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魔術展覧会編
第6話
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「エマさん!」
ボクらは人間の姿でエマに駆け寄った。
「えっと…どなたでしょう?声はチェスさんのようですが。それに…そちらの方は?」
「あ、ボクね、今人化の術を使って人間の姿になってるんだ!こっちは同じく人化の術で人間の姿になってるケットシーのミルテ!」
「よ、よろしくお願いします…」
チェスとミルテは人化の術を解いた。ポンっという音と共に、人間の姿から元のケットシーの姿へと戻る。
「あっ、失礼しました。チェスさんだったのですね!人化の術なんて初めて聞きました。それに…ミルテさんと言いましたか?」
「はい、ミルテと申します。私はこのオラクルハイトに住むケットシーの一員です」
「そうなんですね!よろしくお願いしますね。わたしはエマと申します。チェスさん達と成り行きでご一緒させてもらってる魔法使いの端くれです」
「はい!よろしくお願い致します」
「あ、ねえブライゼ。さっき拾ったイルミナの宝石、本人に返してきてもいいかな?」
「(ああ、行こうか。もう一度人化の術を使って人間の姿になろう。その方が誤解も少ないだろう)」
「うん!そうだね」
「あの、わたしも一緒についていって良いですか?イルミナさんとお話しできる機会なんて滅多にないので」
「私もついていきたいです!ケットシーの身ですが、ユーディットさんのガラス細工の魔法、遠くから眺めて素敵だなって思って。是非ともお話ししたいな」
「エマさんもミルテさんも行くんですね!ブライゼ、良いかな?」
「(ああ、良いぞ。イルミナとユーディットの反応にもよるが、きっと話をしてくれる筈だ。私の竜眼のスキルがそう告げている)」
「やった!イルミナさんとお話しできるかな…」
「(私の方からもサポートしよう。チェス、エマ、ミルテ、行くぞ)」
再びチェスとミルテが人化の術で人間に変身し、一同は紫に輝く宝石を持ってイルミナとユーディットの元へと向かった。
「あれ?なんだよ、アメジストハートが無いじゃん」
「本当だね。どこにいっちゃったんだろう」
「参ったなー。あれが無いとうちらの傑作が動かないんだよな。どうしたもんかねー」
「イルミナさんとユーディットさんでお間違いはないですか?」
「ん?誰だ?」
「ボクはチェスと申します。イルミナさん達に渡したいものがあってここに来ました」
「渡したいものですか?」
「はい。これを渡したくて」
チェスは服の懐から紫色のハート型の宝石を取り出し、イルミナ達へ渡した。
「あー!これアメジストハートじゃん!どこにあったんだ?」
「この街に住み着いてるケットシー達が持ってました。実はボクもケットシーでして、先程そのケットシー達から取り返してきたんです」
「そうなのか!…ああ!あの時か!アタシらが目を離した隙にテーブルの上に置いておいたアメジストハートが無くなってたの、猫達が盗んだからか!」
「そうなんです。それで、用水路に落ちてたのを見つけ、今イルミナさんに届けたというわけです」
「そっかー!ありがとな!」
イルミナはそう言うとポンポンとチェスの頭を撫でた。チェスは少しだけ顔を赤らめる。
「あの…謝りたい事があります」
「何でしょうか?」
「私はミルテと申します。今は人化の術を使って人間の姿になっているのですが、本当はケットシーなんです。実はイルミナさんとユーディットさんの宝石を盗んだケットシーのグループに所属していました。私は盗むのはやめようよと反対したのですが、みんなは私の意見を聞いてくれなくて」
「それマジか?」
「はい。私は直接盗みには加担していないのですが、止められなかった事を悔やんでいます。今こうしてイルミナさんやユーディットさんとお話しできて嬉しいのですが、同時に申し訳なくて…本当にごめんなさい」
