ケモノだから王族を追放されたけど存外元気にやってます~国家もなにもかも全ては模倣から始まる~

岸谷 畔

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第7話 家族

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キャンプファイヤーを中心として、僕らは丸太で出来た椅子に腰かけ、アーシャをはじめとする食料係が作った米料理を食べていた。チャンドラ大陸の米料理は、どれもターメリックなどのスパイスや、うさぎや鶏の肉を混ぜ込んだエスニックな雰囲気の料理が特徴だ。アーシャ達が作った料理はご飯を炊く際の水加減や火加減なども丁度良く、うさぎ肉や鶏肉にもしっかりと火が通っていて美味しい。



「それでね~、シン様のおかげでもう1ヶ月分の作物を収穫できたんだよお母さん!」



「へえ、シン様ったらリヤ様が言っていた通り、やっぱりすごいお方なのね」



僕はリヤ、マヘンドラ、アーシャ、そしてアーシャのお母さんと計5人で、隣り合って席に座り、米料理を食べていた。米料理はとても美味しかったのだが、これからあの熊の首を切り落としたマヘンドラと闘うという予定を考えると、折角の米料理も喉を通らなかった。



「シン様、あまり手が進んでいませんが・・・もしかして私が作った料理、口に合わなかったのですか・・・?」



「シン様のお口に合ってないなんて、大変だわ・・・作り直したほうがいいのかしら・・・」





「あ、違うよ!いや・・・僕ってこれからこの宴の闘いでさ、マヘンドラと闘うじゃん?・・・マヘンドラってさ、熊の首を一瞬で切り落とすほどの実力者じゃん?単刀直入に言うよ?本当に怖い」



「だから大丈夫だと言っているでしょう!リヤ様の予言で、私はシン様には勝てないと出ています!リヤ様の予言は絶対なのですから!」



「う~ん、そうだといいんだけど・・・僕、王族を追放されたからもう失うものは何もないけどさ、まだ命は惜しいよ。もっと生きていたかったな・・・」



「シン様。何も心配する必要はありませんよ。マヘンドラなんかシン様の足元にも及びませんから!」



リヤもそう言ってくれているが・・・やっぱり不安だな。そういえば、この集落に集まっている民達の家族構成とかってどうなっているんだろうとふと僕は気になった。気になって、リヤをはじめとする周囲のみんなへと尋ねてみた。すると、意外な答えが返ってきた。



マヘンドラの両親はもうこの世にはいないらしい。彼が小さい頃に亡くなったのだそうだ。アーシャはお母さんはいるが、お父さんはもう3年ほど前にこの世を去ったらしい。この集落に来る前の出来事だそうだ。そしてリヤは、父や母は健在だが、司祭の身でありながら、自分よりも下の身分の者に施しを与えるという彼女の考えが気に入らなかったらしく、僕と同じく追放された身であるらしい。



しかしリヤは諦めず、不可触民と呼ばれる身分の中の最下層に位置する、法に虐げられている者や、重税などに苦しむ者達を集め、ナアト王国を離れたらしい。そして森に逃げ延び、そこを集まった者達の力を借りて開拓した。それが、今僕がいるこの集落なのだそうだ。



「そっか。・・・じゃあ、リヤは居場所のなかった人達に対して、居場所を作ったんだね」



「・・・わたしは自分にできることをしたまでです。わたしはずっと、ナアト王国の法に対して、疑念を抱いていました。生まれた時から全てが決まっているだなんて、そんなの絶対におかしいです」



「リヤ様は司祭という最も高い地位についていながら、私達のような低い身分の者達に寄り添ってくれたのです。・・・感謝しかありません」



「そうです!リヤ様がいなかったら、私達はきっと、野垂れ死んでいました」



マヘンドラもアーシャも、アーシャの母親も、リヤに対して感謝の念と言葉を向けていた。



リヤはまだ僕と同じくらいの歳なのに、僕が来る前までこの集落の長をしていたというのだから驚きだ。しかも、この集落はできてもう5年。リヤは僕と同い歳だと言っていたから、15歳。そこから数えて5年前となると、10歳の頃からこの集落を治めていたということになる。自分よりも2倍以上歳の差が離れた相手すらも従えて。・・・僕なんかより、よっぽどこの子の方がカリスマ性も、統率力も、采配力もあるんじゃないのか。本当に僕なんかがこの集落の長として治めてもいいのか。なんだか僕には荷が重いような気がしてきた。



「さて、暗い話もここまで!この後は私と共に闘いの儀をしましょうぞ!シン様!」



僕は少しだけため息をつきながら、マヘンドラと共に広場のステージへとついていった。
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