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第一話-2
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「お兄様、今日までよくわたくしを信じてついてきて下さいました」
学院に向かう前日、支度の最中に妹が訪ねてきた。
最愛の妹アデライードは、まだ幼さの残る顔をキリリと引き締めて俺にそう言った。俺より三つ年下だから、アデラはまだ13歳だ。しかしその目にはキラリと強い意志が宿り、遥か倍くらい年上の女性に見える。
そう、それもそのはずアデラは『異世界転生者』だった。
「今度は何を企んでるんだ」
「まあ。酷いですお兄様。本気で褒め称える気でしたわ」
アデラの前世は30代OL。
交通事故で死んだと聞いたが、正確な年齢は教えてもらえなかった。聞くんじゃない、という圧に負けたからそれ以上詳しくは知らない。俺も人の子なので普通に年上の女性は怖いのだ。
アデラが普通の貴族令嬢と違うのは、ジラール家では皆が知っていることだった。
執事、侍女長、そのほとんどが囲い込み雇用でうちに忠誠を誓っているので、漏洩の心配もない。それでアデラは3歳から父と共に領地経営をしていた。治水事業、農地改革案、商業についてのノウハウ、領民の福利厚生までアデラの知識は何もかもが新しいものだった。
また、アデラは『最高効率の修行でお兄様を最強にして見せますわ』と両親に宣言した。
そして俺に剣術や魔術、錬金術まで様々な修行をさせてくれた。
アデラ自身がそれらの知識を持っていたのではなく、今日はあそこへ行け次の日はここへ行けと毎日分刻みの指示があり、その通りに授業を組んで専門家に鍛えてもらったところ、俺は16歳にして大陸最強のステータスにたどり着いてしまった。
もちろん修行は1日8時間と決まっていて余暇はきちんと用意されていたし、フレデリックが遊びに来た時は予定を組み直してもらったりもした。
こうして無理なく効率的に『最強』へと導かれていったのだ。
ちなみにレベルはカンストしている。いろんな職業の習得可能スキルを総取りして、そのスキルレベルもMAXの10になった。
これらのステータスのわかる『鑑定』スキルは特定の能力を持つ者が有しているもので、気軽に行える健康診断のようなものだ。
他人に対して無闇やたらと『鑑定』を使うのは推奨されていないが、街に入る検問とかでは犯罪歴を見るため普通に使用されていた。妹はやたらと「ステータスオープン」と言いたがるので何か異世界では特別なことなのかもしれない。その度に執事が横からサッと俺のステータスの書き出したものを渡していた。
うちでは、その執事のラルフが『鑑定』スキルを保有している。父は妹の言葉を疑っていたわけではないが、それでも半信半疑だったのか毎日執事に俺のステータスを鑑定させた。
そして着々と成長していく様を記録に残したのだ。後で廃棄しなくてはならないような機密になってしまったが、無事に俺は──大陸最強の剣士であり魔術師であり、錬金術師になった。
ちなみに世界最強と言えないのは、この大陸より北の海の向こうには魔族の棲む未知の大陸があると言われているからだ。見たことないものとは比べられないからな。
「お兄様、今日までよくわたくしを信じてついてきて下さいました」
学院に向かう前日、支度の最中に妹が訪ねてきた。
最愛の妹アデライードは、まだ幼さの残る顔をキリリと引き締めて俺にそう言った。俺より三つ年下だから、アデラはまだ13歳だ。しかしその目にはキラリと強い意志が宿り、遥か倍くらい年上の女性に見える。
そう、それもそのはずアデラは『異世界転生者』だった。
「今度は何を企んでるんだ」
「まあ。酷いですお兄様。本気で褒め称える気でしたわ」
アデラの前世は30代OL。
交通事故で死んだと聞いたが、正確な年齢は教えてもらえなかった。聞くんじゃない、という圧に負けたからそれ以上詳しくは知らない。俺も人の子なので普通に年上の女性は怖いのだ。
アデラが普通の貴族令嬢と違うのは、ジラール家では皆が知っていることだった。
執事、侍女長、そのほとんどが囲い込み雇用でうちに忠誠を誓っているので、漏洩の心配もない。それでアデラは3歳から父と共に領地経営をしていた。治水事業、農地改革案、商業についてのノウハウ、領民の福利厚生までアデラの知識は何もかもが新しいものだった。
また、アデラは『最高効率の修行でお兄様を最強にして見せますわ』と両親に宣言した。
そして俺に剣術や魔術、錬金術まで様々な修行をさせてくれた。
アデラ自身がそれらの知識を持っていたのではなく、今日はあそこへ行け次の日はここへ行けと毎日分刻みの指示があり、その通りに授業を組んで専門家に鍛えてもらったところ、俺は16歳にして大陸最強のステータスにたどり着いてしまった。
もちろん修行は1日8時間と決まっていて余暇はきちんと用意されていたし、フレデリックが遊びに来た時は予定を組み直してもらったりもした。
こうして無理なく効率的に『最強』へと導かれていったのだ。
ちなみにレベルはカンストしている。いろんな職業の習得可能スキルを総取りして、そのスキルレベルもMAXの10になった。
これらのステータスのわかる『鑑定』スキルは特定の能力を持つ者が有しているもので、気軽に行える健康診断のようなものだ。
他人に対して無闇やたらと『鑑定』を使うのは推奨されていないが、街に入る検問とかでは犯罪歴を見るため普通に使用されていた。妹はやたらと「ステータスオープン」と言いたがるので何か異世界では特別なことなのかもしれない。その度に執事が横からサッと俺のステータスの書き出したものを渡していた。
うちでは、その執事のラルフが『鑑定』スキルを保有している。父は妹の言葉を疑っていたわけではないが、それでも半信半疑だったのか毎日執事に俺のステータスを鑑定させた。
そして着々と成長していく様を記録に残したのだ。後で廃棄しなくてはならないような機密になってしまったが、無事に俺は──大陸最強の剣士であり魔術師であり、錬金術師になった。
ちなみに世界最強と言えないのは、この大陸より北の海の向こうには魔族の棲む未知の大陸があると言われているからだ。見たことないものとは比べられないからな。
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