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2章 本編
新しい日常
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「――うわぁああああっ!」
「ぴゃっ」
ガルチ村に着いて三日、夢に出てくるカルミアの懇願は日に日に長くなっていく。無表情で静かに助けを求めるカルミア、その姿をただ抱きしめる。
「何度も見ても慣れないな。……いや、慣れていいものじゃないか」
自分の手の平を見て、やけに鮮明に感じた声と腕の中の温もりを思い出す。
この夢は、自分への鎖だ。今も山の頂上でトウジの助けを待っているカルミアのことを忘れない。一日でも早く強くなって助けに行くと、自分を戒める固い鎖。
どこかへ逃げていてくれているという淡い期待を持ちながら、寝ても覚めても焦る気持ちは収まらない。
「あの……」
ベッドの横からした声の方へ向くと、狐のような耳をした女の子が少しこ顔を出していた。
短く揃った橙色の髪に黄色い目、黄色いエプロンを着た少女で、家族で経営しているこの宿の一人娘、シエン・メイクスだ。
「夜ごはん、出来ました。一階の食堂へどうぞ」
「あ、あぁ。うん。ありがとう」
叫んでいるところを見られ、少し気まずくなりながら食堂へ向かった。
*
ご飯を食べ終えると、すぐさま装備を準備して外に出る。既に日は沈み、星明かりのみが照らす薄暗い平原を一人で進んでいく──
「何してるの?」
「ぴゃっ」
シエンが少し後ろを隠れてついて来ていた。手にはフライパンを持っている。
「夜は危ない魔物がいっぱいいるから家に帰った方がいいよ?」
「いえ!大丈夫です。勇者様を守るのが私の役目ですから!」
「守る……?」
自分を守ると宣言したシエンの手は震えていて、フライパンを今にも落としそうになっていた。戦闘の経験がないのは明白だ。
「よくわかんないけど、俺は大丈夫だから。まだ村も近いし1人で帰れる?」
「え、あの」
待って、と言葉を続けようとした時には既に森の方へ消えていった。
「す……」
取り残された少女は少年の消えていった森を見つめ、
「すごい!勇者様すごーい!」
目を輝かせてはしゃぎながら森へと向かっていった。
*
月明かりすらほとんど届かなくなった暗い森の中。本当に一人になったトウジは魔物を探して歩みを進める。
「あの時と本当に同じ森かってくらい静かだなぁ」
以前恐ろしい数の魔物と巨大な亀を倒した森だが、今はほとんど見当たらない。
「まぁ、前回はあの女の仕業だろうけど」
魔物を倒しつつ脳裏にカルミアの師匠と名乗った女の顔を浮かべた。そして同時にカルミアの顔も浮かんできたが、押し戻す。
「ていうか、本当に魔物いないんだけど」
「ぴゃっ」
ガルチ村に着いて三日、夢に出てくるカルミアの懇願は日に日に長くなっていく。無表情で静かに助けを求めるカルミア、その姿をただ抱きしめる。
「何度も見ても慣れないな。……いや、慣れていいものじゃないか」
自分の手の平を見て、やけに鮮明に感じた声と腕の中の温もりを思い出す。
この夢は、自分への鎖だ。今も山の頂上でトウジの助けを待っているカルミアのことを忘れない。一日でも早く強くなって助けに行くと、自分を戒める固い鎖。
どこかへ逃げていてくれているという淡い期待を持ちながら、寝ても覚めても焦る気持ちは収まらない。
「あの……」
ベッドの横からした声の方へ向くと、狐のような耳をした女の子が少しこ顔を出していた。
短く揃った橙色の髪に黄色い目、黄色いエプロンを着た少女で、家族で経営しているこの宿の一人娘、シエン・メイクスだ。
「夜ごはん、出来ました。一階の食堂へどうぞ」
「あ、あぁ。うん。ありがとう」
叫んでいるところを見られ、少し気まずくなりながら食堂へ向かった。
*
ご飯を食べ終えると、すぐさま装備を準備して外に出る。既に日は沈み、星明かりのみが照らす薄暗い平原を一人で進んでいく──
「何してるの?」
「ぴゃっ」
シエンが少し後ろを隠れてついて来ていた。手にはフライパンを持っている。
「夜は危ない魔物がいっぱいいるから家に帰った方がいいよ?」
「いえ!大丈夫です。勇者様を守るのが私の役目ですから!」
「守る……?」
自分を守ると宣言したシエンの手は震えていて、フライパンを今にも落としそうになっていた。戦闘の経験がないのは明白だ。
「よくわかんないけど、俺は大丈夫だから。まだ村も近いし1人で帰れる?」
「え、あの」
待って、と言葉を続けようとした時には既に森の方へ消えていった。
「す……」
取り残された少女は少年の消えていった森を見つめ、
「すごい!勇者様すごーい!」
目を輝かせてはしゃぎながら森へと向かっていった。
*
月明かりすらほとんど届かなくなった暗い森の中。本当に一人になったトウジは魔物を探して歩みを進める。
「あの時と本当に同じ森かってくらい静かだなぁ」
以前恐ろしい数の魔物と巨大な亀を倒した森だが、今はほとんど見当たらない。
「まぁ、前回はあの女の仕業だろうけど」
魔物を倒しつつ脳裏にカルミアの師匠と名乗った女の顔を浮かべた。そして同時にカルミアの顔も浮かんできたが、押し戻す。
「ていうか、本当に魔物いないんだけど」
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