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クマにも効く強力な媚薬を作れと依頼されたので腕によりをかけて作ったが俺に使うとは聞いてません!
二話
しおりを挟むスライム粘液の瓶にはもう媚薬を入れてみたらしく、男は興味深そうに瓶を振って色が変わるのを眺めていた。
作法も何も判らないまま一応フードをおろし、髪がくしゃくしゃになってないか片手で整える。
俺の黒髪は直毛でかなり強いから、少し整えるだけですぐに真っ直ぐになった。
ティーカップを手に取ると、向かいの席でジッとこちらを凝視している視線に気がついた。
「何か」
「その黒髪と黒い瞳……東方の出というのは本当らしいな」
「ああ……まあそうですね。不快でしたらフード被りましょうか」
「いやそのままでいい」
この国では、遥か東方から流れてくる珍しい品を重宝する文化がある。
金色や銀色、淡い色合いの髪が多い中で何にも混じらない黒の髪はとても目立った。肌の色も、血の気が透けるほどの白いこの街の人々に比べると、東方人の肌は僅かに黄色みを帯びている。
顔もどこか凹凸が少なくのっぺりとしているが、そこが良いと東方の女はこの地域では娼婦としても人気だ。人気が高すぎて高級娼婦を扱う店でしか触れられない。
そのせいか、東方の要素を持つ子供や男なども変に目を付けられると娼館に攫われたりするので、きちんとした後ろ盾がないと中々生き難い状況だった。
そんなわけで俺は早々にこの国の王に錬金術師の腕を披露し、宮廷錬金術師としての身分をもらった。ギルドにも登録しているから突然拉致されて娼婦にされることもない。
まあそもそも、東方人は若めに見られるとはいえ三十路過ぎたのっぺり顔のおっさんに娼館で働かせてもなにも出来ないと思うが。
「……ぶ」
考え事をしながらティーカップを口にもっていって、飲む前に吹いた。
今しがたテーブルから消えていた媚薬の匂いが、香り高い茶からプンプンしている。――なんでココに混ぜた。俺に飲ませてどうすんだよ。
すぐさまカップを置いて目の前の相手をじろりと睨み上げる。
まさかこいつ、試用を俺で済まそうって魂胆じゃないだろうな。そんなゲス野郎だったとは知らなかった。
「どういうつもりですか。おふざけなら笑い事じゃすみませんよ」
「……なんだ、作り手は混入に気付くんなら、意味ないじゃないか」
「はあ!?……は、え? ちょ、え……?」
ため息をついて席を立ったギュンターは、いきなり俺の腕を掴むとそのまま持ち上げた。
強制的に抱き上げるとすぐ側にあったベッドに運び、静かに降ろす。
「【拘束】」
「……っ、……」
全身に痺れが走り、筋肉が固まったように動かなくなる。
指一本動かせなくなってようやく、それが魔法だと気がついた。
騎士団でギュンターが押しも押されもせぬ地位を勝ち取る理由になったのが、これだ。剣技だけでなくこの男は、魔法が使える。
それも魔術師にもそう劣らない程度まで、使いこなせてしまうのだ。
「大人しく飲んでくれ」
「……、……」
ギュンターはテーブルにあった茶のカップを傾け、自身の口にそれを含むとそのまま俺に口づけてきた。
指でこじ開けられた口に、ドッとぬるい茶が流れ込んでくる。
鼻を摘ままれているせいで息が出来ず、必死になってその茶を飲み干した。はあ、はあ、と口で息をするごとにギュンターの舌が俺の口の中をなめ回していって、最後の唾液をごくりと飲み干すまで許されなかった。
カアァッと喉の奥から腹にかけてが熱くなって、俺は無意識に身を捩る。
「はあっ……はあっ……ぁ、つ……あ、あっ……っ」
分厚いフードのついたローブが脱がされ、下に着込んだシャツや下着、服の全てが剥ぎ取られていく。あっという間に全裸にされてシーツに転がされた俺は、最後に解かれた髪紐がするりと抜かれていくのを目で追った。
背まである黒髪がざらりとシーツに散る。ジッとこちらを見つめるギュンターの目は、深い情欲に満たされていた。
その目に、ゾクッと背筋が寒くなった。
どうにかして逃げなければと、本能が警鐘を鳴らしている。
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