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第二十三話……御親類衆筆頭
――天正七年(1579年)
甲斐国・躑躅が崎館。
とある吉日。
穴山信君が勝頼の元を訪れた。
「ご陣代様、実は私の嫡男の婚礼を考えておりまして……」
「左様か、目出度いことだな。祝いの席には是非顔を出させてもらうぞ!」
「有難き幸せ! なれど未だに嫁の成り手がおりませぬ……」
「……ほぉ?」
勝頼は不思議に思って尋ねると、なんと自分の嫡子の嫁に、勝頼の娘を所望したいとのことだった。
……なんて奴だ!
その場の席にいた家臣たちも顔をしかめる。
なぜならば、勝頼の娘はまだ赤子だったのだ。
赤子を嫁に出せとは、子の親としては受け入れがたい話であり、ましてや相手は自分の主家なのだ。
厚顔無恥にもほどがあった。
「いやいや、まだ我が娘は赤子ではないか?」
「いやいや、そこを何とか……」
食い下がる穴山信君ではあったが、勝頼はなんとか諦めてもらうよう腐心する。
そのやり取りは、主が臣下に過剰に気を遣う不思議な光景であった。
「穴山殿! いい加減になされぃ!」
目に余る情景に、勝頼の側近である長坂長閑斎が苦言を呈したところで、流石の信君も諦めた。
家臣たちの冷ややかな目線がこの話を押しとどめたのである。
……諏訪勝頼め!
よくも、この御親類衆筆頭の穴山に恥をかかせおって。
この話には、信君のみならず、彼の妻も大いに憤った。
その要因は、彼の妻は信玄の次女であり、さらに彼の母は信玄の姉であった。
よって、勝頼は信君の義理の弟にあたり、その血筋は勝頼よりも、武田宗家に近しいものだったのである。
信君の頭の中では、自分こそが武田の統領たる自負があったのである。
また、それを認める武田親類衆も少なくなかった。
甲斐国・躑躅が崎館。
とある吉日。
穴山信君が勝頼の元を訪れた。
「ご陣代様、実は私の嫡男の婚礼を考えておりまして……」
「左様か、目出度いことだな。祝いの席には是非顔を出させてもらうぞ!」
「有難き幸せ! なれど未だに嫁の成り手がおりませぬ……」
「……ほぉ?」
勝頼は不思議に思って尋ねると、なんと自分の嫡子の嫁に、勝頼の娘を所望したいとのことだった。
……なんて奴だ!
その場の席にいた家臣たちも顔をしかめる。
なぜならば、勝頼の娘はまだ赤子だったのだ。
赤子を嫁に出せとは、子の親としては受け入れがたい話であり、ましてや相手は自分の主家なのだ。
厚顔無恥にもほどがあった。
「いやいや、まだ我が娘は赤子ではないか?」
「いやいや、そこを何とか……」
食い下がる穴山信君ではあったが、勝頼はなんとか諦めてもらうよう腐心する。
そのやり取りは、主が臣下に過剰に気を遣う不思議な光景であった。
「穴山殿! いい加減になされぃ!」
目に余る情景に、勝頼の側近である長坂長閑斎が苦言を呈したところで、流石の信君も諦めた。
家臣たちの冷ややかな目線がこの話を押しとどめたのである。
……諏訪勝頼め!
よくも、この御親類衆筆頭の穴山に恥をかかせおって。
この話には、信君のみならず、彼の妻も大いに憤った。
その要因は、彼の妻は信玄の次女であり、さらに彼の母は信玄の姉であった。
よって、勝頼は信君の義理の弟にあたり、その血筋は勝頼よりも、武田宗家に近しいものだったのである。
信君の頭の中では、自分こそが武田の統領たる自負があったのである。
また、それを認める武田親類衆も少なくなかった。
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