33 / 41
四章 とある港街の魔術師と弟子
2
『早かったじゃない。荷物はどうしたの?』
「パンはね、後で届けて貰うんだ。オレンジたくさんもらったから、ジャムでも作ろうかな」
『いいわね。お砂糖をたっぷり使いましょう』
尻尾をくるりと俺の首に巻き付けて、エレンは上機嫌に言った。俺もエレンのキラキラした毛皮に頬ずりを返す。
髪を黒くするのをやめてから、エレンも一緒の色なのが嬉しかった。師匠の工房にいる弟子ってだけで、俺たちの色を変だって言う人はこの街に一人もいないんだ。この色がエーテルの精霊術士だという話はアンセル王国を出るとほとんど伝わっておらず、俺の周囲は静かなものだった。
師匠が凄すぎるからその影に隠れたって感じかな。
不意に大きな手が伸びてきて、エレンの首根っこをひょいとつまみ上げた。
『ちょっと! なにすんのよボケカス魔術師!』
「退け。今は俺の番だ」
『はあ!?』
ぽん、と窓辺のクッションに戻されてしまったエレンを目で追っていたら、師匠の腕に捕まって奥の部屋へと引き込まれた。バタン、と戸が閉まるのと同時にいきなりキスで口を塞がれて、抵抗の言葉を発する暇もない。
「え、……ぅ、ん、んんっ」
こっちの扉の中は師匠専用の『作業場』だ。金属に古代文字を刻み込んだ護符や、石やガラス玉に魔力を充填して作る魔石などを作成している。
所狭しと素材の入った箱や籠が置かれている中、革張りの一人掛けソファに師匠は腰を下ろした。そして俺は何故かその膝の上に引っ張り上げられている。
「師匠、あの……お、お昼の用意が!」
「後でいい」
分厚い胸を押してなんとか唇の間に隙間を作り、訴えてみたけど即座に却下された。ちゅ、と軽く唇を吸われるだけじゃなく、だんだんと舌を絡める濃厚なキスに変わってきてるから、困る。
どんどん顔に熱が集まって、俺はすぐ茹でられたみたいになってしまった。
「……相変わらず慣れねーな」
キスで酸欠になって肩で息をしていたら、師匠が笑いながら言った。
確かにランドルムに来るまでの旅路も、ここに来てからも、師匠は頻繁にキスを仕掛けてきた。その度に俺はなんとか応えようと頑張るんだけど、全然上手くならないんだ。
性器を擦ったりそういう戯れはいっぱいしてくれるんだけど、俺が慣れてないせいか師匠はそれ以上先に進まない。一応、男同士でどういう性行為をするのかは……知ってるんだけど。
一度、最後までしないのかって聞いたことはある。でも「旅の途中で無体なことはしない」ってはぐらかされてしまった。その……師匠のソレは大きいから、いきなり身体を繋げたりとかは無理だろうって。
俺、こっち方面にも絶望的なほど才能がないのかもしれない。あれから精霊術はそれなりにできるようになったのに、今度はこれで落ちこぼれってどういうこと!?
「ほら、教えてやるから。口、開けてみな」
「ん、……、……」
「そーそ。で、息は鼻でする。……舌は、こっち。舐めて擦るの、好きだろ?」
こういうときの師匠の囁き声は、低くて色っぽくて、ゾクゾクする。
俺は言われるまま口を開けて、舌を差し出すしかなかった。そうすれば気持ち良くしてもらえるって、もう嫌というほど教え込まれているからだ。
「んっ、ふ、……ぁ、ふっ……」
「ふ、……上手、上手……」
必死になって舌を差し出していたら、師匠がそれを舐めて絡め取る。チュッと吸われたらそれだけで身体の力が抜けてしまい、師匠に寄りかかってしまった。
褒めて貰うのが嬉しくて、こっちからも懸命に舌を動かしてみる。そうしたらグッと師匠の手に力が籠もって腰を引き寄せられた。
師匠の膝に跨がっていたのに、いつの間にか服越しに熱が触れあっている。大きな手に尻を掴まれて、少し揺らされた。それだけでゴリゴリと硬くなった股間同士が擦れて気持ち良くなってしまう。師匠の吐息もわずかに乱れていた。
「は、……こっちは慣れてきたな」
下から押し上げるみたいにして、師匠の大きな膨らみが俺の股間を刺激した。まるで愛撫みたいに擦りながら、煽るようなキスを何度もしてくるから、快楽に弱い俺はすぐにぐずぐずにされてしまうんだ。
「師匠、……んっ、ぁ……あっ」
いつの間か襟元を乱されていて、師匠の舌が首筋を這っていた。
服を乱されるのもいつも俺だけで、師匠はほとんど露出しないまま俺の下肢だけがむき出しにされる。このままイッて下着を汚したいのかと言われたら違うんだけど!
こらえ性のない俺の性器がすぐにイッてしまうからなのはわかってるけど……すごく悔しい。
「……ほら、イけ」
「――ッ!!」
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、溺愛と溺愛の物語。
幼馴染み組もなんかしてます。
※諸事情により、再掲します。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
姉の婚約者の心を読んだら俺への愛で溢れてました
天埜鳩愛
BL
魔法学校の卒業を控えたユーディアは、親友で姉の婚約者であるエドゥアルドとの関係がある日を境に疎遠になったことに悩んでいた。
そんな折、我儘な姉から、魔法を使ってそっけないエドゥアルドの心を読み、卒業の舞踏会に自分を誘うように仕向けろと命令される。
はじめは気が進まなかったユーディアだが、エドゥアルドの心を読めばなぜ距離をとられたのか理由がわかると思いなおして……。
優秀だけど不器用な、両片思いの二人と魔法が織りなすモダキュン物語。
「許されざる恋BLアンソロジー 」収録作品。
長年仮番として務めてきましたが、王子は正式な番を娶るそうです
けふ
BL
王都を守る巨大結界は、王族の魔力によって維持されている。
第二王子アデルの傍らには、常に一人の騎士がいた。
近衛騎士レオン。
彼は長年、王子の「仮番」として特別な任務を担っている。
しかし王子は、他国の王女との正式な番契約が決まってしまった。
仮番の役目は、そこで終わるはずだった。
だが結界塔で行われる儀式の中で、
二人の関係は次第に変わり始める。
王族と騎士。
主と臣下。
越えてはならない境界を前にしても、
王子は騎士の手を取る。
「共に立て」
※オメガバースではありません
※ふんわり読んでください
※なんでも許せる方向け
※イラストはChatGPTさん
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中