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第8話 マヘンドラの本気
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ついにこの時が来てしまった。あの熊の首を一瞬で切り落としたマヘンドラとの闘いの儀。既に集落の方で準備は万端のようで、闘いのためのある程度の広さのサークルが設けられていた。
民衆は期待のまなざしを僕に向けてくる。正直やめてくれと思った。僕は期待されるのは嫌いではないが、過度な期待を抱かれ、最終的に失望されるのは凄く嫌いだ。なぜならば、それは他人の上辺だけしか見ておらず、本質を見ていないからだ。
本当の人格や、その人物の本質を見て嫌いになるのであればまだいいのだが、勝手に期待され、勝手に失望されるのが一番困るし一番不快だ。僕だってどちらかと言えば他人の期待には応えたい。が、期待をする人ほど、期待に応えるたびに要求がどんどん大きくなっていく。そうして期待に応えられなくなった瞬間、そういった人間は手のひらをクルリと反して去っていくというわけである。
もし、もし。この集落の人間達がそういった人間だったらどうしよう。僕がマヘンドラとの勝負に負けたら今まで僕が出会った、勝手に他人に期待して勝手に失望して去っていく人間達と同じことをするのだろうか。考えれば考えるほど、足にも手にも力が入らなくなっていく。が、そんな僕を、マヘンドラはポン、と文字通り物理的に背中を押して励ましてくれた。
「さあ、気楽にやりましょうぞ!」
僕はもうやるしかないと思い、その用意されたサークルの中にマヘンドラと入る。そして、僕とマヘンドラは与えられた剣を握り、指定された位置についた。
「それでは、これより、シン様とマヘンドラの闘いの儀を始めます!それでは両者、位置についてーーー闘いをはじめっ!!」
と、審判が勢いよく声を発すると同時に、マヘンドラは容赦なく僕の懐めがけて剣を振りかざした。僕は脊髄反射的に後ろに退いて攻撃を避ける。
「中々・・・!」
ちょっと待ってくれ。やっぱり僕はマヘンドラに勝てない。その瞬間、そう思った。このままじゃ本当にやられる!そう思った僕は、全身に程よく力を込め、獣化し、獅子獣人の姿へと変身した。
「・・・!獣化しましたか・・・!」
「うん!・・・というか獣人の姿にならないとマヘンドラに勝てないよ!」
僕は身体能力の上がった獣人の姿で、マヘンドラに剣で斬りかかる。リヤは空間属性の魔法をこのサークルの中に付与しているとは言っていたものの、やはり他人に対して傷をつけるという行為には慣れていない。僕は峰打ちをマヘンドラへと放った。
「ぐっ」
峰打ちとはいえ、しっかりと力を込めたため、マヘンドラには重い一撃が入った。マヘンドラは僕の一撃に、思わず後ろに後ずさる。
「シン様・・・今度はこちらから行きますぞ・・・!」
マヘンドラは特殊な体勢で剣を構え、僕にその切っ先を向けた。そして、魔法を発動する。それは、アーシャが使った収穫の際に必要な魔法とは全く毛色が違う、"戦いのための魔法ーーーー"
「雷魔法ーーーー"帯電!"」
マヘンドラがそう呪文を詠唱すると、彼が持つ剣は電撃を帯びた。そして、その刀で僕に斬りかかってきた。
僕はすかさず避けたが、マヘンドラの電撃を帯びた刀から、雷が迸る。その迸った雷の一つが、僕の身体へと当たった。
「ッ!?」
僕はあまりの痛みと衝撃に苦痛で顔を歪めた。それを見てマヘンドラはニヤリと笑っている。そして彼は意気揚々と雷属性の魔法についての解説を始めた。
「そう!これこそが雷属性の真骨頂!何かに魔法による電撃のオーラを付与し、物体の強度を高めつつ、敵に攻撃を避けられても、飛び散る電撃や雷で感電させる―――近接戦闘では無類の強さを誇るのです!」
そしてマヘンドラは更に構えを作った。そうそれは、次に発動する魔法の合図でもある。
「さあ、シン様!これから私が使うのは、我が一族に伝わる奥義です!この奥義をあなた様に使うということは、あなた様を私は認めたということです。・・・・避けないでくださいね?」
マヘンドラは意味深な発言をすると、両手を天に挙げた。すると、先ほどまで晴れ渡っていた夜空は、一瞬にして雲に覆われる。
