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オラクルハイト襲撃編

第26話

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「さあさあ、私に着いてきてください」

「は、はぁ….」

ピョートルはエマを連れて洞窟を抜け出した。洞窟を抜けた先には、輝く黄色い花が咲き乱れる街が広がっていた。

「わぁ…!ここが死後の世界…」

「そうです。エマさんは死後の世界というとどのようなイメージがありましたか?」

ピョートルはエマの手を引き、街の中を案内しながらエマに問う。

「えっと…暗くてジメジメしたような場所かな….他には、生前の行いが悪いと罰を受けるような場所とか」

「そう思う方も多いでしょう。実際、エマさんのイメージ通りの世界も存在します。ですが、死後の世界とはこのように穏やかな世界も存在するのですよ」

「じゃあここはなんなんですか?」

「ここは生前に悪行を働かなかった者達の魂が集まる世界です。ご覧の通り、この世界に住む住人は生前と変わらない楽しい生活を送っていますよ」

エマは周囲を見渡すと、この世界に存在する死後の世界の住人達は皆楽しく、仲睦まじく暮らしている様子が目に入った。幽霊達の姿も十人十色で、ピョートルのように絵本の中に出てくるようなおばけのような風貌の者もいれば、骸骨の姿の者、エマと同じように生前と全く姿の変わらない者もいた。

「あの…ピョートルさん」

「どうしました?」

「なぜこの世界の住人はみんな姿が違うのでしょうか?わたしみたいに生前の人間の姿と変わらない人もいれば、ピョートルさんみたいな姿の人もいますよね?」

「ああ、それはですね。死後の世界では姿形を自由に変更できるからですよ!現世で例えたら…そうですね、魔物とか魔族が人化の術のような魔法で人間に姿を変えるのと同じように、この冥界でも外見を変更できるのです。例えば….こんな風に!」

ピョートルはエマに説明をすると、自身の外見を変更した。エマの目の前には人間の姿のピョートルが現れた。

「すごい!そんな事ができるんですね!でも、なんでピョートルさんはおばけの姿になっていたんですか?」

「それはですね、あの姿なら脚が無く、浮遊しているので動きやすいからですね。後は外見がキュートだからというのもありますが」

「そうなんですね!確かにかわいいかもしれません」

「では、元の姿に戻ります」

ピョートルは再び亡霊の姿へと戻る。

「あれ、でもそれだと骸骨だけの人はその姿が気に入ってるという事になりますよね?」

「まあそうですね。骸骨の姿のメリットは、物理的なダメージに強いという点ですね。骨が破壊されても再生しますし。逆に人間の姿だと傷の治りも遅いですし、物理的なダメージも生前と同じように受けますし、脚があるから石に躓いて転ぶようなデメリットがあるんですよ。まあそれも人それぞれですが」

ピョートルは上機嫌でエマに解説しながらエマの手を引く。そしてしばらく歩いた後、エマ達は豪華な装飾のレストランに到着した。

「ピョートルさん、ここは?」

「紹介します。ここが私のレストランです。そして私の家でもあります。店名はフォンテーヌです」

「そうなんですね!」

「はい。ああ、そういえばエマさんは行くあてなどはありますか?」

「いや….無いです….」

エマは少し落胆しながらピョートルにそう告げる。

「そうですか!ではまず、腹ごしらえといきましょうか!まずは私がエマさんに料理を振る舞いましょう!見たところ、お腹が空いているようですし」

ピョートルはそうエマに指摘すると、エマの腹の音が鳴った。

「あ、そういえば最近働き詰めでしばらく何も食べてなかったなぁ….食べたとしてもゼリーみたいな軽食くらいしか」

「ではちょうど良いですね。この私めが最高の料理を提供しましょう…」

「あの、でもわたしこの世界のお金とか持ってないです….」

「お代は必要ありません。その代わり、私と一緒に働いて貰いますがよろしいでしょうか?」

「働くって、このレストランでですか?」

「ええ。冥界での居場所が出来るまで、私のレストラン、そして家に住み込みで働いてみるのも良いかと」

「そうですね….行くあてもないし、しばらくはピョートルさんのところでお世話になろうかな」

「ふふっ、ではレストランの中に入ってください。ああ、私達は従業員なのでこちらの裏口から入ります」

ピョートルとエマはピョートルの経営するレストラン、フォンテーヌの中へと入っていった。

♢♢♢

「さあさあ、どうぞ召し上がれ」

「わあ…!これがピョートルさんの料理…!」

ピョートルはエマにフルコースの料理を振舞った。トマトソースと絡み合った海老のパスタや、冥界の野菜をふんだんに使ったラタトゥイユ、そしてデザートに甘いジェラート。

その料理を、上品にフォークとナイフで咀嚼するエマ。彼女の胃袋は幸せに満たされた。

「美味しかったです…ご馳走様でした…」

「ふふふ、メルシー。お腹はいっぱいになりましたか?」

「はい…本当に美味しかったなぁ…冥界の料理ってどんなものなんだろうと思いましたが、案外現世と変わらないものですね」

「ええ。この世界は現世に近い世界なので。危険なエリアも無いし、この世界に暮らす者達は死の女王メルセデス様の手により幸せに暮らしています。ただ、幽霊も生きている人間同様お腹は減るものです」

「そうなんですね…あの、仕事の件についてなのですが」

「はい!これからバリバリ働きましょう!」

「まずはウエイターから始めても良いですか?いきなり厨房で料理は慣れてなくて…」

「良いですよ!やりましょう!」

「そして、わたしの魔法も使っていいですか?」

「魔法ですか?」

「はい。少し見ていてください」

エマはそう言うと、携帯しているボトルから魔力を帯びた土を取り出し、そこに魔法をかけて土で出来た人形を作り出す。

「おお…!これは…!」

「やった!冥界でも土があれば使えるみたいです。わたしはこのように土から人形を作り出す魔法を持っています。この人形は命令すればある程度の動作はできるので、この人形に料理を運ばせる事ができます。お役に立てれば良いのですが」

「これはこれは、思いもよらない戦力ですね。大歓迎ですよ!では、開店前の準備といきましょうか。エマさん以外の従業員もそろそろこのレストランに来るはずですし」

「はい!よろしくお願い致します」

こうして、エマはピョートルの店で働く事が決定した。

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