【短編まとめ】おっさん+男前+逞しい受詰め合わせ

天城

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騎士団のエースに捕縛された盗賊の頭領ですが尋問も拷問もなく囲われて溺愛されています。

二十一話

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『大人になったら、貴方がびっくりするくらい上達したところをお見せしますから!覚えててください!』
『おーおー。楽しみにしてるぜ、ルー』

 俺に乗られて散々絞りとられたのが悔しかったのか、ルーは翌朝涙目になってそう主張した。ハイハイと適当に流して頭をがしがし撫でてやったが、俺はルーの言う意味をよくわかっていなかった。そもそも大人になってからって、どう証明してみせるんだかと思っていた。ガキの数でも競うのかと。

 実際はそんなこっちゃなくて、物理的に納得させられたオチだったが。

 ――若造の俺と子供のルーの、転機と別れは突然だった。

 ばあさんが死んだ。ルーが14になる直前だった。顔の広かったばあさんの葬列は、長く、丘の上の教会までずらりと続いていた。
 俺と先代はそこに混じり込むことはせず、遠くから見守るだけだった。盗賊団との繋がりなんて、表沙汰になっていいことなんかひとつもないからな。

 ばあさんは死ぬ直前に、俺に手紙を寄越していた。ルーのことをこれからも頼むと。包みには隠すように小さなエメラルドのピアスが入っていて、これは流石に貰えないと思い突っ返しにきたらもう手遅れだった。

 顔なじみになっていた屋敷の面々に事情を説明して、せめてルーにピアスを返そうと思ったら、本人から断られてしまった。死んだ者の持ち物は、もう返す事は出来ないのだと言われた。
 参列しなくてもいいから来て欲しいと葬儀の時間を教えられ、俺は先代と共に目立たなそうな旅装束で葬儀を見守っていた。

 中心にいたのは孫のルーだった。ばあさんは旦那に先立たれ、息子も娘ももういないという。ひそひそと囁かれる人々の下世話な噂話には嫌気がさしたが、今のルーの微妙な立場を示しているように思えた。

 埋葬まで全てが終わり、その日の夜半過ぎ。

 ひとりでぼんやりと庭に出てきたルーに、俺は近づいた。月明かりの弱い、針のような細い月の夜だった。
 虫の鳴き声だけが庭を満たしていて、ルーも俺も暫く無言だった。

『帰りたくないんです』
『……ん?帰るって』
『王都にある、父の屋敷に。帰りたくなくて、どうしようか、ここ数日ずっと考えていました』
『へぇ』

 どうやら父親はまだ生きているらしい。てか、育児放棄って聞いただけで母親も死んでないのかもしれないが。いや、あのばあさんの葬式に来なかったって事は、生きてたとしても死んでると同じか。
 いつもと違う旅装束で庭の木に寄りかかっていると、ルーが顔を上げてこちらを見た。淡い月明かりのせいか、白磁の肌がおぼろげな光を放っているかのように見える。
 ああこいつやっぱり、綺麗だな。だいぶ見慣れたと思ったその顔に思わず見惚れたその、一瞬。

 ――うるさいほどの虫の声が、唐突に止んだ。

『ルー!』
『っ!』

 護衛任務の時と同様、ルーの腰を抱いて引っ張り上げる。ルーも慣れたもので、俺の首に両腕を回して身体を固定していた。音も無く現われて俺達の回りを取り囲んだのは、黒装束の集団だった。
 手には暗器が握られている。一人として、剣や斧などは持っていなかった。身軽であることが一番、戦闘は最低限、そういう意図が見える。典型的なだ。
 
『そちらの御方を渡して頂こう』
『言われてホイホイ渡すくらいなら、始めから逃げてんだろ。オラ、来いよ!』

 ルーを抱えたままの大立ち回りは、街では日常茶飯事だった。引っ付いているルーも慣れたもので、ぴったりと俺に身体をつけて動きやすくしてくれる。
 多勢に無勢、なんてのは俺には通用しない。

 相手が大人数であればあるほど、俺の大斧は力を発揮する。旅装束の背中に相棒を背負ってきて、ほんとに良かったと思う。やっぱり備えあれば憂いなしだな。頭領の言う通りだ。

『オラァ!退け退けェ!!』

 遠心力でぶん回した斧で黒装束を千切っては投げ、千切っては投げ。吹っ飛ばされた軽い身体は庭木や屋敷の壁にぶつかって蹲る。

 相手はルーが狙いだ。そのせいで俺に向けて本気で飛び道具が使えないらしい。そう思ったのはルーも同じか、すかさず俺の胸や喉など、致命傷になりそうな場所を己の身体で隠した。
 ……それが、間違いだった。

 一枚上手な敵の頭は、この短い時間で俺の性格を見抜いていた。本当にルーを盾にするくらいなら、首でもなんでも差し出すヤツだと。そう思ったのだろう、黒装束の男は俺の右目に向けて、一直線に暗器を投げつけた。

 暗転。

 避けようと思えば、避けられたかもしれない。
 ルーに当たる心配もあったが、それよりも俺は手元の斧を敵に投げ付けることを選んだ。矢尻のような尖った暗器が目前に迫る、その一瞬まで目を見開いて敵の最後の一人に斧を投げた。……相棒が的確に獲物を屠ったのは、見えなくても判った。

 悲鳴と、遠い雷鳴が聞こえる。

 同時に何か呪文めいた異国の言葉と、暖かい日の光のような感覚。無理矢理にこじ開けた左目に映ったのは、ぼろぼろと涙を零すエメラルド色の、瞳だった。

 無事か、と問いかけようとしたが喉が動かない。唇を読んでくれたのか、ルーはコクコクと何度も頷きながらしゃくり上げて泣いている。

 そっか。それならよかった。
 必死に俺の名を呼ぶルーの声が、遠ざかる。そのまま俺は、ブツリと意識を飛ばしたんだった。





  




 あれは10年くらい前の話か。
 きれいさっぱり忘れていた事に『なんでだ?』という思いはあれど、あれから治療で数ヶ月生死の境を彷徨って、気付いたら盗賊団の先代の元に返されていた。

 熱があって朦朧としていた時はベッドもふかふかで、おそらくルーファスの屋敷にやっかいになっていたんだと思う。流石に面倒みきれずに返したって感じか?

 古いことをつらつらと思い返しながら、天井を見上げる。
 ルーファスの部屋ではなく、ルーファスの屋敷にある俺の部屋でもない。昨日一度だけきた騎士団の医務室のようだ。

 よっこらせ、と重い身体を起き上がらせると、ベッドを二つほど挟んだ向こうにいる医者らしき男が気付いた。どうやら俺は、折角処置の終わっていた腹の傷を激しいセックスなんぞで再び開いてしまったらしい。



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