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第五話-1
風呂上がりのオーギュスト殿下はツヤツヤのピカピカだった。まとめていない銀髪が肩と背に流れて、薄い夜着の合わせ目から逞しい胸筋がむきっと見えている。やっぱり脱いだらすごい系だった。
ゆったりと一人掛けのソファに腰を下ろして、何か飲んでいたようだ。寮の一室だというのに優雅過ぎる。
とんでもないところに転移してきてしまったが、俺も必死だった。
恐らく朝の一件の印象が強すぎて、敷地内にいる殿下の魔力を探知してそこへ飛んでしまったんだろう。いつも馴染みの魔力を探して転移するのでそのクセが出た。
俺が転移する先はだいたいフレデリックかアデラのいる場所なので、フレデリックを除外した場合本当に選択肢が少ない。
でもどうして殿下の場所だったのか、謎だ。
まあ今回は緊急事態だったのだから、どうか不敬でも大目に見て欲しい。王族の余裕とかで。いや、学生のお遊びで『お部屋訪問』みたいなかんじでどうだろうか。
「今のは転移魔法か」
「……はい」
一応返事はできたが気もそぞろだった。
実は、普通に立ってるだけでも股の間が濡れてるのが気持ち悪い。引っ張り上げただけの服もゆるゆるで落ちそうだし、よくこれで部屋から飛び出してきたな俺。足がもつれたらそのまますっ転んでいたかもしれない。
慌て過ぎだ、だが今まで経験したことのない危機感だった。
とにかくあの場から逃げられたのだから、落ち着いてもう一度転移しても良いんだ。ここにはもうフレデリックはいない。
――そう思っていたのに、俺は軽くパニックになっていたらしくその場にへたり込んでしまった。
毛足の長い絨毯は最高級品のようで心地良い。ほっと小さく息をついてから、オーギュスト殿下を見上げる。
困惑したような碧眼がジッとこちらを見つめていたが、そこには怒りや不快そうな感情は浮かんでいなかった。
これはもしかしていけるんじゃないかなんて思ってつい、俺は切羽詰まった希望を口にしてしまった。
「あ、風呂を、貸してもらえないか、と……」
「そのために転移してきたのか?その魔法は、宮廷魔術師レベルだと聞いているが。風呂のために?」
「いや、あの……」
恐らく寮内で独自の風呂がついているのはこの部屋だけだ。そしてホカホカなオーギュスト殿下が羨ましくてつい口に出た。
話しながら無意識に下腹部に力を入れると、トロッと中から液体が零れる感じがして『ヒッ』と身体を竦めた。それを見てオーギュスト殿下が眉を寄せる。
これについては、どうしたと問われても正確に答えられる気がしない。
「殿下、あまりに野暮ですよ。この服の乱れよう、不自然な腰の引け方、しかも色気の振りまきようで聞く必要ありますかね」
続きの部屋から入ってきたのはエルヴェだった。柔らかそうなタオルと着替えを持っていて、俺にそっと手渡してくれる。
立てますか、と問われてゆっくり腰を上げた。ふらつきそうになったのをエルヴェが腰を抱くようにして支えてくれる。いや、なにもそこまでする必要はないんだが。
やんわり手を払おうとしたら、余計にがっしり抱かれてしまった。浴室の方へと促されたのでまあいいかとそのまま歩みを進めると、オーギュスト殿下まで後ろをついてくる。
なんだ、と思って振り返ったらハッとした顔して目を逸らしていた。
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