15 / 76
14話 唯一の弱点
しおりを挟む
「今日の慰問先は、王都の孤児院だったか?」
国王ダビドが声をかけた相手は、栗色の髪を美しく巻いた王妹ブロッサだった。
その特徴的な紫色の瞳は、娘のエバにも受け継がれている。
豪奢な馬車へ乗り込もうとしていたブロッサは、振り返りふわりと微笑んだ。
「ええ、そうよ。たくさんお菓子を持っていくわ」
「いつも頼ってばかりで、すまんな」
「いいのよ、お兄さま。神様の御使いの血が流れる一族として、民を慰めるのは当然の努めですから」
娘のラモナを事故で亡くして以来、王妃ペネロペはずっと床に伏せっている。
その代わりに、女性王族として表舞台に立ってくれるブロッサの存在は、ダビドにとってありがたいものだった。
特に孤児院の慰問などは、厳粛な雰囲気のダビドが赴いても、子どもたちには喜ばれない。
どこか母性を彷彿とさせるブロッサのほうが、おおむね反応がいいのだ。
「ブロッサには、アラーニャ公爵夫人としての仕事もあるだろう? 多忙ではないか?」
「オラシオさまが快く、公務を優先しなさいと言ってくださるの。王族が最も大切にするべきは民だと、分かっていらっしゃるのよ。さすがだと思わない?」
ブロッサは自慢の夫オラシオについて語るとき、いまだ乙女のように頬を赤く染める。
――初めてブロッサがオラシオに出会ったのは、16歳のデビュタントの日だった。
襟元で結われた深みある緑色の髪、心奥を見透かす金色の瞳、それらすべてが芸術品のように、瑞々しい18歳のオラシオを飾っていた。
そんなオラシオの周りには、美貌に引き寄せられるように、大勢の令嬢たちが輪をなしている。
彼女らに対し、そつなく振る舞うオラシオの色男ぶりに、ブロッサの心は鷲掴みされた。
当時すでに、婚約者のいたオラシオだったが、ブロッサがそこへ強引に横やりを入れる。
王家と縁を結ぶ方が、アラーニャ公爵家にとっても、利があると判断されたのだろう。
政略だったオラシオたちの婚約は、ブロッサの申し出の後にすぐ解消された。
そしてオラシオは、何事もなかったかのように、ブロッサの隣へと立ったのだ。
どうやらブロッサが好いているのは、オラシオの顔だけではないらしい。
オラシオの良さが分からないと、トマスに零した過去のあるダビドは、いささか気まずい思いをした。
「そうか、それならばいいが」
「私と違ってお兄さまは、とんだ外れくじを引いちゃったわね」
「どういう意味だ?」
「ペネロペさんとは政略結婚だったから、選択の余地もなかったんでしょう? 双子を産んだせいで子宮が傷つき、次の子を望めない体になるし、その双子の内の一人は、早々に神様に連れ去られてしまうし」
「ブロッサ! それ以上は……っ」
「あら、そろそろ時間だわ。お兄さま、行ってまいります」
軽やかに手を振ると、ブロッサは馬車に乗り去っていった。
残されたダビドは、震える拳を握り込み、口惜しさをこらえるしかなかった。
(神様の御使いの一族であることを誇りに思うあまり、ブロッサはそれ以外を見下し過ぎる)
ペネロペは王妃なのだから、名前には敬称をつけろと言っても、相変わらず「さん付け」なのがその証だ。
ダビドはブロッサの言葉を思い出し、奥歯をぎりっと噛みしめた。
(子を産めない体になったのも、ラモナが事故死したのも、ペネロペのせいではない。むしろペネロペは、そのたびに心身を病んで……それでも私の隣にいてくれる、大切な王妃だ)
始まりは政略ではあったが、ダビドの心の全てはペネロペにある。
側妃を迎えるようにと、臣下に進言されても、決して頷かなかった。
そんな愛して止まないペネロペを、ブロッサに外れくじと言われ、はらわたが煮えくり返らないはずがない。
(しかしブロッサがいなければ、公務が回らないのも事実。ここは、私が我慢しなければ――)
沈痛な顔つきを、俯いて隠すダビドへ、近づいてきた者がいた。
「国王陛下、そろそろ執務室へお戻りになりませんと――」
「っ……トマス、もうそんなに時間が経ったのか」
「おい、なんて顔をしている」
ダビドの肩を抱き、トマスは護衛たちへ「少し離れてくれるか」と、お願いする。
護衛たちもダビドを慮り、トマスの言葉に素直に従った。
「さあ、これで護衛たちには聞こえない。何があったんだ? 少し休憩してくると仕事を抜けたのに、ひどく苦し気にして――」
「そんなに、か?」
「そんなに、だ。そのまま執務室へ戻るのは駄目だ。すぐに主治医を呼ばれるぞ。体調が悪いわけではないんだろう?」
「……ペネロペを、悪く言われて……」
「ああ、それはつらかったな。ダビドの唯一の弱点だ」
トマスがゆっくりとダビドの背をさする。
王族専用の馬車止まり前で会う人物など、限られている。
ダビドを手ひどく傷つけたのは、ブロッサだろうと当たりを付けた。