「なんだよ~、そんな事かよ」
「ミルテさんは盗みには加担してないし、止めてくれたんですよね。なら、わたし達に謝る必要はないですよ。現にこうして宝石も返ってきましたし」
「なぁ、アンタらはこの後予定とかってあるか?もしなければ、アタシらの作った作品を見てもらいたいんだが。良いか?」
「はい!是非とも見たいです!」
「よし!良い返事だな!じゃあ来いよ!アタシらのブースに!」
一同はイルミナとユーディットと同行し、彼女らのブースへと向かった。
「ここがイルミナさんとユーディットさんのブースか…なんだろう、エマさんが開設したような露店みたいなのと違って大きめのプレハブみたいなところがブースになってるんですね」
チェスは小綺麗な内装で広めなプレハブの中に入ると、思わずあたりを見渡してそう呟いた。
「アタシらはこのオラクルハイトにある魔法学校に通っててさ、この魔術展覧会が終わって、作品を展示したらもう卒業なんだよね」
「その最後の作品で、伝説を残そうって思って、イルミナちゃんと、そして他の魔法使いの生徒と一緒に作品をつくり上げたんだよね!」
「ああそうさ。そしてこれが!アタシらの最高傑作!とくとご覧あれ!」
イルミナはプレハブの奥へと一同を誘導し、部屋の奥に布をかけられた物体を指差す。そして、その布を取った。
「わぁ…すごい…!」
そこには、高さ170cmくらいの、一般的に思い浮かべるような帽子を被った魔法使いの姿をした人形があった。
「これがイルミナさんとユーディットさんの最高傑作か!凄いな…まるで人間と変わらないじゃないか…」
「わたしも人形は作るけど、土で出来たゴーレムばかりで、ここまで精巧な人間に近い人形は造れないよ…やっぱりイルミナさんとユーディットさんは凄いな…」
「へへーん!スゲーだろ?これこそがアタシらの最高傑作だ!」
「アタシはさ、夢見てんだよ。支援者(パトローナス)がもう一度日の目を見る時をさ」
「パトローナス?」
「パトローナスっていうのは、魔法使いの職業の内の一つで、支援者という意味です。その名の通り、パトローナスだけでは直接的な魔法、炎や氷をはじめとする魔法、それにわたし達が使っているような物を作り出すクラフト系の魔法は使えませんが、他の魔法使いが使う魔法を強化する魔法を使う事ができる職業なんです」
「つまりは魔法を強化する魔法を使う魔法使いって事かな?」
「そういう事さ。今じゃ裏方に回って出てくる事が少なくなってきた。それがアタシは嘆かわしい。どんな魔術も、パトローナスなしでは成り立たないっていうのに!」
「今の魔術協会も、魔法軍事機関も馬鹿ばっかりだ!保身馬鹿、世襲馬鹿、ただの馬鹿。そういう馬鹿どもをわからせる為に、アタシは魔術を磨く!そしてーーー」
「パトローナスの立場を、もう一度確固たるものにする!それがアタシの夢だ」
一同はイルミナの熱い演説に痺れるものを感じながら聞いていた。その言葉の後に、チェスがイルミナに質問する。
「ねえ、イルミナさん。どうしてそこまでパトローナスの復権に拘るの?」
「そうだよな。まずそこから話そうか。アンタらはさ、シャルロット・クローリーって知ってるよな?」
「シャルロット・クローリー?誰かの名前ですか?」
「ちょ、アンタはシャルロットを知らないのか?歴史の教科書にも載ってるような有名人だぜ?」
「えっと…ボクからも話す事があります。ボク、実はこの世界の出身ではなく、別の世界から来たんです。だから、この世界の事とかは何も知らなくて」
「ん?じゃあアレか?アンタはアキラ王みたいな立場って事か?」
「アキラ王?」
「このイレインにオラクルハイトを設立した偉大なる王だよ!何でも異世界の日本から来て、シャルロット達と一緒に魔王を倒してこの世界を救ったっていう。まあ、アキラ王も亡くなってもう1000年も経つから随分昔の話だけどな」
