〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~

乃ノ八乃

文字の大きさ
147 / 172
第四章 魔女のルーコと崩壊への序曲

第139話 心配性な二人と派遣された試験官

しおりを挟む

 試験のために街へとやってきた次の日。私達は早速、試験を受けるべくギルドを訪れていた。

 まあ、私達と言っても全員が全員、同行している訳ではなく、ここにはアライア、それからサーニャとノルンという心配性な二人と一緒だ。

 他の人達はそれぞれ用事があるといって行動しているからどこで何をしているのかは知らない。

 一応、何があるかわからないという名目の下、全員で街へ来ているのだから、トーラスとウィルソンはともかく、レイズに関しては一緒にギルドまでやってくるべきだと思うけど……あの人の自由さ今に始まった訳じゃないから仕方ない。

「……久しぶりにギルドまできましたけど、復興は大分、進んでるみたいですね」

 ギルドの中へ足を踏み入れた私は辺りを見回し、そんな感想を口にする。

 あの騒動での壊滅的な被害を考えれば、すでにギルドとして動き始めているのは凄いの一言に尽きるだろう。

「そりゃあ、エリンが相当に尽力したみたいだからね。重症を負いながらよくここまでやったもんだよ」
「――――褒めても何もでないわよ、アライア」

 私の感想に反応したアライアの言葉に対し、奥の方から車椅子に乗ったエリンが苦笑いを浮かべながら現れる。

「エリンさん!お久しぶりです」
「ええ、久しぶりですねルーコちゃん。元気に……と言うのも変ですか。ともかく、また会えて嬉しいです」

 騒動であの怪物から受けた後遺症か、歩けなくなって車椅子にこそ乗っているものの、エリンは思っていた以上に元気そうだった。

「や、エリン。例の特別試験とやらを受けにきたよ」
「……別にアライアさんが受ける訳じゃないでしょう」
「そうですよ。受けるのはルーコちゃんで、私達はあくまで何かあった時の付き添いなんですから」

 半ば呆れるように注意するノルンとサーニャ。もちろん、アライア的には冗談だろうけど、心配故にぴりぴりしている二人にはそれも通じなかった。

「……どうにもみなさんピリピリしていますね。原因はやはり試験の件……ですか」
「まあ、そうだね。というか、エリンがそういうって事はやっぱり今回の試験は上のお達しなのかな?」
「ええ、上……というより国、と言った方が正確ね。本当なら断わりたかったのだけど、王都から直々のお達しだったから私も無下にはできなかったの」

 申し訳なさそうに私の方を見つめたエリンは目を伏せ、小さくため息を吐いてから続ける。

「……本来ならルーコちゃんは一級試験に受かった時点で、指導した魔女の許可があれば魔術師になれた筈なのに……本当にごめんなさい」
「いえ、エリンさんが謝る事じゃないですよ。私には詳しい事情は分かりませんけど、それでも貴女が悪くない事くらいは理解できますから」

 今回の件、話から察するに上の人達というのが、私みたいな小娘を魔術師として認めたくないから試験を無理くり用意したって事だろう。

 エリンはギルドのマスターとしてそれを伝えただけ……そこに彼女が悪いといえる要素なんてどこにもない。

「だね。ルーコちゃんの言う通り、今回の件はエリンに責任はないし、気にするだけ損だと思うよ。それより――――」
「実際にルーコちゃんが受ける試験はきちんと公平なものなんですか?落とすための理不尽な内容だったりしませんよね」
「それは私も知りたいです。もしも、合格すること自体が不可能だったり、物凄く危険な内容だったら引っ張ってでもルーコちゃんを止めるつもりですから」

 アライアの言葉を遮り、ノルンとサーニャがエリンへと詰め寄る。

 きっと二人もエリンが悪くないと分かっているのだろうが、私の事となると凄く心配性になるノルンとサーニャだからどうしても、問い詰めるような口調になってしまうらしい。

「……内容に関しては通常の一級試験と同様なので大丈夫だと思います。しかし、問題は試験官は国側が用意すると言ってきた事です」
「…………なるほど、ね。確かにそれなら対外的にはどうとでも言い訳が立ちそうだ……本当にそういう部分だけは頭が回る」

