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2.『イケメン黒崎さんはグルーミングも上手い』

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「皿に並べてみたけど、本当にこの量を一度に食べられる? 半分冷蔵庫に入れておこうか?」
「らいじょぶ。よゆー」

 杏仁プリンのスプーンを咥えたまま、オレはニッ笑いながら答えた。ちなみにパーカーは洗濯乾燥中なので黒いシャツとデニムのみ、部屋の中が暖房であったかくて助かった。床暖いいな。

 ダイニングテーブルの上には白い大きな皿が置かれ、その上には所狭しとコンビニスイーツが並べられている。

 肉料理でも乗せてそうな地紋のある白い皿、高いんだろーなと思いながらそこでミルクレープを潰した。
 めしゃ、っと潰れたクレープをバクバク大口開けて平らげていく。

 向こうでコーヒーのカップを手にしたまま固まっている黒崎さんが、面白い顔してて笑ってしまった。

「黒崎さん、凄い顔してる」
「えっ、どんな顔してたかな」
「甘味ってこんなに食べられるもんなんだ、みたいな」
「う、うん……」
「腹壊さないのかなとか、腹の許容量どうなってるのかな、とか」
「そうだね」
「あと純粋に何カロリー? とか?」
「それも確かに思うけど、それ以上にリリは晩ご飯を食べられなくなるだろうねと思って見てたよ」
「オレ、これが晩メシだもん」
「それはちょっと……偏りすぎているかな」

 眉を下げて困ったように笑う、その顔クセなのかな。
 凄く整った顔してるからスンッてしてたら本気で威圧感あるヤクザの若頭とかに見えそう。

 黒崎さんは掘りが深めで鼻が高くて、眉はキリッとしてるし唇は厚め。濃い顔なのに柔和な表情と穏やかな口調のせいであんまりこっちの警戒心が働かない感じだ。

 これは、沼だなと結論付ける。たぶんきっと、この人は凄くモテるだろう。

 さっきのケーキにしたって、プレゼントにこんな一流のモノ持ってこられたら甘味好きならコロッと落ちる。何があったのか知らないけど、その相手めちゃくちゃ損したよ。

 コレはオレが貰っちゃったからね。

「うっま~……」

 パティスリーの紙箱に入ってたのはシンプルな苺ショートだった。

 でもこれが一番、店のクリームとかスポンジとかスタンダードなものが味わえる。
 捻ってない分、良いか悪いかが出やすいんだよね。でも流石は有名パティシエのケーキ、クリームの重さも丁度良くて甘さは苺の酸味と合わせてあるし。

 スポンジは少しざっくりめで、クリームのしっとり加減を吸い取って上手くマッチしていた。どこをとっても美味しい、どこから食べても美味しい苺ショートだった。
 今度、叶うならモンブランとかも食べてみたいな。あれは店でかなり個性が出るから。

「し、幸せ。泣きそう」
「そこまで……?」
「オレは食い道楽だからいいのーこれが生き甲斐なのー」

 ジタバタしつつチラッと視線を落して、ケーキを少し残したままコーヒーカップを手に取る。

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