「えっ、じゃあボク以外にもこの世界に転生していた人がいたという事ですか!?」
「ああ。頻度は多くないし、何百年から何千年かに一回くらいだけど、この世界が危機に陥ると女神が別の世界から魂を転生させて救世主にするっていう言い伝えがあんだよ!チェスもひょっとしてそれか?」
「ボクが…救世主…?いやでも、ボクにそんな力は…」
「いいや!試してみようぜ!チェス、これ知ってるか?」
「何これ…?」
ボクはイルミナからある道具を渡された。その道具の形状は直方体で、人間の姿のボクの掌ほどの大きさだった。
「これは…箱ですか?」
「ただの箱じゃないぜ!それはな、魔法端末(マジックデバイス)って言ってな、通信、解析、検索の魔術が組み込まれた代物だ。それでアンタの持ってる魔法とかスキルも解析できるんだぜ!」
「通信、解析、検索の魔術…?」
「ああ。その端末は2台以上あればどれだけ離れていてもその端末を通して音声で通話が出来るし、それに検索機能で全世界の魔術師のデータを検索して、そいつがどんな魔法を使えるのかもわかるんだ!記録の機能を使えば、音声とかも録音できるぜ!」
「(要するにこれってボクのいた世界で言うスマホみたいなものか!似たようなものがこの世界にもあったなんて!しかも魔法のスマートフォン!)」
「でもイルミナさん、これってどうやって起動するの?電源ボタンとかは見たところ無いし…」
「ああ、心配はいらねーよ。それは電気の力で動くんじゃなくて、持ち主の魔力で動くんだ!試しにお前の魔力を流し込んでみろ」
「魔力を流し込むって、どうやるかわかりませんよ…」
「(心配するな)」
「ブライゼ!」
「(この世界は魔法が存在しているが、誰しもが魔法を使えるわけではない。しかし、誰しも微弱な魔力は持っている。まずは端末を手に持て)」
チェスは端末をテーブルから拾い上げ、手に持った。
「うん。持ったよ」
「(そして、その端末の下の方にへこんだ窪みがあるだろう。それが端末の起動ボタンだ。そこを触れ。そうすればその者の魔力が自動的に端末に注がれ、誰でも端末を起動できる)」
「まんまスマホじゃないか…!とりあえず起動するね」
チェスは端末の下の方にある窪みに触れた。フォンッという何とも言えない音と共に黒一色で塗りつぶされた画面が、森のような景色の画面に切り替わる。
「画面が変わった!ここもスマホと同じだ…」
「おっ、起動できたか?」
「はい。とは言っても、この後どうするのか…」
「ああ、ここの解析っていうアプリがあるだろ。それを触ってみろ」
「こうですか?」
チェスは解析のアプリアイコンをタップし、アプリを起動した。
「こちら、解析機能でございます」
「わっ、音声も出た」
「そうビビんなよ。これから行う魔力解析の結果もこの画面に表示される。魔法とかの才能っていうのはな、神から贈られた才能とか恩恵みたいなもんで、基本的には先天性の生まれつきのもんだな。後天的に才能とか魔法を習得する例もあるけど、それは神とか悪魔とか精霊とかと直に接触して加護を与えられた場合が多いな。まあ、アタシは神様とかとは会ったことは無いけどな」
イルミナの話は要するに、神様とか悪魔とかの存在がこの世界では常識レベルということだった。ボクも女神様から力を貰ったから、これが後天的に力を得たという事なんだろう。
「あとね、チェスさん。この解析はあくまで才能の有無を解析するだけであって、現時点での力量とか魔力がどれくらい多いかとか、才能の限界値とかはわからないんだ。だから修行とか努力が全く意味ないっていう訳じゃないから安心してね」
「うん、わかったよ。ありがとうね、イルミナさんもユーディットさんも」
「ささ、その状態でもう一回画面に触れてくれ。それで10秒くらいが経過したら解析完了するからさ」
「うん」
ボクは優しく解析画面に触れた。そして、10秒が経過するのを待った。
