適正異世界

sazakiri

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第114話

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ここはホテルの302号室。

当たり前のようにホテルに泊まっているが、前の生活を続けていればあり得ない話だと思う。

私はこの町、セントラルに小麦を運ぶ仕事を任せれていた。
言い方は悪いかもしれないけど、それしか仕事ができなかった。

でも今からは違う仕事をこなしていかなければいけない。

「上がりました~」
「ルナさん、いやーここのホテルは良いですねぇ」
「そ、そうだね!」

この銀髪の少女は、セツナちゃんって名前だ。
長年の付き合いみたいな雰囲気を出しているけど、つい一時間前ぐらいに始めて出会った。

どうやらトウマさんとは、知り合いのようだけど…

「ところで、セツナちゃん?」
「ん?なんです?」
「セツナちゃんは結局、なんで牢獄に居たの?」
「あー…それはですね…」
「そ、それは?」
「それは……洞窟を破壊しちゃって」
「洞窟を破壊?」
「です!」
「へ、へぇ…す、すごいね!」
「それほどでもないですよ!」

どうやらセツナちゃんは洞窟を破壊したらしい。
普通に考えたらどうやって破壊するんだって感じだけども。

私は家にいることがほとんどだったので、まだ知らないことが多い。

セツナちゃんみたいな人がこの世界には沢山いるのかも

「ところで…」
「な、なに?」
急に真面目な顔を見せてくるセツナちゃん。
「さっきの逆なんですけど、なんでお二人は牢獄に?」

「まぁ確かに質問としては当然だよね!」
「はい、私はまだ分からないですけど、二人は破壊とか出来なさそうだし…」
「破壊が基準なんだ?!」
「あ、すいません!」
「いや!謝ることじゃないよ!」
「そうですか?」
「うんうん!」
「まぁ確かに自分の罪を語り合うってもおかしいですよね」
「確かに…」
「さっき言っといてなんですけど…結局なにを?」
ここは正直に言うことが筋ってもんだよね

「実は武器を盗んじゃって…」
これが私とチユキさんが捕まった理由だ。

「えぇ……案外、ちゃんとした理由じゃないですか」
「そ、そうなんだよ…」
「…………」
「…………」
沈黙の時間が走る。

「せ、セツナちゃんはトウマさんと知り合いなんだっけ?」
とりあいず話題を作らなければ…

「そうですよ」
「どこで知り合ったの?」
「んー…森の中?」
「森?普通の?」
「あ、はい。入ったら死ぬっていう定評もあるんですよ?」
「ヤバイやつじゃん?!」
「そんなこと言っても死んだ人なんて聞いたことないですよ?」
「そうなんだ…」
それは死んでるからでは??

「トウマさんとは森であったんですけど」
「うん」
「そのあと洞窟に行ったんですよ」
「ん?」
これはもしかしたら…
「おや、お気づきになりました?」
「なんとなく…」

「お察しの通り、なんと洞窟の爆破はトウマさんも共犯なんですよ!」
「それ本当なの?」
「マジですよ!なのに私だけ捕まったんですよ?酷くないですか?」
「確かに…」
トウマさんはそんなことするようには見えないけど…
私の前には証言者がいるからなぁ

「なので!これからはトウマさんをこき使っていきます!」
「ですよねー」
今日、初めて出会ったのにもうセツナちゃんの性格が理解できた気がする。  

「じゃあそろそろ寝ますね」
「え?!もう?」
「はい!規則正しい生活が魔術を強化するのです!」
「え?魔術?」

なんのことかと聞こうと思ったときにはもうセツナちゃんは寝ていた。

てかこき使うって言ってたけど…普通に脅しでは?

「寝よう」
そう言って私もベットに移動する。
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