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第2話 秘密組織ブラックストライクの謎 前編
1.悪の秘密結社の結成
しおりを挟む「ひっ、ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
その少年は、迫り来る恐怖にブルブルと震えながら布団に潜り込むような格好になる。
かつて、これほどまでの恐怖に包まれたことがあっただろうか? いや、恐らく無いだろう。
少年の前に集まってきた3っつの黒い影は、ゆっくりとマントを取り外していく。
「2ー12 菊池秀和。覚悟は良いな……?」
影だった者達の一人は、完全にマントを外して姿を現した。
短く切りそろえられた黒髪、全体的にほっそりとした体型だが破壊力を持つ足が外見を変えている。
つまりは、我が学校の理事長である。
ただし公共の場とは違い、本日は白衣ならぬ黒衣を着用していた。
胸元には、子供が好きだという理由で、インキンマンのエンブレムが飾られているところが何とも言えない、何とも言えなさを出している。
「---な、な、何なんですかこれは!」
菊池は大声で周りを非難する。
無理も無い。もともと、彼は無免許で10m自動車を動かして事故ってしまったことにより、退学か否かを迫られるために理事長室に来たのだから当然だ。
「深い意味は無い。しいて言うなら、趣味だ……」
即答されては、文句も出せない。
訳が分からずにボーっとしていれば、今度は後ろに残っていたさらに怪しい2つの影がマントを外した。
ぐるぐるめがねと黒衣。
ただし、一人は長髪で一人は短髪だという違いはあるが、あまりの異様さに菊池の腰は逃げる体制になってしまった。
「彼らは、今回のプロジェクトのためだけに呼んだゲスト……。科学部員だ!」
科学部。菊池の脳裏に破滅の序曲が流れ始める。
そう、菊池が通う帝都高校の中で、科学部と言えば改造と人体実験を繰り返す黒き噂がつきまとう集団だったからだ。
終わりだ。菊池は、すべてを悟ったかのように首をゆっくりと振る。
「---まあ、事情を説明しよう。君の不祥事は、職員会議でも大変な問題になった。
つまり、いちいち処分を決めるのがめんどくさい、理事長がおっけーったら退学って事で。と話を持ちかけられた」
「はあ……」
「ま、こっちとしては大迷惑と言いたいぞってところだが、こっちにも、ある事件が起きてしまったんだよ」
「な、何です?」
やる気は起きなかったため、とりあえずの返事をする菊池。
「うちのカミさんが実家に帰ってな。
ま、失敗して子供が出来ちまったから、その準備で帰るんだが……うちは元々最初女の次は男が希望だったんだが、2人目が女の子でそりゃねえぜと思ったんだが、運良く次の次の子供が男の子で、ゲットと思わず名付けたんだがこの通りさつーわけで、カミさん居ないからオレは暇。なわけで、ちょうど面白いところに話が舞い込んできたっつーわけだ」
「まあ、これも運命だと思って諦めたまえ……」
短髪のぐるぐるめがねが、慰めの言葉をかけてくる。
優しくて生徒思いに見えていた理事長は、遠い世界に消えたんだと、菊池はすべてを諦めた。
「---はあ。で、何をするんで?」
「世界征服」
三人の声が一緒になる。とその時、世界が目覚めるようなことはなかった。
「まずはメンバーを紹介しよう。私はシェリーと名乗っている……」
シェリーも、くそも無いだろうと、菊池はとりあえず握手をした。
「我。我は黒き魔王。黄金の光に包まれし、黒き魔王だ」
長髪のぐるぐるめがねが、自慢げに言う。
その名前を使うことに、まったく恥ずかしさはないようである。
「……私は、そうだな。殺戮者プリティーボンバーと名乗ろう」
短髪のぐるぐるめがねが名乗ると、何故だか一同はスクラムを組み始めた。
慌てながらも、とりあえず参加する菊池。
「メンバーは揃った。これより、我らは秘密結社ブラックストライクとして活動する」
清潔な理事長室に、不気味な笑いが響きわたる。
菊池は、自分はもうまともな人間ではないんだと人生を忘れ始めた。
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