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第一話
しおりを挟む時は昭和30年。第二次世界大戦が終結して間もない頃の日本。山梨県のとある公立中学校にて、卒業式が行われていた。
「じゃあ撮るよー!はい、チーズ!」
パシャリと周囲に鳴り響くカメラの音。桜の木の下で、卒業生達が記念写真を撮影していた。
「良かった!ちゃんと撮れてる!みんな、卒業おめでとう!!」
クラスの女性の担任、佐々木美子が微笑みながら卒業生達にそう呼びかける。
「武田くんも卒業おめでとう!!」
「ああ、佐々木先生。ありがとうございます」
「武田くんは確か黄泉川学院っていう東京にある高校に行くんだよね?凄いじゃない!あそこって確か優良企業とか一流の大学に生徒達を進出させてるんだよね!先生、嬉しいわ~!」
「いえ、オレはスポーツ推薦で入れただけですよ。剣道のね。これからもっと頑張らなければ」
「うふふ!でもね、無理は禁物よ。もし辛くなったら、いつでも会いに来てね」
「はい。佐々木先生もお元気で。3年間ありがとうございました」
「伊織~!!次は剣道部のメンバーと写真撮ろうぜ!」
「わかった。今行く。では、佐々木先生、オレはこれで」
「うん!またね、武田くん」
そしてその青年は、声のした方向へ向かっていった。
「伊織~!卒業おめでとうな!」
「ああ、ありがとう修」
武田伊織と吾妻修。二人は親友で、同じ剣道部のメンバーだった。桜が舞う中、二人は今までの中学校での思い出話に花を咲かせる。
「なあ、伊織。オレ達、もう離れ離れになっちゃうんだよな…」
「ああ、確か修は京都の方の学校に進学するんだよな」
「おう!不死宮学院ってところだな」
「おお、それはオレが進学する黄泉川学院の姉妹校じゃなかったか?」
「あ!そうだったのか!なら交流会とかでまたお前に会えるかもな」
「そうだな。お前はお前の道を行け。オレはオレの道を行くからな」
「おう!離れ離れになっても、オレ達は友達だ!」
「ああ。また電話とかしてくれよな」
桜並木の下で、二人の青年はそれぞれの道へと走っていった。
「さて、これでお世話になった先生や、学友との挨拶も済んだな。オレも家に帰るか」
こうして武田伊織は卒業式を終え、自分の家へと帰っていった。
♢♢♢
時刻は夜8時。伊織は実家で夕食を食べていた。夕食のメニューはコロッケとキャベツのサラダと豆腐の味噌汁。そして白米に麦茶。
「やはり母さんの作った料理は美味しいな。流石だ」
「うふふ、伊織ももう4月から高校生になるのね。あの黄泉川学院に進学して、母さんも鼻が高いわ!」
「いいや、オレがここまで来れたのは母さんをはじめとする人達に囲まれていたからだ。オレは幸せ者なんだよ」
伊織はそう言うと、あさりの入った味噌汁を少しだけ啜り、白米を口に入れた。
「あら、そう言えばあの女の子…二鞠ちゃんだっけ?その子にも挨拶しに行かなくちゃね!4月から黄泉川学院の寮に通うんでしょう?」
「ああ、母さん。二鞠についてなんだけど」
伊織が神妙な顔で伊織の母、幸代に話を切り出す。
「二鞠も一緒に黄泉川学院に入学するんだ」
「えっ、ああ、そうだったの?」
幸代は伊織の醸し出す神妙なオーラに少しだけ緊張をする。
「母さんはさ、妖怪の存在って信じる?」
「妖怪って….鬼とか河童とかよね?どうしたのよ急に」
「二鞠もさ、妖怪なんだよ。母さんはオレが小学校5年生の時に死にかけた鷹を助けたのは覚えているかな?」
「あ、あったわねそんな事も。それでその鷹は山に逃したんでしょう?」
「その鷹は3年後、オレが中学校2年生の時に人間の姿になってオレの元へ訪ねてきたんだよ。それが二鞠なんだ。普段は山の中で鷹として過ごしてるんだ」
幸代は最初は半信半疑だったが、愛する実の息子の話だからか途中から真剣に聞き始めた。
「そうなんだ!私も妖怪は…いるとは思うかな。だから伊織の言ってる事、信じるわよ」
幸代はそう言うと伊織ににっこりと微笑む。そして、次の話題を繰り出した。
「あ、伊織はさ、どうして黄泉川学院に入ろうと思ったの?」
「それは黄泉川学院の理事長の山本さんに直々に推薦を受けたからだよ。中学校に登校してるタイミングで、二者面談だったから母さんは立ち会ってないけど」
「さんもとさん?」
「そう。その山本さんも妖怪で、しかも妖怪の総大将らしくてさ。妖怪が見えて、剣道部の全国大会で表彰されるほどの才能を持つ君に、是非ともうちの黄泉川学園で学び、この国の希望になって貰いたいって言われてさ」
伊織は嬉しそうに話を語る。この時点で既に夕食もほとんど完食していた。
「理事長さんからそんな話をされてたなんて!もう、なんで言ってくれなかったのよ…」
幸代は少し残念そうに伊織を見る。
「オレも本当は報告しようかとは思ったよ。けど、山本さん含む妖怪の存在は国家機密って言っててさ。なんでも15年くらい前にこの世界で起きた世界大戦も妖怪が日本軍に関与してたなんて話も聞かされてさ。オレもその時は信じられなかったけど、二鞠の存在を見たからどうしても嘘とは思えなくてさ」
「そうだったの…だから今まで黙ってたのね…それで。伊織は黄泉川学院にスポーツ推薦で行くのよね?」
「表向きはそうだね。でも、本当は妖怪を見る事ができる霊的な素質があるからというのも二つ目の理由として挙げられるんだ」
「は、はぁ…なんかスケールが大きい話だわね…」
「そして申し訳ないけど、相手が母さんでもオレが話せるのはここまでだ。これ以上話すと山本さんに怒られるから…」
伊織はそう言うと、真剣な眼差しを幸代に向けた。
「まあ…でも、伊織も成長したわね。兎にも角にも、母さん応援してるから。東京の方に行ってもまた連絡ちょうだいね」
「うん。もちろん連絡はするよ。ご飯もごちそうさま。このご飯が食べられなくなると思うと寂しいな」
「うふふ、帰省したらまた作ってあげるわよ。さ、明日はもう朝早くから電車に乗って東京に行くんでしょう?お風呂入って準備しなさい」
こうして、伊織は夕食後に身支度を済ませ、就寝した。
翌日、山梨県の某所の駅にて、伊織と二鞠の2人を幸代が見送る事になった。
「では、行ってきます」
「幸代様、見送りに来てくれたのですね」
「伊織も二鞠ちゃんも行ってらっしゃい!東京でも元気でね」
「母さんも元気でな。オレも頑張るから」
そして伊織と二鞠の2人は東京行きの電車へと乗り込んだ。ここから伊織の奇妙で日本を救う戦いが始まるのであったーーー
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