転生者の妹曰く、ここは俺が総攻主人公のBLゲームらしい?

天城

文字の大きさ
41 / 62

第十一話-2



 降りてくるフレデリックの唇の柔らかさを、俺はよく知っている。舌でこじ開けられて口の中を蹂躙され、きっと息も出来ないほど弄ばれる。

 息が上がって朦朧としたところでペニスや尻に触れられて、結局フレデリックの自由にされてしまうんだろう。

 ソレが判っているのに、俺はフレデリックの瞳から逃れられない。

「……逃げていいよウォルフ」

 唇の重なる寸前、先に触れた吐息はそんな囁きだった。

 そういえば学院での初日以降、フレデリックは俺が何処に逃げても追ってくることはなかった。寮の部屋や、このテントのように、俺が戻ってくるのを静かに待っている。『逃げていいよ』という言葉も、そういえばもう何度聞いただろうか。

 アデラの話には、こんな昏い目をしたフレデリックの事は、何も出て来なかったのに。





 自由行動の出来る時間になると、俺は剣で魔物を屠りながら本隊とは少しずつ離れ、地図の地点に向かった。
 生徒達も騎士団も、目に見えて多くなってきた魔物達にかかりきりでこちらには気付かない。

 これ幸いと俺は目的地まで肉体強化魔法を使って走り抜けた……が、何故かフレデリックがついてきた。

 脚力の強化魔法もしっかり使って俺の走りにぴったりとついてくる。俺はこれで獣型の魔物も振り切れるほどだから、結構な速度なはずだが、フレデリックは息も切らさずついてきていた。

「フレデリック、なんで」
「今日はついて行きたい気分だったから、かな」

 にこ、と笑っているフレデリックはいつも通りだ。別に変なところはないし、今はあの影のある瞳もしていない。

 とりあえず違和感については考えるのを放棄して走り、ほどなくして俺はアデラの示した場所へと到着した。

「……結界石というか……結界だなぁ、うん」

 森の中にぽっかりと土が剥き出しになった空間があった。
 草木はもちろん、生命力の強い雑草でさえ一本も生えていない土に、墓標のような石が置かれている。

 土台があり、その上に俺の身長ほどの石が立てられているが、どうにも違和感があった。
 土台にも、乾いた土の上にも、青く光るクリスタルの楔のようなものが無数に突き立てられているのだ。

 淡く発光しているその青い楔は、どうもこの結界石とは違い異質な感じがした。魔力の流れが違う、とでもいうか。

「この青いの、どう見ても……」
「――ウォルフハルド!」

 俺が地面に屈み込み青い楔を覗き込んだ、その刹那、横から身体を掻っ攫われてぶらんと宙に浮いた。腹のあたりに太い腕があって、抱き上げられているのが判る。

 しかもこの気配には覚えがある。さら、と揺れる銀髪が俺の頬に落ちかかってきた。ぽた、ぽた、と地面に落ちた雫はオーギュストの額から落ちた汗のようだ。なんだ全力疾走の後か?
 はー、はー、と息を乱したままオーギュストは俺を結界石から遠ざけた。

「それに触れては駄目だ。何故王家の管理する結界石の場所を知っているんだ?」

 それはアデライードの『予言』があったからだな。……とは答えられないのがもどかしいが。

 見れば、オーギュストの後からエルヴェもマグナスも追いかけてきている。全員相当無茶な速度で走ってきたようで息がきれていた。

 俺がオーギュストに摘まみ上げられているのを見て、マグナスは大きなため息をついて頭をガシガシと掻いた。

「ったく、何しようとしたんだァ?公子殿はよ」
「ちょっとそこ青いのに触ろうとしただけで」
「結界石に迂闊に触ろうとしないでくれ!」

 雷でも落ちるかのような声が、響き渡った。それでマグナスがどれだけ動揺していたのかが判る。エルヴェが外していた眼鏡をかけなおして、息を整えてからふわりと微笑んだ。

「ウォルフハルド様、結界石は時空を歪める作用があります。それに人の手で触れるということは、下手をすればその時空に吸い込まれたり、空間と空間の間で引き裂かれたりするのです。危ないモノには、好奇心で触れてはなりません。ウォルフハルド様の身体に何かあっては我々は心配で居ても立ってもいられません」
「判ってる、それは判ってるんだけどな。あの青いのは違うだろう」

 俺の事を幼児とでも思ってるのかこいつらは?

 結界石が何か、それがどういう仕組みのモノなのかは判っている。だがこの墓石のような結界石と、青い楔は別の気配がするんだ。俺はオーギュストに視線を向けて、じっと見上げた。

「オーギュスト、あの結界石というのは王家のものか」
「そうだ。境界を封じるために王家が管理している」
「その中にあの青いのも含まれるのか?」
「……――青い?」

 俺の問いかけに、改めて結界石を観察したオーギュストは目を見張った。そっと俺を地面に降ろし、厳しい表情で結界石を眺めている。

「常時アレが見えているのは魔力の強いウォルフだけだ」

 黙って腕を組んで成り行きを見守っていたフレデリックが、ため息混じりにそう言った。
 オーギュストは集中すればアレが見えるようだ。エルヴェも大丈夫そうだな。困った顔をしているのはマグナスだけか。これは説明が必要そうだ。

「オーギュスト。あの青い楔だが、俺には結界の拡張に使う楔に見える」
「……そうだな」
「だが本来の使い方なら、アレが結界石のすぐ近くに刺さっているなんてことはあり得ないだろう。逆に結界石から離して、広範囲に結界が広がるようにするためのものだ」
「ああ」
「それにあの数だ。設置するため運ぶのだって容易じゃないだろう。……で、良く見た結果、楔に込められた魔力量にばらつきがあって、相当古い物が混じっていると判った。これで立てられる仮説は『長い時間をかけて少しずつ楔をここに増やしている者がいる』だがどう思う?」
「……それが正しいだろうな」

 エルヴェが俺とオーギュストの会話を聞いて困惑したような表情を浮かべた。『それに何の意味が?』と言いたそうな顔だ。

 わかるわかる。俺も何がしたいんだよと一瞬戸惑ったんだ。


感想 1

あなたにおすすめの小説

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】