「解析完了です」
そこに表示された内容は、目を疑うものだった。
ボクらは人間の姿でエマに駆け寄った。
「えっと…どなたでしょう?声はチェスさんのようですが。それに…そちらの方は?」
「あ、ボクね、今人化の術を使って人間の姿になってるんだ!こっちは同じく人化の術で人間の姿になってるケットシーのミルテ!」
「よ、よろしくお願いします…」
チェスとミルテは人化の術を解いた。ポンっという音と共に、人間の姿から元のケットシーの姿へと戻る。
「あっ、失礼しました。チェスさんだったのですね!人化の術なんて初めて聞きました。それに…ミルテさんと言いましたか?」
「はい、ミルテと申します。私はこのオラクルハイトに住むケットシーの一員です」
「そうなんですね!よろしくお願いしますね。わたしはエマと申します。チェスさん達と成り行きでご一緒させてもらってる魔法使いの端くれです」
「はい!よろしくお願い致します」
「あ、ねえブライゼ。さっき拾ったイルミナの宝石、本人に返してきてもいいかな?」
「(ああ、行こうか。もう一度人化の術を使って人間の姿になろう。その方が誤解も少ないだろう)」
「うん!そうだね」
「あの、わたしも一緒についていって良いですか?イルミナさんとお話しできる機会なんて滅多にないので」
「私もついていきたいです!ケットシーの身ですが、ユーディットさんのガラス細工の魔法、遠くから眺めて素敵だなって思って。是非ともお話ししたいな」
「エマさんもミルテさんも行くんですね!ブライゼ、良いかな?」
「(ああ、良いぞ。イルミナとユーディットの反応にもよるが、きっと話をしてくれる筈だ。私の竜眼のスキルがそう告げている)」
「やった!イルミナさんとお話しできるかな…」
「(私の方からもサポートしよう。チェス、エマ、ミルテ、行くぞ)」
再びチェスとミルテが人化の術で人間に変身し、一同は紫に輝く宝石を持ってイルミナとユーディットの元へと向かった。
「あれ?なんだよ、アメジストハートが無いじゃん」
「本当だね。どこにいっちゃったんだろう」
「参ったなー。あれが無いとうちらの傑作が動かないんだよな。どうしたもんかねー」
「イルミナさんとユーディットさんでお間違いはないですか?」
「ん?誰だ?」
「ボクはチェスと申します。イルミナさん達に渡したいものがあってここに来ました」
「渡したいものですか?」
「はい。これを渡したくて」
チェスは服の懐から紫色のハート型の宝石を取り出し、イルミナ達へ渡した。
「あー!これアメジストハートじゃん!どこにあったんだ?」
「この街に住み着いてるケットシー達が持ってました。実はボクもケットシーでして、先程そのケットシー達から取り返してきたんです」
「そうなのか!…ああ!あの時か!アタシらが目を離した隙にテーブルの上に置いておいたアメジストハートが無くなってたの、猫達が盗んだからか!」
「そうなんです。それで、用水路に落ちてたのを見つけ、今イルミナさんに届けたというわけです」
「そっかー!ありがとな!」
イルミナはそう言うとポンポンとチェスの頭を撫でた。チェスは少しだけ顔を赤らめる。
「あの…謝りたい事があります」
「何でしょうか?」
「私はミルテと申します。今は人化の術を使って人間の姿になっているのですが、本当はケットシーなんです。実はイルミナさんとユーディットさんの宝石を盗んだケットシーのグループに所属していました。私は盗むのはやめようよと反対したのですが、みんなは私の意見を聞いてくれなくて」
「それマジか?」
「はい。私は直接盗みには加担していないのですが、止められなかった事を悔やんでいます。今こうしてイルミナさんやユーディットさんとお話しできて嬉しいのですが、同時に申し訳なくて…本当にごめんなさい」
「なんだよ~、そんな事かよ」
「ミルテさんは盗みには加担してないし、止めてくれたんですよね。なら、わたし達に謝る必要はないですよ。現にこうして宝石も返ってきましたし」
