適正異世界

sazakiri

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第110話

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「さてさて…金額はっと…」
俺は相手から差し出された紙を見る。
この契約書に書かれている金額を払うことで、あいつらをこの牢獄から解放してやれるってわけだ。
まぁ紙に書かれている金額を払うことができなければ、釈放させることができない。

その時はしょうがない…
俺とアリスの二人旅で進めるしかなくなるな。

「50万ギル!」
アリスが契約書の金額を見て、こちらに訴えてくる。
やけにテンションが高いのは気にしないでおこう。

「50万か…」
まぁ余裕で払える金額ではあるが…

俺の今の所持金は約90万ギルだ。

あの宝石を売ったお陰で100万ギルという大金を持った状態からスタートできた。

そのあと色々あって、10%の10万ギルはある人に貸した。

ちなみにさっき「ある人」という単語を使って、カッコつけたみたいな文になっていたが、単に名前を思い出せないだけである。

ひとの名前覚えるのって難しいんだよな…

「じゃあこれで」
そう言って俺は手首につけている支払い専用のリングを管理者であろう男に見せる。

「ありがとうございます」
そう言って手元の機会に指を指す。
「ここにリングをかざしてください」

「分かりました」
そう言い、俺は機会にリングをかざす。

「確認いたしました」
なにやら「ピロリーン」みたいな音が聞こえたあと、支払いが完了したことを告げられる。

てか「ピロリーン」って、いかにも支払いの音じゃん。

「では少しお待ちください」
そういって男はあいつらが捕らえられている場所の方向に向かった。

「ねぇねぇ」
アリスが話しかけてくる。
「なんだ?」
「なんで持ってたの?」
「ギルか?」
「そう!あんな価値の高い囚人見たことないよ!」
「価値が高い?」
「うん!50万ギルっていう値がつくのは滅多にないと思うよ」
「それは詐欺なのでは?」
「うーん……可能性はゼロじゃないと思うけど」
この反応、絶対詐欺じゃん…
てか普通に考えたら全財産の半分以上削られたんだけど。

「まぁ二人とも可愛いかったから価値が高かったんだよ!」
「はぁ…そんなものですかねぇ」
「でもギルが足りただけ良かったでしょ?」
「それはそうだけども…」

そんな会話をしているうちに男が問題児をつれて俺たちの前まで来る。

「トウマさん!」
久しぶりに聞いたルナの声が牢獄に響く。
「よう、1日ぶりだな」
「まさか助けに来てくれるなんて」
桜川が言う。

「なんだよ?俺が助けに来なかったらお前らヤバかったろ」
「まあね」
まあね?そんな軽い言葉で済ましていいんですか?
こちとら全財産に大ダメージ+肉体的疲労です。

「まぁ無事で良かった」
「ですです!」
俺の言葉に続いてアリスもそう言う。

「あれ?アリスちゃんってそんな感じだったけ?」
ルナが不思議そうな顔をして言う。
まぁ無理もないわな。
アリスは最初はコミュ障キャラで貫こうとしてたから

「まぁ色々ありましてね…」
アリスがルナに答える。
もうそのキャラは手遅れだと思うけどな。

「とにかく!今回は助かった!ありがとう」
桜川が頭を下げてくる。
「ま、まぁ気にすんな」
急に謝られると…気が引ける部分がある…

「さて、救出も出来たし、出発しますか」
「そうですね!」
「でももう外は暗いんじゃない?」
桜川が聞いてくる。
「暗いです!暗くなるまで歩きました…」
桜川の質問に対してアリスが答える。
その「暗くなるまで歩いた」っていうのはこいつらにはクリティカルヒットだからやめたげて…

「「すいません」」
案の定謝る二人。

「さて出ますか」
そう言って入り口に向かおうとした時だった。

「トウマさん?!」
後ろの方から微かに聞き覚えのあるような声が聞こえてくる。

「ん?気のせいか?」
「どうしたの?」
桜川が聞いてくる。
「どこからか幻聴が…」
「なにそれ?もしかしてそれも私たちに対する遠回しな煽り?」
「ちげぇよ…マジで聞こえた気がしたんだって」
こいつのさっきの謝りはなんだったんだよ…

「トウマさんー!!」

「また聞こえたぞ」
「はい!私も聞こえました」
ルナが言ってくる。
「後ろってここには囚人しかいないよ?」
アリスが言う。

確かにここには囚人しかいるはずがない。
ここは牢獄だ。

俺はこの世界に来てから間もない。
そんな俺に囚人の知り合いが居るわけが……

「トーマーさん!!」
そしてまた聞こえる幻聴。

「あ…これは一応確認しといた方がいいやつだ」




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