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五話-02
しおりを挟むはじめは『股に挟む代わりに口でする』とオレが言ったからだ。口でなら慣れているし、すべて含まなくても愛撫するやりかたはある。それを冬青に言ったら、凄い形相で肩を掴まれてしまった。
慣れているのは何故か。
妖魔の里で何を強要されてきたのか。
身体を執拗に触られたり裸にされたりすることはあったのか。
どれも簡単な問いだったので、すぐに答えた。
オレは妖魔の里での慰み者……共有する『捌け口』だったので、里の妖魔で俺の口に射精していない雄はいなかった。
裸にされることはあったが、触られたりはなかった。せいぜい貧相な身体を嗤われたり、キンキンに冷えた井戸水をぶっかけられたりしてガタガタ震えるのを見物されたくらいか。
彼らはオレの口は使ったが、オレの下半身には全く意識を向けていなかった。そこには雄の印がぶら下がっているので、見たくもなかったのだろう。必要なのは、口だ。容姿は残念でも、目と髪色だけはそこそこ価値があると言われていたから、それに突っ込むのはイヤじゃなかったんだろう。
そして苦痛に歪む顔もなかなかそそると舌なめずりしながら言われたこともある。だから極力、無表情で過ごすしかなかった。
興に乗ると鬼達は抑えが効かなくなって、オレを一晩離さず精液まみれにして去って行くからだ。朝方冷え切った納屋の中で、乾いた白濁をこびり付かせて気を失っていると、ユキが冷たい井戸水をぶちまけてきて目が覚める。
あれが一番最悪な朝だった。身体も上手く動かないし顎は外れそうに疲れているのに、そういう日の労働は一際きついものが与えられるからだ。ユキは普段オレに無関心だが、あの時だけは憎悪の目でオレを睨んだ。
冬青は無言のままそれを聞いて、フウ、とため息をついていた。
オレの身体が思ったよりもさらに汚れていて失望したのだろうか。ああそういえばイブキという人間から『鬼達の臭いがこびりついている』と言われた気がする。やはり、あれは好ましくないんだろう。
里にいる時、オレはうす汚い半妖と蔑まれていたから、いくら汚されても構わないと思っていた。もう落ちるところまで落ちたなら、底で這いつくばるだけだからだ。
でもここへ来て、冬青やきぬに大事にされて、少し甘えてしまった。
解きほぐすように慈しまれて優しくされてしまったら、汚れるのが怖くなった。過去のことでも、話を聞いたら汚らわしいと彼らは感じるかもしれない。
自分の大事にしてきたものが無価値の石ころだと知ったら、冬青は怒るだろうか、悲しむだろうか。それとも、急に無関心になってオレを捨てるんだろうか。
こんな数日で慣れてしまったあたたかい腕を今更取り上げられたら、どうなってしまうんだろう。
ああ、やっぱり早いところ死んでおけばよかった。少なくともこんな絶望的な気持ちにならずに済んだだろう。
あるはずのないものを得たと勘違いした、罰が下ったのだ。
じわ、と目の奥が熱くなって唇が震えた。
「……辛かったな」
ぎゅっと抱き締められて、零れそうになっていた涙が引っ込んだ。汚いと、思わないんだろうか?冬青はいつも以上の力でしっかりと抱き締めてくる。
ちゅ、ちゅ、と口を吸われて甘やかすみたいに唇を食まれた。
それが好きで、前に一度同じように返したら冬青も喜んだ。オレがこれを好きだと判ると、冬青は執拗にくり返しくり返し、仕掛けてくる。
オレの身体に馴染むまで教え込み、オレをとろっとろに解かしてしまった。まだここにいて良いのだと判って、安堵で目眩がした。
「鬼共を血祭りに上げたら、真っ先にハルの前に首を並べてやろう」
「……そよご?」
あまりに低い呟きでよく聞こえなかった。
冬青の腕の中、くったり脱力してとろんとしてしまったオレは、口吸いで赤面して乱れた息を継ぐだけだ。冬青はそんなオレを見て破顔すると、ちゅ、ちゅ、とまた優しい口付けをしてオレの全身を撫でまわした。
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