「なぁ、アンタらはこの後予定とかってあるか?もしなければ、アタシらの作った作品を見てもらいたいんだが。良いか?」
「はい!是非とも見たいです!」
「よし!良い返事だな!じゃあ来いよ!アタシらのブースに!」
一同はイルミナとユーディットと同行し、彼女らのブースへと向かった。
「ここがイルミナさんとユーディットさんのブースか…なんだろう、エマさんが開設したような露店みたいなのと違って大きめのプレハブみたいなところがブースになってるんですね」
チェスは小綺麗な内装で広めなプレハブの中に入ると、思わずあたりを見渡してそう呟いた。
「アタシらはこのオラクルハイトにある魔法学校に通っててさ、この魔術展覧会が終わって、作品を展示したらもう卒業なんだよね」
「その最後の作品で、伝説を残そうって思って、イルミナちゃんと、そして他の魔法使いの生徒と一緒に作品をつくり上げたんだよね!」
「ああそうさ。そしてこれが!アタシらの最高傑作!とくとご覧あれ!」
イルミナはプレハブの奥へと一同を誘導し、部屋の奥に布をかけられた物体を指差す。そして、その布を取った。
「わぁ…すごい…!」
そこには、高さ170cmくらいの、一般的に思い浮かべるような帽子を被った魔法使いの姿をした人形があった。
「これがイルミナさんとユーディットさんの最高傑作か!凄いな…まるで人間と変わらないじゃないか…」
「わたしも人形は作るけど、土で出来たゴーレムばかりで、ここまで精巧な人間に近い人形は造れないよ…やっぱりイルミナさんとユーディットさんは凄いな…」
「へへーん!スゲーだろ?これこそがアタシらの最高傑作だ!」
「アタシはさ、夢見てんだよ。支援者(パトローナス)がもう一度日の目を見る時をさ」
「パトローナス?」
「パトローナスっていうのは、魔法使いの職業の内の一つで、支援者という意味です。その名の通り、パトローナスだけでは直接的な魔法、炎や氷をはじめとする魔法、それにわたし達が使っているような物を作り出すクラフト系の魔法は使えませんが、他の魔法使いが使う魔法を強化する魔法を使う事ができる職業なんです」
「つまりは魔法を強化する魔法を使う魔法使いって事かな?」
「そういう事さ。今じゃ裏方に回って出てくる事が少なくなってきた。それがアタシは嘆かわしい。どんな魔術も、パトローナスなしでは成り立たないっていうのに!」
「今の魔術協会も、魔法軍事機関も馬鹿ばっかりだ!保身馬鹿、世襲馬鹿、ただの馬鹿。そういう馬鹿どもをわからせる為に、アタシは魔術を磨く!そしてーーー」
「パトローナスの立場を、もう一度確固たるものにする!それがアタシの夢だ」
一同はイルミナの熱い演説に痺れるものを感じながら聞いていた。その言葉の後に、チェスがイルミナに質問する。
「ねえ、イルミナさん。どうしてそこまでパトローナスの復権に拘るの?」
「そうだよな。まずそこから話そうか。アンタらはさ、シャルロット・クローリーって知ってるよな?」
「シャルロット・クローリー?誰かの名前ですか?」
「ちょ、アンタはシャルロットを知らないのか?歴史の教科書にも載ってるような有名人だぜ?」
「えっと…ボクからも話す事があります。ボク、実はこの世界の出身ではなく、別の世界から来たんです。だから、この世界の事とかは何も知らなくて」
「ん?じゃあアレか?アンタはアキラ王みたいな立場って事か?」
「アキラ王?」
「このイレインにオラクルハイトを設立した偉大なる王だよ!何でも異世界の日本から来て、シャルロット達と一緒に魔王を倒してこの世界を救ったっていう。まあ、アキラ王も亡くなってもう1000年も経つから随分昔の話だけどな」
「えっ、じゃあボク以外にもこの世界に転生していた人がいたという事ですか!?」
