ケモノだから王族を追放されたけど存外元気にやってます~国家もなにもかも全ては模倣から始まる~

岸谷 畔

文字の大きさ
7 / 13

第7話 家族

しおりを挟む
キャンプファイヤーを中心として、僕らは丸太で出来た椅子に腰かけ、アーシャをはじめとする食料係が作った米料理を食べていた。チャンドラ大陸の米料理は、どれもターメリックなどのスパイスや、うさぎや鶏の肉を混ぜ込んだエスニックな雰囲気の料理が特徴だ。アーシャ達が作った料理はご飯を炊く際の水加減や火加減なども丁度良く、うさぎ肉や鶏肉にもしっかりと火が通っていて美味しい。



「それでね~、シン様のおかげでもう1ヶ月分の作物を収穫できたんだよお母さん!」



「へえ、シン様ったらリヤ様が言っていた通り、やっぱりすごいお方なのね」



僕はリヤ、マヘンドラ、アーシャ、そしてアーシャのお母さんと計5人で、隣り合って席に座り、米料理を食べていた。米料理はとても美味しかったのだが、これからあの熊の首を切り落としたマヘンドラと闘うという予定を考えると、折角の米料理も喉を通らなかった。



「シン様、あまり手が進んでいませんが・・・もしかして私が作った料理、口に合わなかったのですか・・・?」



「シン様のお口に合ってないなんて、大変だわ・・・作り直したほうがいいのかしら・・・」





「あ、違うよ!いや・・・僕ってこれからこの宴の闘いでさ、マヘンドラと闘うじゃん?・・・マヘンドラってさ、熊の首を一瞬で切り落とすほどの実力者じゃん?単刀直入に言うよ?本当に怖い」



「だから大丈夫だと言っているでしょう!リヤ様の予言で、私はシン様には勝てないと出ています!リヤ様の予言は絶対なのですから!」



「う~ん、そうだといいんだけど・・・僕、王族を追放されたからもう失うものは何もないけどさ、まだ命は惜しいよ。もっと生きていたかったな・・・」



「シン様。何も心配する必要はありませんよ。マヘンドラなんかシン様の足元にも及びませんから!」



リヤもそう言ってくれているが・・・やっぱり不安だな。そういえば、この集落に集まっている民達の家族構成とかってどうなっているんだろうとふと僕は気になった。気になって、リヤをはじめとする周囲のみんなへと尋ねてみた。すると、意外な答えが返ってきた。



マヘンドラの両親はもうこの世にはいないらしい。彼が小さい頃に亡くなったのだそうだ。アーシャはお母さんはいるが、お父さんはもう3年ほど前にこの世を去ったらしい。この集落に来る前の出来事だそうだ。そしてリヤは、父や母は健在だが、司祭の身でありながら、自分よりも下の身分の者に施しを与えるという彼女の考えが気に入らなかったらしく、僕と同じく追放された身であるらしい。



しかしリヤは諦めず、不可触民と呼ばれる身分の中の最下層に位置する、法に虐げられている者や、重税などに苦しむ者達を集め、ナアト王国を離れたらしい。そして森に逃げ延び、そこを集まった者達の力を借りて開拓した。それが、今僕がいるこの集落なのだそうだ。



「そっか。・・・じゃあ、リヤは居場所のなかった人達に対して、居場所を作ったんだね」



「・・・わたしは自分にできることをしたまでです。わたしはずっと、ナアト王国の法に対して、疑念を抱いていました。生まれた時から全てが決まっているだなんて、そんなの絶対におかしいです」



「リヤ様は司祭という最も高い地位についていながら、私達のような低い身分の者達に寄り添ってくれたのです。・・・感謝しかありません」



「そうです!リヤ様がいなかったら、私達はきっと、野垂れ死んでいました」



マヘンドラもアーシャも、アーシャの母親も、リヤに対して感謝の念と言葉を向けていた。



リヤはまだ僕と同じくらいの歳なのに、僕が来る前までこの集落の長をしていたというのだから驚きだ。しかも、この集落はできてもう5年。リヤは僕と同い歳だと言っていたから、15歳。そこから数えて5年前となると、10歳の頃からこの集落を治めていたということになる。自分よりも2倍以上歳の差が離れた相手すらも従えて。・・・僕なんかより、よっぽどこの子の方がカリスマ性も、統率力も、采配力もあるんじゃないのか。本当に僕なんかがこの集落の長として治めてもいいのか。なんだか僕には荷が重いような気がしてきた。



「さて、暗い話もここまで!この後は私と共に闘いの儀をしましょうぞ!シン様!」



僕は少しだけため息をつきながら、マヘンドラと共に広場のステージへとついていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら
ファンタジー
 勇者パーティーから「お前は役立たずだ」と追放され、冒険者ギルドからも追い出され、最後には国からすら追放されてしまった俺――カイル。  居場所を失った俺が選んだのは、「追放された者だけのギルド」を作ることだった。  仲間に加わったのは、料理しか取り柄のない少女、炎魔法が暴発する魔導士、臆病な戦士、そして落ちこぼれの薬師たち。  周囲から「無駄者」と呼ばれてきた者ばかり。だが、一人一人に光る才能があった。  追放者だけの寄せ集めが、いつの間にか巨大な力を生み出し――勇者や王国をも超える存在となっていく。  自由な農作業、にぎやかな炊き出し、仲間との笑い合い。  “無駄”と呼ばれた俺たちが築くのは、誰も追放されない新しい国と、本物のスローライフだった。  追放者たちが送る、逆転スローライフファンタジー、ここに開幕!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...