異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪

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第九話……初勝利

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 新造艦は間もなく完成した。
 晴信とディーは喜ぶ。

 しかし、問題は艦名であった。
 なんでもいいという訳にはいかない。


「ねぇ、なんにしよう?」

 晴信はディーに尋ねる。

「んー、丈夫がウリな船ですよね。昔に盾が要らないほど丈夫な鎧があったらしいですよ」

 ディーが情報端末をもとに応える。

「よし! 盾がいらないほどなら【タテナシ】にしようか?」

「いいですね!」

 こうして新造艦はタテナシと命名されたのだった。



☆★☆★☆

「タテナシ、発進!」

「了解!」

 タテナシの艦長は晴信。
 ディーは副長兼なんでも係だ。
 とくにカッコいい名称はない。

 晴信は宇宙海賊相手にリベンジを仕掛けた。
 今回も同じように任務は商船の護衛。
 宇宙ステーション【タイタン】のギルド員に頼みこんでの任務だった。


「みんな頼んだよ!」

「「「マカセロ、マカセロ!」」」

 晴信は、戦闘員たるお掃除ロボットたちに声を掛ける。

 ……が、しかし。
 彼等、お掃除ロボットの言語能力はあまり高くなかった。

 タテナシは、宇宙ステーション【タイタン】を出航後、最初のワープから、僅か6時間で会敵した。
 それは、再びの敵。
 晴信が建造した船であった。



☆★☆★☆

『敵発見、左舷方向に距離8.6光秒』

『砲撃戦用意!』

 タテナシと同じく、護衛任務に就いていた宇宙警察の船が反転。
 次々に宇宙海賊に挑んでいく。

 ……が、今回は相手も複数だった。
 きっと成果に乗じて仲間が集まったのだろう。

 宇宙警察の船はあっという間に追い散らされた。


「砲撃戦用意!」

 宇宙警察が逃げ散った後に、のんびりと交戦準備に入るタテナシ。
 判断が遅いのは、晴信の判断が遅かっただけという切ない事情なのであるが……。


『敵砲撃来マス!』

 タテナシの音声AIが晴信に危険を知らせる。
 と、同時に数条のレーザー光がタテナシを襲う。

――ドシュ。

 鈍い音はするが、タテナシに損害があるようではなかった。

『敵砲撃、艦首ノ液体金属層ガ吸収。吸収率99.998%』

 タテナシのAIの報告によると、艦首の液体金属層がレーザーを吸収、又は反射したようであった。


「シールド用バリア展開! ミサイル迎撃用意!」

 敵の攻撃に応じて、晴信の指示も早くなる。
 その命令に従い、迎撃を準備するのはお掃除ロボットたちだった。

『対空VLS良シ! 迎撃開始シマス!』

 攻撃力に関しては未知数だが、タテナシの防御力は超一流であった。
 流石は、どちらかと言えば臆病な晴信が、力を入れただけはあった。

 宇宙海賊側からのレーザー砲はバリアにはじき返され、実弾兵器は液体金属に吸収。
 ミサイル攻撃も過剰な数の迎撃ミサイルによって叩き落とされた。

 このような攻防戦が2時間も続く。
 タテナシは守っていただけだったが、宇宙海賊側は弾切れやエネルギー切れとなり、弾幕はみるみる間に薄くなっていった。


「ハルノブ、そろそろ乗り移る!?」

「そうだね! 敵に接舷開始! 乗り移れ!」

 ディーの問いに返事をした形で、晴信は艦内のお掃除ロボットたちに近接戦闘を命じた。
 以前に晴信が作った海賊船に、タテナシは突っ込み、強引に敵船に接舷した。

 強行接舷した後に、高出力溶解カッターで敵船に穴をあけ、その穴からお掃除ロボットたちが雪崩れ込んでいった。



☆★☆★☆

 晴信は怖いので艦橋のモニターから観戦。
 お掃除ロボットたちの奮闘を応援した。


「逮捕スル! 手ヲ挙ゲロ!」

「五月蠅い! 死ね!」

 敵船内の宇宙海賊たちは、予想に反して虫型の生命体であった。
 わかりやすく言えば、頭が虫型の直立歩行民族である。

 宇宙海賊たちはレーザー銃などで応戦。
 しかし、お掃除ロボットたちは、電磁防壁を施した盾などで攻撃を無力化した。

 流石は古の人間たちが作った警備兼、お掃除ロボットたち。
 あっという間に、宇宙海賊たちを取り押さえていったのだった。


「「「エイエイヲー!!」」」

 すぐに敵族長が捕縛され、機械音の勝鬨があがった。

 この戦いで、晴信は敵船6隻を拿捕。
 海賊664名の逮捕に成功したのだった。



☆★☆★☆

「いやいや、晴信君だったね、流石というほかない。君にお願いしてよかったよ!」

「有難うございます!」

 宇宙ステーション【タイタン】の惑星間ギルドの所長は、先日と打って変わって晴信を大いに持ち上げた。
 どうやら、この地域の宇宙警察の惨状から、敵宇宙海賊への評価があがってのことであったらしい……。


「いやいや、それでね。君の造船技術に頼って、一隻ほど宇宙船が欲しいんだ」

「……はぁ、新造すればよろしいんで!?」

「それには及ばん! 君が作った船を譲ってくれ!」

 所長の言葉に、一瞬あせった晴信。
 しかし、その対象の船は、以前に晴信が作り、先ほど拿捕した宇宙海賊の船だった。


「どうぞどうぞ!」

「おお! 有難い!」

 所長は顔を綻ばせる。
 あの船は宇宙警察の船を34隻沈めた名艦になっていたらしかった。


「……でだ、船代と成功報酬はこれだけで良いかな?」

「はい、よろしゅうございます!」

 お礼の段になって、ディーが口を挟んで受け取った。
 晴信にこの世界のことはよくわからないためだ。

 晴信が後でディーに聞くところによると、報酬はタテナシの燃料代約64か月分相当のエネルギーだった。

 ……なにはともあれ、晴信の初勝利であった。
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