「ああ。頻度は多くないし、何百年から何千年かに一回くらいだけど、この世界が危機に陥ると女神が別の世界から魂を転生させて救世主にするっていう言い伝えがあんだよ!チェスもひょっとしてそれか?」
「ボクが…救世主…?いやでも、ボクにそんな力は…」
「いいや!試してみようぜ!チェス、これ知ってるか?」
「何これ…?」
ボクはイルミナからある道具を渡された。その道具の形状は直方体で、人間の姿のボクの掌ほどの大きさだった。
「これは…箱ですか?」
「ただの箱じゃないぜ!それはな、魔法端末(マジックデバイス)って言ってな、通信、解析、検索の魔術が組み込まれた代物だ。それでアンタの持ってる魔法とかスキルも解析できるんだぜ!」
「通信、解析、検索の魔術…?」
「ああ。その端末は2台以上あればどれだけ離れていてもその端末を通して音声で通話が出来るし、それに検索機能で全世界の魔術師のデータを検索して、そいつがどんな魔法を使えるのかもわかるんだ!記録の機能を使えば、音声とかも録音できるぜ!」
「(要するにこれってボクのいた世界で言うスマホみたいなものか!似たようなものがこの世界にもあったなんて!しかも魔法のスマートフォン!)」
「でもイルミナさん、これってどうやって起動するの?電源ボタンとかは見たところ無いし…」
「ああ、心配はいらねーよ。それは電気の力で動くんじゃなくて、持ち主の魔力で動くんだ!試しにお前の魔力を流し込んでみろ」
「魔力を流し込むって、どうやるかわかりませんよ…」
「(心配するな)」
「ブライゼ!」
「(この世界は魔法が存在しているが、誰しもが魔法を使えるわけではない。しかし、誰しも微弱な魔力は持っている。まずは端末を手に持て)」
チェスは端末をテーブルから拾い上げ、手に持った。
「うん。持ったよ」
「(そして、その端末の下の方にへこんだ窪みがあるだろう。それが端末の起動ボタンだ。そこを触れ。そうすればその者の魔力が自動的に端末に注がれ、誰でも端末を起動できる)」
「まんまスマホじゃないか…!とりあえず起動するね」
チェスは端末の下の方にある窪みに触れた。フォンッという何とも言えない音と共に黒一色で塗りつぶされた画面が、森のような景色の画面に切り替わる。
「画面が変わった!ここもスマホと同じだ…」
「おっ、起動できたか?」
「はい。とは言っても、この後どうするのか…」
「ああ、ここの解析っていうアプリがあるだろ。それを触ってみろ」
「こうですか?」
チェスは解析のアプリアイコンをタップし、アプリを起動した。
「こちら、解析機能でございます」
「わっ、音声も出た」
「そうビビんなよ。これから行う魔力解析の結果もこの画面に表示される。魔法とかの才能っていうのはな、神から贈られた才能とか恩恵みたいなもんで、基本的には先天性の生まれつきのもんだな。後天的に才能とか魔法を習得する例もあるけど、それは神とか悪魔とか精霊とかと直に接触して加護を与えられた場合が多いな。まあ、アタシは神様とかとは会ったことは無いけどな」
イルミナの話は要するに、神様とか悪魔とかの存在がこの世界では常識レベルということだった。ボクも女神様から力を貰ったから、これが後天的に力を得たという事なんだろう。
「あとね、チェスさん。この解析はあくまで才能の有無を解析するだけであって、現時点での力量とか魔力がどれくらい多いかとか、才能の限界値とかはわからないんだ。だから修行とか努力が全く意味ないっていう訳じゃないから安心してね」
「うん、わかったよ。ありがとうね、イルミナさんもユーディットさんも」
「ささ、その状態でもう一回画面に触れてくれ。それで10秒くらいが経過したら解析完了するからさ」
「うん」
ボクは優しく解析画面に触れた。そして、10秒が経過するのを待った。
「解析完了です」
そこに表示された内容は、目を疑うものだった。
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