【短編まとめ】おっさん+男前+逞しい受詰め合わせ

天城

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騎士団のエースに捕縛された盗賊の頭領ですが尋問も拷問もなく囲われて溺愛されています。

二十三話-【ルー】

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 ――あの緑色の瞳は、魔性の瞳だ。

 それは私が大人になるまでに、幾度となく囁かれてきた言葉だった。幼い頃は何故自分がこんな目に遭うのか判らなかった。母は自分を蔑み、父には避けられ、それなのに見ず知らずの他人からは熱の籠もった視線を向けられる。

 物陰に連れ込まれ、身体を触られることもよくあった。衣服を勝手にはだけられて、涎を垂らさんばかりにこちらを見つめる他人の目の、おぞましさと言ったらない。
 私は何も悪いことをしていないのに。

 両親に嫌われたのは何故?他人から自分勝手な欲を押しつけられるのは何故?それを我慢しなければならないのも、何故?
 その答えは、思わぬ身近なところからもたらされた。
 
『ルーファス様は、王家の血を引いておられるの』
『既にご結婚されていたリリア様に、先王が御手をつけられたとか』
『先王は乳母をされてたローザ様に憧れていたそうよ。ローザ様が手に入らないから、娘のリリア様を……』
『ルーファス様のあの鮮やかな緑の瞳を見た?王家の血が濃い証拠だわ』

 リリアというのは、私の母だ。ローザは、祖母。
 侍女達がこそこそと噂話をする我が家の内情は、いつも私の心にヒビをいれた。けれど、聞かずにはいられない。どれだけ恐ろしいことが、今まで起こってきたのか、そしてこれからも起こるのか。こわくてこわくて、聞き耳を立てるしかなかった。

 ……こんな呪わしい目、いっそ潰してしまおうか。
 どうせろくなものが見えない目だ。この世の汚泥のみを映して、足枷にしかならないのなら、潰してしまったって構わない。

 祖母の家に引き取られてからも、私はずっとそう思いながら過ごしていた。世界は汚泥と悲しみに溢れていて、楽しい事などひとつもないのだと思った。そんな日々が何年も続いた後、突然お祖母様が『街を出歩いてみない?』と言ってきた。

 私が外に出るとどれだけ迷惑がかかるか。ここは王都より田舎で静かな町だが、だからこそ私の容姿は目立つだろう。ふるふると首を横に振ったが、お祖母様はもう護衛も用意したと言って身体の大きな男を二人、応接間に招き入れた。

『孫のルーよ。宜しく頼むわね、ザザ』

 入ってきた男の若いほう――恐らく20代くらいの黒髪の男に、お祖母様は声をかけた。不躾にも私の顔を見てあんぐりと口を開けたままだった男は、その言葉にハッとしたように瞬きして、頭の後ろを掻いた。

『ザザだ。得物は大斧だが、市街では短めの剣を使う。……それで?行ってみたい店はあるのか、お嬢ちゃん』
『!!……私は、男だ!』

 カッとなって叫んでしまった。今まで、女に間違われることなどよくあったのに。今の『お嬢ちゃん』は断固として拒絶しなければならないような気がした。
 私があまりに大きな声を出したので、執事もお祖母様も驚いた顔をしている。いつも静かで無表情な私が、声を荒げて怒るなんて想像もしなかったんだろう。

『あ、男か。わりーわりー。よろしくな、ルー』

 ニッ、と人好きのする笑みを浮かべてザザは私に片手を差し出してきた。握手を求められているのは判っていたが、触れようかどうしようか迷う。ふい、と目を逸らすとザザは首を竦めて手を引っ込めた。

『それじゃ改めて。行きたい場所はないのか、ルー』
『……あります』

 自由に外に出られるのなら、行きたい場所はたくさんある。今から行こうというので、頷いた。一度街へ出れば、このザザという男も私の厄介さに気付くだろう。そう思って出かけた私達は……数時間後、持ちきれないほどの荷を抱いて、帰ってきた。

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