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8話 人魚のパイズリ

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 普通の犬だったなら、何度も降る雨のせいで、匂いなど追跡できなかっただろう。

 だが元コボルトの犬は、しっかりと足取りをキャッチしているのか、進行方向に迷いがない。



「お前は優秀だな。魔物のときの性質が、残っているんだろうな」

 

 たとえば、勇者は何も食べなくても平気だが、犬は違う。

 それでも勇者の手を煩わせることは、一度もなかった。

 自分の獲物は自分で狩り、どこからか水場も探し出してくる。

 今回の水場は山間にある大きな湖だったので、ついでとばかりに勇者は顔や髪や体を洗い、いつピンク色のスライムに会ってもいいよう身だしなみを整えた。



「不潔にしていると、女性に敬遠されるからな。デリヘル嬢に丹念に洗ってもらうために、わざと会う前は風呂を何日も我慢するやつがいるらしいが、あれは盛大な嫌がらせでしかないよな」



 がしがしと勇者が頭を洗う横で、犬もざぶざぶと犬かきを楽しんでいる。

 先ほどは大きな蟹を捕まえて、殻ごとバリバリ食べていた。

 そんなサバイバーな犬が突如、わんわん! と威嚇しだす。



「そんなに吠えるなんて、どうした?」



 ざばっと濡れた髪をかきあげ、勇者が顔を上げるとそこには――。

 美しい金髪の女性が、豊かな胸を隠そうともせず、ゆったりと水面に漂っていた。



「は~い、こんにちは~」



 チャラい挨拶の最後には、ハートマークがついてそうだ。

 勇者に向かって、気さくに手を振る美女は、その姿かたちからして魔物に違いない。

 この湖はかなり透明度が高く、人間に似た上半身から続く、魚の下半身がしっかり見えていた。



「人魚って、淡水系もいるのか。てっきり、海の生き物だとばかり思っていた」

「私のこと、知ってるんだ? だったら話は早いね~」



 すいっと優雅なヒレで泳いで、人魚は勇者へ近寄る。

 犬がそれを阻止しようとしたが、短い足での犬かきでは間に合わない。

 

「あなたの精液を、私に飲ませてちょうだい?」

「……魔物を辞めたいのか?」

「あはは、そんなわけないよ。むしろ逆~!」

「逆ぅ?」



 勇者は訳が分からず、眉根を寄せた。



「なんだ、知らないの~? 魔物にとって、勇者の血肉はご馳走なんだよ」

「おいおい、いきなり物騒だな!」

「そんじょそこらの下級な魔物がそれを摂取したら、秒で昇華されちゃうでしょうけど~」



 そこで人魚は、嘲りの視線をちらりと犬へ送る。

 犬の正体が元コボルトだと、分かっているのだろう。

 格の違いでマウントを取られた犬が、ばしゃばしゃと憤慨して水をかくが、やはり犬かきには威力がない。

 水に浮かぶ可愛いだけの犬を、人魚の侮蔑から護るため、勇者はそっと引き寄せた。



「俺の精液を飲んだら、人魚はどうなるんだ?」

「精液には、血肉よりも凝縮された聖力が含まれているの。つまり私はそれを吸収して、レベルアップしちゃうってわけ~」

「そんなはずないだろう? 聖力っていうのは、魔物をやっつける力だと聞いた」

「その情報、かなり古いよ~。すでに多くの魔物は、勇者の聖力をエネルギーに転換して、取り込む形態に進化してるんだから」



 犬を抱く勇者の腕へ、人魚は豊かな胸を押しつけてくる。



「いろいろ教えてあげたんだし、いいでしょ? 私そろそろ、中級から上級になりたいんだ~」

「上級の魔物か……興味があるな」



 このとき勇者の頭にあったのは、ピンク色のスライムの姿だった。



(あいつは、俺の精液を、何度も吸収していた。それでいて、犬のようにはならず、魔物であり続けた)



「人間って、パイズリが好きなんでしょ~? それをしてあげるから、ちょっと射精してみてよ」



 勇者の黙考を人魚が遮る。

 腕の中にいる犬は、高慢ちきな人魚へ、ずっと唸り声をあげていた。

 その頭を撫でて落ち着かせると、勇者は返答する。



「俺をイかせられたら、顔射してやるよ」

「やった~! これで、お姉さまたちに追いつけるわ!」



 こっちへ来て、と人魚は勇者の腕をつかむと、日当たりのよい岸へと誘導した。



「ここに腰かけてくれる? そしたら位置的にパイズリしやすいの」

「なんだか慣れているな」

「お姉さまたちが、ここで歴代の勇者から搾り取っているのを、見ていたのよ~。だから、やり方も知っているわ!」



 人魚は勇者のしなびたペニスを指でつまむと、ちゅるんとそれを口に含んだ。

 何度かレロレロと舌を這わせ、ある程度の硬さを作ると、自慢の巨乳に挟み込む。



「あとはおっぱいで、もみくちゃにしたらいいんでしょ?」

「滑りが良くなるように、唾をたらしてくれ」

「これくらい? もっと?」



 人魚が舌先から、透明な唾液をつつっと落とす。

 それは勇者の亀頭から、竿までトロトロと流れていった。

 視覚的にくるものがあり、勇者はごくりと喉を鳴らす。



「期待してちょうだい! お姉さまたちの技法を、全部つかってあげるから~」
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