嵐のような曲を弾きだし、レイン侍女長は少女の衣服を中心に鞭を振るう。
乳房を隠している僅かな布以外は掠め取られ、打たれる度に少女の首は締め付けられた。舌を噛まないように枷を嵌めさせられ、顔以外の全ての箇所が鞭で薔薇色に染められていく。
「……召し上がる気力も無いのかしら…? それとも、演奏に見惚れてしまっていて?」
それまで黙っていたターニアが、手を付けられないままの雉の皿を指差す。ナイフを切り分ける仕草は非常に上品で、公爵家や来賓の貴族の誰よりも美しかった。
「貴方が目指している位置は、鞭を振るう側なのかもしれないけれど…。それはとても、困難で難しい事よ。あの少女のように首を括られて鞭で打たれるのは、苦痛こそ与えられるけれど、責任はない。ただ流されるだけで済むのだから、何も考えなくても良いの……。
打つ者は、相手を殺さずに傷付けずに労りを持って接しなくてはならない。時には殺しを命じられる事だって有るけれど、その時もいかに死なせずに引き伸ばすかを調整しなくてはならない。セレンティア、貴方は雉や鴨にナイフを突き立てる側になりたいの? それとも、私に縄で首を括られて鞭で打って欲しくて?」
「ただ、緊張していただけよ…。ちゃんと食べるわ…」
すっかり冷めた雉のローストにナイフを入れ、砂のような味にしか感じられない肉を飲み込む。飢えた獣のように食事を繰り返し、最後に不作法にポタージュを飲み干すと、大ぶりの鴨肉がソテーになって運ばれて来た。
演奏は更なる激しさを増し、少女は口から涎や鼻水を垂れ流しながらも何とか笑顔を保っていた。何箇所かは皮が剥けてしまい、赤い血が滴り落ちている。それでも、首が締まりきらない程度に加減はされているようで、喉元が青黒く染まっていても少女はこと切れる様子も無さそうだった。
料理がどんなに素晴らしく調理されていても、セレンティアには死体を口にしているようにしか感じられない。縛られて剣を突き立てられた鴨にフォークを刺し、他の婦人を真似してお代わりを頼む。
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