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第九話-1
しおりを挟む「マグナス、この魔獣達はどこから湧いて出ているんだと思う?」
二日目は川に出て、生徒達は水辺の魔物を狩っていた。
見通しが良くひらけているせいで戦い方を隠す方法がなく、俺は仕方なく剣だけで怪魚系モンスターを倒していた。水に近寄るだけで勝手に襲ってくるので移動する必要がなくて楽だ。
水の中の魔物は雷魔法を使う方が一網打尽に出来て早いんだが、俺の使う魔法は規模がデカいのでたぶん他の生徒にドン引きされる。
そういうの事の対応も面倒なのでバレないように戦うしかない。
「王国では魔獣の類いは『綻び』からあらわれると言われてるな」
俺の斜め後ろの川岸にはマグナスが腕を組んで立っている。授業なので手を出しはしないが、昨夜のアレのせいか俺の体調を気にしているようだ。
「綻びのおおもとは何なんだ」
「知らん。そう呼ばれているだけで誰も意味など知らんのだろう」
「考えてみたこともないか。……異空間か、境界か……いや、綻び……綻びねぇ」
マグナスと話しながら、剣を振る。鋭い牙を剥いて飛びかかってくる魚の頭をさくさくと落していった。全て身と頭に分かれているので側の村にでも持って行って下処理すれば買い取って貰えると思うんだが。
それに野営地でも携帯食以外のものが食べられる。
こういうのは冒険者と仲良くしていると勝手に教えてくれる知識だ。
「マグナス、この魚を川岸の村に運んでくれないか」
「あ?なんでだ」
「ハラワタ落して洗って焼いて食う。あとは村にあげて塩漬けにでもしてくれればいいか」
「は!?怪魚をか!?」
「何だよ、食べられるモノは何でも料理して食わないと食糧難の時困るぞ」
「……いや、討伐対象のモンスターを食うって……」
「冒険者は食ってるし、たぶんそこの村でも食ってる。作物だけじゃ生きられないからなこの辺りの民は。ジラール領よりずっと魔獣が多い」
ジラール領の討伐隊は、少し有名になりすぎた。他の領でも大きな魔獣の被害が出ると呼ばれるようになり、俺は転移魔法を駆使してあちこちで魔獣退治を行ったことがある。このあたりにも何度か呼ばれて来ていた。
討伐はあくまでギルドに出された依頼なので一人で行くわけにもいかず、あの時は俺が数十人まとめて転移させていた。
ギルド長も、冒険者達も、ソレは他領にバレるとヤバイやつだぞと忠告してくれたので、こっそりだ。そのせいで神出鬼没な討伐隊と、余計な噂も立てられたが。
マグナスは魔道具のアイテム袋を持っていて、そこに山と積まれた魚を詰め込むと『行ってくる』と言って村に向かった。幅の広い川だが、草の生い茂る川岸からでも村は良く見える。
マグナスを見送ってから、俺は微妙に生臭く感じる剣に浄化魔法を掛けた。
身体にもかけて、くんくんと袖口に鼻を近付けてみる。うん、キレイになったような気がする。
「さて、そろそろ野営地に――ッ!?」
川から離れ、今日の野営地として先にテントを張っていた場所に戻ろうとしたところ、いきなり背後から身体を抱き上げられた。
「は?」と間抜けな声を上げてしまった俺は、背の高い相手にギュウギュウと強く抱き締められたせいで足が浮いたのだと一瞬後に気付いた。
しかも俺が警戒を怠っていたということは、知った気配だということだ。
「オーギュスト。驚くだろう」
「……すまない」
一応謝ってはいるが、その間にもちゅ、ちゅ、と俺の首筋や耳にキスを落してくる。
全く悪いと思っていないだろうお前?
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