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第三章 婚約レースの開幕

異国からの訪問者(5)

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「……だから、何故二人が私の部屋に入り浸っているんですの?」

 大量の蔵書を持参したフィンネルは小間使いと共に部屋の整理に向かい、手持ち無沙汰のまま自室に戻ってみればウィードが真新しい掛け布のソファーに横たわり、ついでに様子見で現れたアキニムも加わって、歓迎会の飲み直しがリリスの部屋で始まっていた。

「……だって、双子の片割れで継承権無くても、王族の付き添いや、大国の第三王子の相手なんかしてられるはずないだろ。うちは弱者貴族、こっちは侯爵家に格上げされたとはいえ、現役兵士の商家」

「まあ、そんな所だよ。突然入ってしまい悪いね、リリス」
 乾燥した木の実を口にしながら、二本目の麦酒をこの義兄は空けていた。

「居心地が悪いのは理解できますが、わざわざ狭い私の小部屋で行わなくても、ウィードの部屋の方がずっと広いでしょ?」
「こちら側の方が日当たりがいいし、何より壁や塀も分厚くて、暗殺の危険性が少ないからな」
「……ルブライト商会は、暗殺なんかしませんから!」

「まあ、それはいいとして……。当面の方針としては、オレたちは通常通りに昼間の仕事は続ける事にしたよ。他の候補者や姫さんも公務が有るだろうし、リリスには淑女レッスンが必要になるだろ? 暇な時間を過ごしていても仕方ないし、何より自宅から王宮まで通う必要もない」
「ウィードは宮廷鍛治職、義兄さまは兵隊職。確かに、勤めを続けるには近過ぎる職場ですわね」

 既に場所を把握されている戸棚からグラスを取り出し、ウィードはリリスの分の麦酒を注いだ。
 隠しておいたはずの燻製の缶まで開けられており、暗殺の才能が有るのはカーゲン家ではないだろうかと、リリスは複雑な心境のままグラスを飲み干した。

「ーーーそれでだ、元々話が来た時点でオレ達二人はリリスティンを当てにして志願してきた。
 姫さんは確かに美女だが、我々庶民には眩し過ぎる存在だ。しかも、漆黒の将軍の護衛と出入り自由の小部屋の見張り番付きというオプションまで付いていては、心の臓への負担も激しい……。その点、リリスは庶民中の庶民で、一杯飲ませるだけで割と何とかなる」
「……随分な言われようですが、早い話が私で妥協するという事、ですの?」
「言わば、立場が低い者同士の協定だな。互いに争わない、抜け駆けはしない」

 完全に出来上がっている二人を前に、リリスは頭を抱えた。ある程度、誘惑染みた事はあると覚悟はしてきたものの、こうもはっきりと告げられると何も反論出来そうにもない。

「つまり、リリスティンはいい女だという事だ……」 

 ソファーへと抱き上げられドレスの裾を慌てて抑えていると、今度はアキニムが押さえていた手に口付けてきた。
 義兄だと思い続けてきた相手に求愛され、カッと身体を熱くさせたリリスはウィードの膝に座る格好になり、グラスへ飲み物の追加を入れられる。

「何だか釈然としませんけど、悪い気分にはなりませんね……」
「ーーーそう簡単には、義妹を譲らないけどね」

 口付けられたままの唇が指先へと広がり、咥内へと這わされて撫でられていく。
 人差し指を抱え込んだまま舌先で触れられ、軽い甘噛みをされるとリリスは大きく反応した。調子を良くしたウィードが口移しで麦酒を注ぎ込み、細く入ってきた舌が当たると、身体が激しく火照り出してきた。

「……歓迎会は、もう止めにするって決まったはずですのに……」
「でも、挨拶は今後も続けるそうだよ」

 アキニムに微笑まれ、リリスは困惑しながらも同意の頷きをする。それを合図に手のひらへと口付けられ、コルセット越しに温かな手の感触が伝わってきた。留め具を外すのは拒んだ代わりに、首筋へと舌先が動いていった。
 ソファーを背にもたれたリリスは、目元に頬へと軽いキスを繰り返すウィードの肩を抱き、左胸に義兄の指先が触れるのを感じた。

「……こ、これは、姉姫さまからの大切なお下がりだから、ダメですって……」
 抵抗も虚しく、コルセットとドレスの留め具は外され、リリスの豊満な胸元は露わになった。
 やや蒸気した肌に固定具の跡が彩られ、そのまま義兄に乳房を抱かれたリリスは恥ずかしそうに目を閉じた。

「挨拶だから、仕方ない。そうだったな……?」
「ええ、そうですね……」
 二つの敏感な部分を交互に吸われ、大きく喘いでからリリスは安堵の息をする。両の手は二人の指先に繋がれて、もう拒む事ですら許されなかった。

「ーーー二人掛かりで、なんて、酷いです」
「ニオブ補佐官にも二人で攻め立てたって、聞いたけどね……?」

「それを言われると、返す言葉も……有りませんが……っ、あっ、んっ。エリヴァルがメインでやった話ですし」
「向こうは王女が髪を切ってまで反省してたのに、リリスは何も償っていないよね?」

 そう言えば、自室に戻るように伝えてきたのはニオブだった。仕返しにしても巧妙過ぎる手口に、元老院秘蔵っ子と呼ばれるだけあって感服しかない。

「……そんな前の話を、んっ、持ち出されても、反省も、何も……」
 アンダースカートから二人の手が伸び、秘芯にそっと触れていく。探るような指先が動き回って撫でられ、もっとも敏感な部分には決して当てられないように焦らされていった。

「……っ、そこは、触っては、……」
 再び乳房を掴まれ、指先が押し当てられた。敏感な部分をアキニムの舌で絡め取られ、ウィードが秘芯に強く指を入れ、爪先で出方を窺うように弾く。

 ようやく両手が解放された頃にはすっかり気力も失い、二人の肩を抱いたまま交互に口付けて、軽く額を叩いた。
 身なりを整えベルを鳴らして、酔い覚ましのお茶の準備をさせると、リリスは大切なドレスの裾を掴んで覚えたばかりのお辞儀を、二人の候補者に向けて行った。
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