(兄妹だと言うのに、ふたりの性格は正反対だ。繊細で人の心の機微をよく読むダビドと、傲慢で自己中心的なアラーニャ公爵夫人は、昔から反りが合わなかった)
本来ならば、もっと距離を置いて付き合えばいいのだが、ブロッサが公務を担っている以上、そうもいかないのだろう。
ダビドがどれほどペネロペを愛しているのか、知っているトマスは同情する。
「ほら、深呼吸をして。吐く息と一緒に、嫌なことを頭から追い出すんだ」
トマスに言われ、ダビドは懸命に息を吸ったり吐いたりした。
顔色がだいぶん良くなったのを確認すると、ダビドを執務室へと促す。
これ以上遅くなれば、トマス以外の者が呼びに来てしまう。
ダビドも弱っている姿を、他人に見られたくはないだろう。
執務室まで短い距離ではあるが、なんとか心を平常に戻さなくてはならない。
トマスはあえて、全く関係のない話を振った。
「ファビオラが立ち上げる商会で、何を売ろうとしていると思う? 私もまさかと思ったんだが、なんと我が領内で流通している――」
そんなトマスの気配りを、ダビドは心から感謝して受け取った。
◇◆◇◆
ファビオラたち一行は、エルゲラ辺境伯領を発ち国境を越えると、ヴィクトル辺境伯へ挨拶をしに向かった。
先触れの後に屋敷を訪ね、「少々お待ちください」と通された応接室で、ファビオラは調度品へチラリと視線を投げる。
見事なティーセットが置かれた一枚板のテーブルも、ファビオラの体を受け止める優雅なソファのひじ掛けも、磨き抜かれて飴色をした往年の木製品だった。
(これならモニカの言う通り、人工薪を評価してくれるかもしれないわ)
ここにいるのはファビオラだけで、ルビーやモニカは別室で待機していた。
逸る心臓を押さえつつ、出された香り高いお茶で気持ちを落ち着ける。
そうしていると、ゆっくりと開かれた扉の先に、待ち人の姿が現れる。
ヴィクトル辺境伯イェルノの容貌は、ファビオラの想像からかけ離れていた。
亜麻色の髪はざんばらに切られ、あごには無精ひげも生えている。
ただ、ひたりと合わされた灰色の瞳には、あふれんばかりの知性がうかがえた。
さっと立ち上がり、ファビオラは淑女の礼をする。
「初めてお目にかかります。カーサス王国グラナド侯爵家のファビオラと申します」
すでに予知夢で履修しているため、ファビオラの所作は美しかった。
しかし、それに対してイェルノは手を振る。
「そんな仰々しいのは止めよう。ここは皇城ではないのだから」
昔、エルゲラ辺境伯領にやってきたアダンへ、ファビオラは同じような台詞を言った。
それを思い出して、ふっと頬が緩む。
「そうそう、そうやって笑っていた方がいい。せっかく国の端っこにいるんだ、もっと気楽にしてくれ」
イェルノも口角を持ち上げて笑った。
皇弟だからと緊張してたファビオラだったが、肩から力が抜ける。
どさりとイェルノがソファへ身を預けたのを合図に、ファビオラも腰を下ろした。
「わざわざ、お礼を言いに来たんだって? 私の後ろ盾が、どれほど通用するかも分からないのに、ちょっと気が早くないかい?」
ファビオラに話しかけながら、かくしゃくとした執事の差し出すティーカップを受け取り、イェルノがお茶の香りを楽しむ。
その仕種は洗練されており、伸ばしっぱなしにされた髭や、乱暴にソファへ座る姿とは、はっきりとした差異を感じた。
(兄である皇帝と争いたくなくて、放蕩者を装っているって、叔母さまは言っていたわ。だらしない外見は作り物で、隠された内面はきっと――)
じっと観察するファビオラの碧眼を、イェルノは愉快そうに眺めていた。
国王ダビドが声をかけた相手は、栗色の髪を美しく巻いた王妹ブロッサだった。
その特徴的な紫色の瞳は、娘のエバにも受け継がれている。
豪奢な馬車へ乗り込もうとしていたブロッサは、振り返りふわりと微笑んだ。
「ええ、そうよ。たくさんお菓子を持っていくわ」
「いつも頼ってばかりで、すまんな」
「いいのよ、お兄さま。神様の御使いの血が流れる一族として、民を慰めるのは当然の努めですから」
娘のラモナを事故で亡くして以来、王妃ペネロペはずっと床に伏せっている。
その代わりに、女性王族として表舞台に立ってくれるブロッサの存在は、ダビドにとってありがたいものだった。
特に孤児院の慰問などは、厳粛な雰囲気のダビドが赴いても、子どもたちには喜ばれない。
どこか母性を彷彿とさせるブロッサのほうが、おおむね反応がいいのだ。
「ブロッサには、アラーニャ公爵夫人としての仕事もあるだろう? 多忙ではないか?」
「オラシオさまが快く、公務を優先しなさいと言ってくださるの。王族が最も大切にするべきは民だと、分かっていらっしゃるのよ。さすがだと思わない?」
ブロッサは自慢の夫オラシオについて語るとき、いまだ乙女のように頬を赤く染める。
