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一章
再会の魔王と勇者・3
しおりを挟む今までの生ではかなり我慢に我慢を重ねてきたので、もう100回目ともなれば図々しくなってやると決めていた。
権力を使ってルカを呼び寄せるのも簡単だ。だって魔王だぞ。
……いちいちそれが『我儘』だとか『権力をかさにきている』などと思う時点で、まったく傍若無人が板についていないのだが、誰もツッコミはいれてくれない。
わがままを言ってやるぞ!と意気込んでいる魔王が非常に可愛らしくて実は陰で愛でられているというのも、誰も言わなかった。
「ルカ、世話を頼まれてくれるか」
「……私に人間の子を育てろと?」
こくり、と魔王が真顔で頷くとルカは途端に嫌そうな顔をした。
おいおい魔王の前だぞ、正直かよ。
魔王はルカのこういう所を非常に好ましく思っている。
ルカは魔族ではポピュラーな銀髪に金の瞳を持った、美形の青年だ。
これがまた唸るほどに顔がいい。パーツが整っているだけでなく、一級品をより集めて調和させ、美しさをランクアップさせたような美形だった。
なにを言っているのかよく判らないと思うが、とにかく魔王にとっての一番の美形は今も昔もこのルカだ。見ているだけで目の保養である。
ただ魔王の好みなのかというとそうではなく、魔族でも人間の間でも通用する美しさがあった。
そして性格は毒舌、しかし素直で誠実な男だ。
どの生でも変わらず魔王に接してくれたので、恐らくこのルカだけは何度死に戻っても変わらないのだろうと思っている。
「出来るだろう?」
「……やれってことですね」
いつの間にか、俯くだけだった幼い勇者が顔を上げていた。オドオドした若草色の瞳がこちらを見上げている。
これがあの、魔王を組み伏せ凌辱する裏切り者になるのかと思うと、にわかには信じ難いものがあるが。
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