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二章 王都と精霊術士
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しおりを挟む『まあ、そうよねえ。この国ではあまりにも目立つわ』
元の髪色のままこの国の街を歩き回ったらどんな反応が返ってくるんだろう。指さされて叫ばれたりするのかな。
「エレンの色も俺がこの髪色にしてからだよね」
『私はルイスと繋がってるから、まあ影響は――』
あ、と突然エレンが言葉を止めた。慌てたように俺の胸元に飛び込んでくるから、不思議に思って抱き留める。その直後、背後で悲鳴のような声が上がった。
「なんだあの虹色の精霊は!」
『ごめんなさいルイス、見つかっちゃったわ』
えっ、黒猫の姿でも精霊ってわかるの? なんで?
俺は慌てて図書館の椅子から立ち上がり、走ってその場から逃げた。俺たちの後ろでは神殿の関係者らしき精霊術士たちが集まって口々に叫んでいる。
「エーテルの精霊が現れた!」
「冗談だろう、まさか!」
「見たんだ! アレは間違いなく虹色に光る精霊だった!」
瞬く間に神殿内は大騒ぎになった。
うわあ、精霊術士って精霊の本来の姿がわかるの? 俺はそんなことも知らなかったの?
『ごめんなさい、特別聡い子がいたようだわ。あんな所で気を抜いた私が悪い。王都にくるときは精霊術士がいっぱいいたからちゃんと隠蔽してたんだけど』
「いや、大丈夫だよ。俺も気づかなくてごめんね。それはいいんだけど、どうしよう。これ捕まるとどうなるの? エレンはどうなっちゃうの?」
振り返ると血眼になってこちらを追いかけてくるおっさんたちの群れがいて、思わず「ひぃっ」と声が漏れた。なになに、みんな必死すぎないですか!?
『エーテルの精霊とみんな契約がしたいのよ』
「契約? するとどうなるの?」
『エーテルの精霊術士になれるの。みんな伝説の存在になりたいから、私を捕まえたら一人ずつ契約できるか試して、できる人がいなければ見つかるまで監禁されるわ』
か、監禁!? なんか物騒な話になってきた。精霊と契約なんて話は師匠から聞いたこともなかったから、俺は不思議に思って腕の中のエレンを見つめる。
『精霊はね、術士と自分、どちらかが消えるまで続く専属契約ができるのよ。それが叶えば、契約した精霊限定になるけど自由自在に奇跡が行えるの。ただし、精霊も人も一対一のみ』
「……えっと、それはつまりエレンが契約する精霊術士を一人決めたら、他は全部駄目ってことだよね。それは確かに、我先にって申し込みにもくるか。結婚してください! ってモテモテになるみたいなやつだよね」
ぐに、とピンク色の肉球が俺の頬にめり込んだ。ぐいぐい跡が付きそうなほどの猫パンチだ。
なに。可愛いけどなんなの。エレンがすごく怒ってる感じがする。
『お馬鹿さん。ほら、あの角を曲がったらちょっと跳ぶわよ。いいわね』
「うん? ……え、跳ぶって」
広くて迷いがちな神殿の中を走り回り、一本道の向こうからも後ろからも探す声が聞こえて、俺は途中の角を曲がった。
そこで急に足元の床が消えてしまいガクンと体勢を崩し、そのまま落下する。
ヒッ、と声を上げるヒマもなかった。衝撃に備えて身体をぎゅっと丸めていたら、そのままごろんと板敷きの床に転がる。
「……へ?」
目を開けたら、ここ数日泊まっている神殿の宿舎の一室だった。
俺のローブが壁にかけてあるから、間違いない。神殿の敷地は広いから図書館までは結構歩くんだけど……え、どうして? 今のも奇跡なの?
『ちょっとここに座りなさいルイス。話があるわ』
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