 うんざりした顔でそう言ったアライアは片目を瞑り、指で頭をとんとんと叩いて私の方に向き直る。

「えっと、アライアさん……?」
「……ルーコちゃん。たぶん、向こうはかなりの実力者を試験官に据えてくると思う。流石に魔女や賢者みたいな最高位を用意してくるとは思わないけど……相当厳しい相手になると思ってた方がいいかもね」

 困惑する私へそれだけ言うと、アライアは肩を竦め、まあ、ここであれこれ言い合っていても仕方ないさ、と試験会場へ案内するよう、エリンへと促した。

「――――さっきも言った通り、今回、特例とはいえ、試験の形式は一級試験と同じになります。会場はギルドの地下、試験官は少し遅れて到着するそうです」

 地下へと向かう道すがら、エリンが簡単に概要を説明してくれる。

「……向こうが試験を提案してきてその試験官が遅れる……いくら国から派遣されてくる人だとしても、それはないと思います」
「そうですよ!そりゃ向こうは国から派遣されてくるくらい偉いのかもしれませんけど、それでも遅刻していい理由にはなりません!」

 初めから国の派遣した試験官に良い印象を持っていないノルンとサーニャがここぞとばかりに遅れている事を責め立てた。

「まあ、二人の言う通り、遅れてくるのは感心しないね。試験官を勤めるからにはその辺をきちんとするべきだと思うよ」
「でも、向こうにも何か事情があるかもしれませんし、悪いと決めつけるのは早計じゃないですか?」
「……ルーコちゃんは本当に良い子ですね。確かにその可能性もありますが……まあ、その試験官がくれば分かりますから、くるまでもう少し待ちましょう」

 エリンの言葉に試験会場の地下までやってきた私達は例の国から派遣されるという試験官を待つ事に。

 そこからしばらくして階段を下ってくる足音と共に派遣された試験官らしき一人の男が姿を現した。

「――――ここが試験会場か。ずいぶんと古臭い場所だな」

 男は遅刻したことを謝るでもなく、会場内をぐるりと見回すと、開口一番、そんな事を口走る。

「……貴方が国から派遣された試験官ですか?」
「ん?そういう貴殿は……ああ、ここのギルドマスターか。そうだ。私が今回、王の命により不正の疑いがある小娘の試験官を仰せつかった〝炎翼の魔術師〟グロウ=レートだ」

 謝罪もない不遜な態度に目を瞑り、冷静に努めたエリンの問い掛けに対し、炎翼の魔術師を名乗る男……グロウは彼女がギルドマスターだと分かっていてなお、高圧的な物言いで返す。

「なっ……誰が不正だって――――」

 まるで自分こそがこの場で一番偉いとでも言わんばかりの態度と言葉に何かを言いかけるサーニャをアライアが止めた。

「なるほど、まさか今回の試験官が今現在、一番〝賢者〟に近い〝炎翼の魔術師〟だとは……国はよほどルーコちゃんを魔術師にしたくないらしいね」
「〝賢者〟に一番近い……あの人が……?」

 見ただけで実力の程が分かるわけではないけれど、少なくとも、今まで戦ってきた相手のような圧力をグロウからは感じられない。

 実際、戦ってみないとなんとも言えないが、正直、私にはグロウが〝賢者〟に一番近いなんて到底、思えなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜

夜夢
ファンタジー
主人公【相田理人(そうた りひと)】は帰宅後、自宅の扉を開いた瞬間視界が白く染まるほど眩い光に包まれた。 次に目を開いた時には全く見知らぬ場所で、目の前にはまるで映画のセットのような王の間が。 これは異世界召喚かと期待したのも束の間、理人にはジョブの表示がなく、他にも何人かいた召喚者達に笑われながら用無しと城から追放された。 しかし理人にだけは職業が見えていた。理人は自分の職業を秘匿したまま追放を受け入れ野に下った。 これより理人ののんびり異世界冒険活劇が始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...