――初めてブロッサがオラシオに出会ったのは、16歳のデビュタントの日だった。
襟元で結われた深みある緑色の髪、心奥を見透かす金色の瞳、それらすべてが芸術品のように、瑞々しい18歳のオラシオを飾っていた。
そんなオラシオの周りには、美貌に引き寄せられるように、大勢の令嬢たちが輪をなしている。
彼女らに対し、そつなく振る舞うオラシオの色男ぶりに、ブロッサの心は鷲掴みされた。
当時すでに、婚約者のいたオラシオだったが、ブロッサがそこへ強引に横やりを入れる。
王家と縁を結ぶ方が、アラーニャ公爵家にとっても、利があると判断されたのだろう。
政略だったオラシオたちの婚約は、ブロッサの申し出の後にすぐ解消された。
そしてオラシオは、何事もなかったかのように、ブロッサの隣へと立ったのだ。
どうやらブロッサが好いているのは、オラシオの顔だけではないらしい。
オラシオの良さが分からないと、トマスに零した過去のあるダビドは、いささか気まずい思いをした。
「そうか、それならばいいが」
「私と違ってお兄さまは、とんだ外れくじを引いちゃったわね」
「どういう意味だ?」
「ペネロペさんとは政略結婚だったから、選択の余地もなかったんでしょう? 双子を産んだせいで子宮が傷つき、次の子を望めない体になるし、その双子の内の一人は、早々に神様に連れ去られてしまうし」
「ブロッサ! それ以上は……っ」
「あら、そろそろ時間だわ。お兄さま、行ってまいります」
軽やかに手を振ると、ブロッサは馬車に乗り去っていった。
残されたダビドは、震える拳を握り込み、口惜しさをこらえるしかなかった。
(神様の御使いの一族であることを誇りに思うあまり、ブロッサはそれ以外を見下し過ぎる)
ペネロペは王妃なのだから、名前には敬称をつけろと言っても、相変わらず「さん付け」なのがその証だ。
ダビドはブロッサの言葉を思い出し、奥歯をぎりっと噛みしめた。
(子を産めない体になったのも、ラモナが事故死したのも、ペネロペのせいではない。むしろペネロペは、そのたびに心身を病んで……それでも私の隣にいてくれる、大切な王妃だ)
始まりは政略ではあったが、ダビドの心の全てはペネロペにある。
側妃を迎えるようにと、臣下に進言されても、決して頷かなかった。
そんな愛して止まないペネロペを、ブロッサに外れくじと言われ、はらわたが煮えくり返らないはずがない。
(しかしブロッサがいなければ、公務が回らないのも事実。ここは、私が我慢しなければ――)
沈痛な顔つきを、俯いて隠すダビドへ、近づいてきた者がいた。
「国王陛下、そろそろ執務室へお戻りになりませんと――」
「っ……トマス、もうそんなに時間が経ったのか」
「おい、なんて顔をしている」
ダビドの肩を抱き、トマスは護衛たちへ「少し離れてくれるか」と、お願いする。
護衛たちもダビドを慮り、トマスの言葉に素直に従った。
「さあ、これで護衛たちには聞こえない。何があったんだ? 少し休憩してくると仕事を抜けたのに、ひどく苦し気にして――」
「そんなに、か?」
「そんなに、だ。そのまま執務室へ戻るのは駄目だ。すぐに主治医を呼ばれるぞ。体調が悪いわけではないんだろう?」
「……ペネロペを、悪く言われて……」
「ああ、それはつらかったな。ダビドの唯一の弱点だ」
トマスがゆっくりとダビドの背をさする。
王族専用の馬車止まり前で会う人物など、限られている。
ダビドを手ひどく傷つけたのは、ブロッサだろうと当たりを付けた。
(兄妹だと言うのに、ふたりの性格は正反対だ。繊細で人の心の機微をよく読むダビドと、傲慢で自己中心的なアラーニャ公爵夫人は、昔から反りが合わなかった)
本来ならば、もっと距離を置いて付き合えばいいのだが、ブロッサが公務を担っている以上、そうもいかないのだろう。
ダビドがどれほどペネロペを愛しているのか、知っているトマスは同情する。
「ほら、深呼吸をして。吐く息と一緒に、嫌なことを頭から追い出すんだ」
トマスに言われ、ダビドは懸命に息を吸ったり吐いたりした。
顔色がだいぶん良くなったのを確認すると、ダビドを執務室へと促す。
これ以上遅くなれば、トマス以外の者が呼びに来てしまう。
ダビドも弱っている姿を、他人に見られたくはないだろう。
執務室まで短い距離ではあるが、なんとか心を平常に戻さなくてはならない。
トマスはあえて、全く関係のない話を振った。
「ファビオラが立ち上げる商会で、何を売ろうとしていると思う? 私もまさかと思ったんだが、なんと我が領内で流通している――」
そんなトマスの気配りを、ダビドは心から感謝して受け取った。
◇◆◇◆
ファビオラたち一行は、エルゲラ辺境伯領を発ち国境を越えると、ヴィクトル辺境伯へ挨拶をしに向かった。
先触れの後に屋敷を訪ね、「少々お待ちください」と通された応接室で、ファビオラは調度品へチラリと視線を投げる。
