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四話-03
しおりを挟む「そよご」
「う、うん……?」
「オレどうしたらいい?」
「……と、とりあえず裾を直してお尻をしまおうか。可愛いのも見えているし」
布団の上で、冬青がオレの着物の裾を直してくれる。そのままふわっと抱き上げられて、膝の上で横抱きにされた。はあ、と大きなため息をついて冬青が頭を橫に振る。
「当初の目的を忘れるところだった。……ハルの母君のことを話したのは、眷族の説明をするためだ。クズノハは少し特殊だったが、本来は一人の退魔師に妖魔も一人、それが契約の大前提だ。そうして眷族となると、家族も同様に扱われる。――順序が逆になってしまってすまない、ハル。オレの家族になってくれるか?」
家族。
それは、かあさまみたいな存在ってことだろうか。
ついさっきそうみたいだと思ったことが、希望通りに降ってきてびっくりしてしまった。口を開けたままぼうっと冬青を見上げていたら、またちゅっと口を吸われた。
「返事が聞けるまで口吸いしていようか」
「ん、ぁ、……だめ、しゃべ…れ…ない……んっ、ぁふっ……」
ちゅ、ちゅ、と唇を食まれてから大きな舌がオレの口に入り込んでくる。ぬぐ、ぬぐ、と上顎を舐めたり舌を追いかけてきたりして、飲み込めない唾液までじゅうっと吸われてしまった。
一緒にオレの身体の力も吸われてしまったのか、脱力してしまってぐったりと冬青の腕に凭れた。
「家族になろう、ハル」
「……う、ん」
「ハル?」
「なる」
パッと目を輝かせた冬青は、いそいそとオレの下腹部に手を伸ばして着物を緩めていった。さっき直したばかりの着物が、ただの布になってしまう。無意識に尻尾を抱えていたら、『うぐっ』と変な声を発した冬青にそれを離すようお願いされた。オレのお腹に直接触らないといけないらしい。
「ハル。本当は先程の『お披露目』でここにオレの子種を注がなければいけなかった。それが本来の下準備だ」
「……ぅ、んっ……」
すり、すり、と平べったい腹を大きな手で撫でられて、くすぐったくて身を捩る。
「それと反応して本来の印は結ばれる。……だから今日は、仮ということにしておこう。入れるよ、ハル。ちょっと熱いけどすぐ終わるから」
「え、……あつ……?」
冬青の指がオレの下腹部でぴたりと止まった。
尻尾につけられた輪が何か呼応するかのようにリーン、と音を響かせる。冬青の太い指がオレの腹の上で光の文字のようなものを作りだした。それはきゅっと小さくなって皮膚に埋め込まれていく。
ずくん、ずくん、と文字が降りてくる度に鈍い重みがそこにかかった。
熱い、というのか。
重い、と言えばいいのか。
よく判らない何かか、オレの身体に刻まれていった。
どうやら最後のひと文字らしい光が、スウッと吸い込まれていく。
その瞬間、オレは『かふっ』と小さく声を上げて身体を跳ねさせた。
ガクガクと身体が震えて、尻尾が倍に膨らんだような感じがする。ぐるぐるとお腹の中に熱の塊があって、腹を突き破って飛び出してきそうだった。くるしい。つらくて、熱い。
「そよご、……へんっ、おなかっ……あつぃ、あついっ……」
「印が馴染んでいるところだ。もう少しだから」
ぎゅっと抱き締められて、また口を吸われる。
くちゅ、にゅる、かぷかぷ、と優しい仕草でオレの唇を貪ってきた。
舌が擦り合わされると腰にじんっとしびれみたいなものが走る。唇を甘噛みされると身体がブルブルと無意識に震えてしまう。そして太い舌が上顎を擦って喉の入口までいっぱいにしていくと、じわっと股間が熱くて堪らなくなった。
お腹が空っぽでなかったら、漏らしてしまってたかもしれない。さっき風呂場で執拗に出すよう言われたのはこのためか。
きもちいい。冬青のするこれは、とても気持ちが良いことだ。
腹の熱さも忘れて口吸いに夢中になっていたら、身体からガクンと力が抜けた。つうっとオレの唇と冬青のそれに銀糸が繋がり、ふつりと切れる。瞼が重くて目を開けていられなかった。
「眷族契約が終わった。……ハル、これからはずっと一緒だな」
そのまま布団に横たえられ、オレの意識は泥のような闇の中に落ちていった。
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