「え・・・ちょっ」
「雷魔法ーーー"轟雷!"」
そして僕の元に、極太の電撃の柱が墜ちてきた。
民衆は期待のまなざしを僕に向けてくる。正直やめてくれと思った。僕は期待されるのは嫌いではないが、過度な期待を抱かれ、最終的に失望されるのは凄く嫌いだ。なぜならば、それは他人の上辺だけしか見ておらず、本質を見ていないからだ。
本当の人格や、その人物の本質を見て嫌いになるのであればまだいいのだが、勝手に期待され、勝手に失望されるのが一番困るし一番不快だ。僕だってどちらかと言えば他人の期待には応えたい。が、期待をする人ほど、期待に応えるたびに要求がどんどん大きくなっていく。そうして期待に応えられなくなった瞬間、そういった人間は手のひらをクルリと反して去っていくというわけである。
もし、もし。この集落の人間達がそういった人間だったらどうしよう。僕がマヘンドラとの勝負に負けたら今まで僕が出会った、勝手に他人に期待して勝手に失望して去っていく人間達と同じことをするのだろうか。考えれば考えるほど、足にも手にも力が入らなくなっていく。が、そんな僕を、マヘンドラはポン、と文字通り物理的に背中を押して励ましてくれた。
「さあ、気楽にやりましょうぞ!」
僕はもうやるしかないと思い、その用意されたサークルの中にマヘンドラと入る。そして、僕とマヘンドラは与えられた剣を握り、指定された位置についた。
「それでは、これより、シン様とマヘンドラの闘いの儀を始めます!それでは両者、位置についてーーー闘いをはじめっ!!」
と、審判が勢いよく声を発すると同時に、マヘンドラは容赦なく僕の懐めがけて剣を振りかざした。僕は脊髄反射的に後ろに退いて攻撃を避ける。
「中々・・・!」
ちょっと待ってくれ。やっぱり僕はマヘンドラに勝てない。その瞬間、そう思った。このままじゃ本当にやられる!そう思った僕は、全身に程よく力を込め、獣化し、獅子獣人の姿へと変身した。
「・・・!獣化しましたか・・・!」
「うん!・・・というか獣人の姿にならないとマヘンドラに勝てないよ!」
僕は身体能力の上がった獣人の姿で、マヘンドラに剣で斬りかかる。リヤは空間属性の魔法をこのサークルの中に付与しているとは言っていたものの、やはり他人に対して傷をつけるという行為には慣れていない。僕は峰打ちをマヘンドラへと放った。
「ぐっ」
峰打ちとはいえ、しっかりと力を込めたため、マヘンドラには重い一撃が入った。マヘンドラは僕の一撃に、思わず後ろに後ずさる。
「シン様・・・今度はこちらから行きますぞ・・・!」
マヘンドラは特殊な体勢で剣を構え、僕にその切っ先を向けた。そして、魔法を発動する。それは、アーシャが使った収穫の際に必要な魔法とは全く毛色が違う、"戦いのための魔法ーーーー"
「雷魔法ーーーー"帯電!"」
マヘンドラがそう呪文を詠唱すると、彼が持つ剣は電撃を帯びた。そして、その刀で僕に斬りかかってきた。
僕はすかさず避けたが、マヘンドラの電撃を帯びた刀から、雷が迸る。その迸った雷の一つが、僕の身体へと当たった。
「ッ!?」
僕はあまりの痛みと衝撃に苦痛で顔を歪めた。それを見てマヘンドラはニヤリと笑っている。そして彼は意気揚々と雷属性の魔法についての解説を始めた。
「そう!これこそが雷属性の真骨頂!何かに魔法による電撃のオーラを付与し、物体の強度を高めつつ、敵に攻撃を避けられても、飛び散る電撃や雷で感電させる―――近接戦闘では無類の強さを誇るのです!」
そしてマヘンドラは更に構えを作った。そうそれは、次に発動する魔法の合図でもある。
「さあ、シン様!これから私が使うのは、我が一族に伝わる奥義です!この奥義をあなた様に使うということは、あなた様を私は認めたということです。・・・・避けないでくださいね?」
マヘンドラは意味深な発言をすると、両手を天に挙げた。すると、先ほどまで晴れ渡っていた夜空は、一瞬にして雲に覆われる。
「え・・・ちょっ」
「雷魔法ーーー"轟雷!"」
そして僕の元に、極太の電撃の柱が墜ちてきた。
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