見事なティーセットが置かれた一枚板のテーブルも、ファビオラの体を受け止める優雅なソファのひじ掛けも、磨き抜かれて飴色をした往年の木製品だった。
(これならモニカの言う通り、人工薪を評価してくれるかもしれないわ)
ここにいるのはファビオラだけで、ルビーやモニカは別室で待機していた。
逸る心臓を押さえつつ、出された香り高いお茶で気持ちを落ち着ける。
そうしていると、ゆっくりと開かれた扉の先に、待ち人の姿が現れる。
ヴィクトル辺境伯イェルノの容貌は、ファビオラの想像からかけ離れていた。
亜麻色の髪はざんばらに切られ、あごには無精ひげも生えている。
ただ、ひたりと合わされた灰色の瞳には、あふれんばかりの知性がうかがえた。
さっと立ち上がり、ファビオラは淑女の礼をする。
「初めてお目にかかります。カーサス王国グラナド侯爵家のファビオラと申します」
すでに予知夢で履修しているため、ファビオラの所作は美しかった。
しかし、それに対してイェルノは手を振る。
「そんな仰々しいのは止めよう。ここは皇城ではないのだから」
昔、エルゲラ辺境伯領にやってきたアダンへ、ファビオラは同じような台詞を言った。
それを思い出して、ふっと頬が緩む。
「そうそう、そうやって笑っていた方がいい。せっかく国の端っこにいるんだ、もっと気楽にしてくれ」
イェルノも口角を持ち上げて笑った。
皇弟だからと緊張してたファビオラだったが、肩から力が抜ける。
どさりとイェルノがソファへ身を預けたのを合図に、ファビオラも腰を下ろした。
「わざわざ、お礼を言いに来たんだって? 私の後ろ盾が、どれほど通用するかも分からないのに、ちょっと気が早くないかい?」
ファビオラに話しかけながら、かくしゃくとした執事の差し出すティーカップを受け取り、イェルノがお茶の香りを楽しむ。
その仕種は洗練されており、伸ばしっぱなしにされた髭や、乱暴にソファへ座る姿とは、はっきりとした差異を感じた。
(兄である皇帝と争いたくなくて、放蕩者を装っているって、叔母さまは言っていたわ。だらしない外見は作り物で、隠された内面はきっと――)
じっと観察するファビオラの碧眼を、イェルノは愉快そうに眺めていた。
42
あなたにおすすめの小説
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。
みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。
ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。
失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。
ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。
こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。
二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。
ソウシソウアイ?
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
政略結婚をすることになったオデット。
その相手は初恋の人であり、同時にオデットの姉アンネリースに想いを寄せる騎士団の上司、ランヴァルド・アーノルト伯爵。
拒否に拒否を重ねたが強制的に結婚が決まり、
諦めにも似た気持ちで嫁いだオデットだが……。
【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる
仙冬可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。
清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。
でも、違う見方をすれば合理的で革新的。
彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。
「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。
「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」
「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」
仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる