転生したら史上最強の猫ちゃんでした~唸れ肉球伝説~

岸谷 畔

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オラクルハイト襲撃編

第24話

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「せいッ!!やッ!!」

「渦巻く黄(ボルテックスイエロー)!!」

バルトロは体術で、ベルガは魔法の絵筆から発せられる雷で残留思念へと攻撃して動きを止め、避難するオラクルハイトの住民を守る。

「キリがねぇなこいつら!!殴っても蹴っても手応えがねえし、わらわら湧いてきやがる!!」

「この雷を喰らわせても駄目なら…これはどうかな!支配の黒(ドミネーションブラック)」

ベルガは魔法の絵筆の先から黒いインクを分泌させ、残留思念の群れに向かってばら撒く。黒いインクが付着した残留思念の動きは一時的に停止した。

「やった!これなら効くみたい!!」

「ベルガ、何したんだソレ?」

「あ、僕の筆は分泌したインクによって使える技が変わるんだ。今の技の支配の黒(ドミネーションブラック)は黒いインクが一滴でも付着した相手の動きを封じる技だよ!」

「おお!すげーじゃん!まだわらわら湧いてくるみたいだからあいつらの動きを封じちゃえばいいんだな!」

「うん!幸いな事にあいつらは動きも遅いからインクを当てるのは容易いよ。さ、残りも封じちゃおう!これ持ってよバルトロ!黒いインクの効力を持ったスタンプだよ!」

ベルガはそう言うと、バルトロに黒いインクの入った小さなスタンプのようなものを渡した。

「このスタンプをあいつらに押し付ければ良いんだな!任せろ!」

「うん!住民の避難はマルタン達に任せよう!僕らは出来るだけ思念体の動きを止める事に専念して!」

ベルガとバルトロは思念体の群れの元へと向かった。

♢♢♢

「紫の冥界(ヴァイオレット・アビス)」

「土人形の密集陣形(エメス・ザ・ファランクス)!!」

魔術協会の建物の中では、魔王アムダールとエマが応戦していた。アムダールの攻撃を強固な土人形を生成して防ぐエマ。しかし、アムダールとエマの力量差は圧倒的であり、エマが押されているのは明瞭であった。
 
「ほう、よく俺の魔法を防いだじゃないか。しかしその怪我人を庇っていつまで持つかな?」

「ーっ!!」

エマは脂汗と血を流しながら、アムダールの攻撃に耐え続ける。土人形を召喚しては破壊され。それは誰が見てもジリ貧だった。

♢♢♢

「神速(ラピッド)!!」

高速で動くパトリックに、チェス達は苦戦していた。一撃一撃のダメージはブライゼやノストラにとっては小さいが、パトリックは剣による攻撃を身体の一点に集中させている為、ブライゼの前足の部分からは血が流れていた。

「極大電撃(ブリッツゲイト)!!」

ブライゼが電撃系の最大呪文をパトリックに向けて放つも、パトリックはそれすらも躱し続ける。


「くっ、当たらないか!」

「ならばこれはどうです?遅延(ディレイ)」

ノストラが周囲の空間に流れる時間を遅くする魔法を使う。直後、パトリックの動きは遅くなり、ブライゼ達も捉えられるようになる。

「これは…時間操作の魔法か!!」

「今だ!!全員で攻撃を撃ち込め!極大氷撃(グラソンゲイト)!!」

「流星(ミーティア)!!」

「電撃(ブリッツ)!!」

「ぐああッ!!」

時間操作の魔法で動きが鈍ったパトリックに、3人の魔法が容赦なく浴びせられる。それを至近距離で受けたパトリックは大ダメージを受けてよろけ、人間の姿へと戻った。

しかし、それでもパトリックは倒れない。片手剣を地に刺し、立ちあがろうとする。そして、魔障壁もパトリックの体力の消耗と共に解除されたようだった。

「はぁ…っ」

「もう勝負は着いただろう。さあ、幕を引こうか」

「いや、待ってくださいブライゼ」

ブライゼがパトリックにトドメを刺そうとした直後、ノストラが止める。

「この者は無理矢理何者かに従わされていただけです。これを見てください」

ノストラが手を振ると、パトリックの胸部に紫色のぼんやりとした光が浮き上がる。それは、パトリックの心臓辺りから伸びていた。

「これはーー悪意の芽か!!」

「ええ、そうです。禁術の一種で、自分の下した命令に背けば心臓を喰らい尽くす外法をかけられている!」

「って事は…この人狼は誰かに操られていたって事?」

「そうですね。それか、自分の意識はあるが命令には背けないように脅迫されていたのでしょう。そして、今街に放たれたあの残留思念の大群!この芸当が出来るのは…」

「魔王アムダールか…!」

「魔王アムダール?それって千年前にシャルロット達に斃されたあの魔王だよね?」

「ああ、そうだ。何の因果かはわからないが、またこうして復活している…!奴は今魔術協会の内部に侵攻している!不味い、早く止めなければ!」

「わたしも一緒に行きましょう!あなただけでは敵うかどうか…」

「いや、ノストラはこの人狼の治療に専念してくれ。余裕ができたらイルミナ達の元へ駆けつけるんだ」

「了解!」

「ブライゼ、ボクは?」

「チェスは私と共に来てくれ!シエルの力で魔王アムダールに応戦するのだ!」

「うんっ!わかった!」

ブライゼ達は魔術協会の中へと向かい、ノストラはパトリックに治療を施す為にその場に残った。

「母なる大地!!」

シェーンの怒涛の氷魔法は、イルミナ、ユーディット、アミーシャを追い詰めていく。

「こんのッ…!!おらっ!!」
 
イルミナが巨大なノギスで飛んできた氷塊の一つを砕く。

「吹き荒ぶ旋風!!」

エドガーの衝撃魔法もそこに加わり、それをユーディットが硝子の魔法で防ぐ。

「なんなのこの魔力量…!底がないじゃない!」

「ああそうだ。我らは魔王様の力を受けているからな。そして背後にも気をつけた方が良いぞ?」

「えーーー」

ユーディットの影から突如ナイフを持った手が現れる。その手はユーディット、イルミナ、アミーシャのふくらはぎを軽く切り付けた。

「痛え!!何だっ!?」

イルミナ達は痛みを受けつつも、また目の前の敵に向かって魔法を発動する。

「金剛石の棺(ダイヤモンド・コフィン)!!」

しかし、魔法は発動しなかった。

「なっ!?魔法が使えねえだと!?」

そして、街頭から伸びる影の中から、もう一人の人狼が現れる。

「よーし成功。魔王から受け取ったこの封印の術式が組み込まれたナイフ、中々使えるな」

「ふむ、ジーリオよ良くやった。これで奴らは魔法を封じられた訳だ」

黒曜石のナイフを手に持ったジーリオは、ニヤリと笑った。

「てめえらは何がしたい!?罪のない人達を傷つけて!!」

「んなもん決まってんじゃん。人間への復讐だよ」

「さっき説明しましたよね?エデン魔術協会の人達に私達の一族は殺されたって。だからその復讐に来たのですよ。さて、凍りついてもらいましょうか。氷河期(アイスエイジ)」

シェーンはそう言うと、魔法を封じられたイルミナ達の頭上に魔法陣を出現させ、一帯を凍り付かせようとする。

「亜空間の墓(ディメンション・グレイブヤード)!!」

シェーンのイルミナ達を狙った氷が放たれるより前に、ノストラの魔法がイルミナ達を包み込んだ。それは、シエルを閉じ込めた時のあの魔法だった。マス目の描かれた立方体のような結界が、シェーンの氷を完全に防いだ。

「ふう、間に合いました」

「ノストラ!!」

ノストラが駆けつけた事によって、イルミナ達は安堵の表情を浮かべる。

「さて、人狼の皆さん。あなた達は無理矢理魔王アムダールに従わされているのでしょう?その胸に植え付けられた悪意の芽によってね」

「!!」

人狼の3人はノストラのその台詞に怯える。

「図星ですか。でも大丈夫です。わたしとブライゼならその悪意の芽を除去する方法は知っています。もうこのような事はおやめなさい。そうすればーーー」

「何もわかっちゃいない癖に」

「?」

「故郷を潰されて!!!理解者になり得るかもしれなかった人も殺されて!!魔王に脅かされたわたし達の気持ちなんかなにもわかっちゃいない癖にーー!!!」

シェーン達はそう言うと、胸から迸るドス黒いオーラを身に纏い、体を覆う。すると、3人は黒い体毛の人狼へと変貌した。

「オマエラモ….コロシテヤル….!!」

そしてシェーン、ジーリオ、エドガーの3人はノストラ達に襲いかかった。

♢♢♢

「ここが…魔術協会…?」

「ああ。だが今は魔王の侵攻で崩れているようだ。すぐに魔王を探して奴が完全に復活する前に叩く!!」

ブライゼは背にチェスを乗せて魔術協会の内部を飛行していた。そして、ブライゼとチェスは魔術協会の大聖堂らしき場所へと辿り着く。そこには魔王が立っており、その足元にはーーー

「え….あの子って….」

エマの、血塗られた死体があった。


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