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オラクルハイト襲撃編

第27話

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「ピョートルさん、10番テーブルのお客様がビーフストロガノフと冥界ザクロのケーキを注文しました!」

「かしこまりました。すぐにお作り致します」

エマがピョートルの店に雇われてからはや3日。エマはレストランで自分の魔法を駆使しながらバリバリ働いていた。

「人手が不足してたからエマちゃんの魔法は本当に助かるよ!」

「ありがとうございます!」

ピョートルの店に勤務する他の亡霊からも、エマの魔法は好評だった。そして、今日もレストランでの1日が終わった。

「ふう、お疲れ様ですエマさん」

「ピョートルさんもお疲れ様です」

レストランの閉店後、エマはピョートルと共にバックヤードで紅茶を飲みながら一息ついていた。しかし、そんなエマも、現世の事を心配していた。

「あの…ピョートルさん」

「なんでしょう?」

「わたし….やっぱり現世の事が心配です」

「現世ですか?」

「はい。実はわたし、殺されたんです。魔王アムダールに」

「え…」

ピョートルは魔王の名を聞き、動きが止まる。

「まさか…アムダールは生きてたのですか…?」

「わたしは生前、イレイン王国の魔法都市、オラクルハイトのエデン魔術協会という組織に所属していました。そこで魔王アムダールが人狼族の肉体や魔石を元に復活したとの情報を聞いたのです」

「なんと…」

「そして、わたしはその魔王アムダールに殺されました。そしてこの冥界に来たのです」

ピョートルとエマの間に緊張が走る。そしてしばしの間静寂が訪れた。しかし、その静寂は直後に終わりを告げることになる。

チリンというレストランのドアを開けた際に鳴る鈴の音が響く。その音を聞き、ピョートルとエマはバックヤードから出て食堂に向かう。

「失礼するわ。この時間帯はもう営業時間外かしら?」

レストランの入り口のドアを開けて現れたのは、白を基調とした服に身を包んだ魔法使いだと一眼で理解できる人物だった。

「ああ、申し訳ありません。今は夜間の営業が始まる前の時間帯ですのでまだ開店時間では….って、あなた様はまさか!」

ピョートルのその言葉に、エマもその魔法使いの姿を見てハッとする。

「まさか…伝説の魔法使い、シャルロット・クローリー…?」

「あら、わたくしを知っているの?」

シャルロットはそう言うと、ピョートルとエマににっこりと微笑む。

「その白を基調とした服!忘れもしません、あなた様は魔王アムダールを倒したシャルロットその人ですよね!」

「そうよ。わたくしもこの冥界で過ごしているの。さて、このレストランで一番高い料理をいただこうかしら?」

「営業時間外ではありますが、料理の提供をさせていただきます!エマさん、ご準備を!」

「はいっ!」

ピョートルとエマは急いで厨房へと向かった。

「ふふ、これがフォンテーヌの料理ですか。中々美味しいわね」

「ありがたき幸せ…!」

ピョートルはそう言うと、シャルロットに敬礼をした。

「エマさん、これはチャンスかもしれません」

「えっ?チャンスって?」

「もしかしたらあなた様は現世に帰る事が出来るかもしれないという事ですよ」

「それって…現世に生き返れるという事ですか?」

ピョートルとエマは食事をするシャルロットの側でそう会話をする。その会話が終わると同時に、シャルロットの食事も終わったようだ。

「ごちそうさま。美味しかったわ」

「シャルロット様、少しだけ私共のお話しを聞いて頂いてもよろしいでしょうか?」

シャルロットがナプキンで口元を拭き終わってから頃合いを見てピョートルはシャルロットに声を掛ける。

「何かしら?」

「こちらのエマさんという少女は現世からこの冥界にやってきてまだ日が浅いのですが、死因は魔王アムダールに致命傷を負わされた事なのです」

「….なんですって?」

シャルロットは魔王アムダールという名詞を聞き、表情がこわばる。

「わたしは生前にイレイン王国のオラクルハイトという魔法都市に暮らしていました。そして、エデン魔術協会という組織に所属し、そこで働いていました。しかし、ある日突然魔王アムダールがオラクルハイトを襲撃し、わたしもアムダールに殺されたのです」

「やっぱり…あいつ生きてたのね…」

シャルロットはエマの話を聞き戦慄する。それと同時に座席を立ち上がり、エマの手を取った。

「エマはこれからどうしたいの?」

「わたしは….」

エマはシャルロットに手を握られ、問いかけられる。そして、しばしの沈黙の後、答えを出した。

「この冥界を抜けて、オラクルハイトに戻りたいです。アムダールを倒さなきゃ、わたしの大切な人達も殺されてしまうだろうから」

エマはシャルロットを見つめてそう言った。

「そっか。それならまずはこの冥界を治める死の女王のメルセデスに話をつけなきゃね!行こっか!ピョートルはどうする?」

「私めも同行致しましょう。冥界の抜け道を存じております故」

「決まり!2人とも、私について来て!」

シャルロットはエマとピョートルの手を取り、レストランから出てメルセデスの住む場所へと向かった。
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