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2章 異世界に美少女しかいない件
ちょっと強くなりすぎたかも。
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柔らかい風が木と木の間を吹き抜けて、切り株に座る俺の髪を優しく撫でた。
追いかけっこが始まってから、もう、六時間ほどたっただろうか?
森に来た時は、まだ、東から昇り始めたばかりだった太陽が、もう、真上まで来ている。
俺は、二匹から逃げ続け、今、やっと休憩時間になった。
なんか、もうね、限界を超えた気がする。クロノスに「そろそろ休憩だ!」って言われた時は、死の恐怖で保ってた身体中の力がスッと抜けて、俺、膝から崩れ落ちたからね。
……あの二人、マジやべえわ。この森の持ち主が可哀相なぐらい、地面を穴ボコだらけにしたからな。
「ところで、こんなことやって俺の能力が上がるのか?」
「当たり前だ。……お? 丁度いいな。おい、クロノス、ちょっと森の外に転移させてくれ。」
「ん? ……ああ。そういうことか。じゃあ、俺達は転移したらすぐに剣化しなきゃな。」
そう言って、クロノスは、青白い魔法陣を足元から展開させた。
「また、転移するのか? まあ、俺はお前達には逆らえないから付いていくしかないんだけど。」
「ま、とりあえず転移した先を見たらわかるさ。」
それを聞いた俺は、展開された魔法陣の上に乗った。
また、クロノスが何かを唱え、視界が真っ白になる。次の瞬間、俺達は、森の外――草が生い茂る草原に立っていた。
「なんでこんな所に連れてきたんだ? 特に何もな――」
俺が周りを見渡すと、そこには、大量のモンスターに襲われている少女がいた。
スラリと伸びた健康的な腕、風に吹かれ、サラサラと揺れる金色の髪。整った顔の輪郭。そして、大量のモンスターに襲われてなお、輝きを失わない、透き通ったその瞳。
俺の想像から出た二人と争っても、かなりいい勝負だろう。
いや、もしかしたら、あそこにいる少女の方が上かもしれない。
そんな少女が襲われているのを勿論、俺が見逃すなんてことは有り得ない。恩は打っといて損は無いからな。
俺は、クロノスとティアマトに向き直ると、
「よし! お前ら! あの少女を助けてやってくれ!」
だが、ティアマトとクロノスの二人は、小さく「フフッ」と笑ってから、自分でやれ、とでも言うふうに、無言で剣化した。
『さっきの、ユウトの呆然とした顔! 超面白かったんだが!』
『おお! やはり貴様もそう思うか! 実は私もかなり吹き出しそうになってたんだ! また見たいな! あの顔!』
……念話の声がダダ漏れしてるぞ、このくそドラゴン共めが……。
覚えとけよ……。神だろうがなんだろうが、俺がお前らを超えたら、倍返ししてやる……。
俺は心にそう誓ってから、二本の剣を拾い、少女の元へと駆け出した。
だけど、この数はちょっと多くないか?
一匹一匹が結構大きいし、俺がこの二本を持っていたとしても、キツい気がするんだが……。
ま、物は試しだ。敵全員倒しきれなくても、あの女の子、一人ぐらいなら、拾って逃げ出せるだろう。
しかし、結果は俺の予想に大きく反した。
しかも、いい方向に。
少女の周りにたかっていたモンスター達は一瞬で千切りキャベツのように切り刻まれ、無惨な姿になって朽ち果てた。
そのモンスター達の真ん中には、その血を浴びて、服を真っ赤に染めた少女だけが残っていた。
少女は少し呆然として俺を見つめてから、
「た、助けてくれてありがとうございます!」
ペコッとお辞儀をした。
俺もそれを聞いて、ハッと現実に帰ってくる。あまりの自分の力の強化に驚いていたのだ。
確かにあの追いかけっこは辛かったが、まさかここまで強くなるとは……。正直、嬉しい誤算だった。
「あ、えっと私の名前はソフィア=ノエルです。貴方は?」
「俺は如月 優斗です。……服汚しちゃって、すみません。」
俺は、ソフィアさんの服を見て申し訳なくなった。
守るためとはいえ、結構、高そうな服を汚してしまったのだ。
罪悪感の一つや二つは俺でも出てくる。
「い、いえ! こんなの全然大丈夫ですよ! それより、ユウトさんは強いんですね!」
「え? ああ。まあ。はい。でも、僕が強いというか、剣が強いというか……。」
ソフィアは、少し不思議そうな顔をしてから、可愛く笑って、
「つまり、強いんですね!」
「あ……。ま、まあ、それでいいです。はい。」
俺は、ソフィアさんの予想の斜め上をいく回答に少したじろぎながら、汚れてしまった服を見つめた。
こんなに高そうな服を魔物の血で汚してしまったのだ。
弁償しないと……。でも、そんな金無いしなぁ。
あ、でも、まだ、汚れたばかりの血ぐらいなら、この娘の家に行けば落とせるかな?
「美少女の一人歩きは危険だし、家まで送りましょうか?」
「え!? いいんですか!」
「いいですよ! 美少女だし俺も大歓迎!」
俺がそう言うと、ソフィアさんはパァっと顔を輝かせた。
……ぐぐぐ。今の表情を見て、一瞬胸がキュンとしてしまった……。か、可愛すぎるだろ……。
なんだこの生き物。人なのか? いや、もう可愛いからなんでもいいわ。可愛いは正義!
俺が、そんなことを考えながら、ソフィアさんをまじまじと見つめていると、
「そ、その、そんなに見つめられると恥ずかしいです……。」
ソフィアさんが俺から目を逸らし、恥ずかしそうに顔を赤くした。
『ズキューンッ!(←胸を打ち抜かれた擬音です)』
俺の中でそんな音が鳴り響いた。
……だめだ……。本当に可愛い。完全に胸を射止められた……。
お、俺の理性はちゃんと持つはずだよな……?
流石に今日、会ったばかりの人をいくら可愛くたって襲うような非常識なやつじゃない。……多分。
「ど、どうしたんです? なんか目が虚ろですよ?」
ハッと我に返る俺。
「い、いや、君のことを守れたのはいいけど……、君の貞操を守れないかもしれない……。」
「……え? それってつまり……」
はたまた、ハッとする俺。
「ぐぁぁぁぁぁ!? 何を言ってるんだ俺は!? すみません! 今のは聞かなかったことにしてください!」
「そ、それは無理だと思いますけど。……でも、そんなもの、もうすぐ無くなってしまうので、守っても意味無いですけどね……。」
ソフィアさんが悲しそうな寂しそうな顔で空を見上げた。
「え? どういうこと?」
俺は、言葉の意味を理解出来ず、首を傾げる。
すると、ソフィアさんは少し押し黙ってから、
「私、親にあと、1ヵ月丁度で、政略結婚させられるんです……。分かってた運命ですけど、近づいてくると、どうにも、心が落ち着かなくて……。」
「政略結婚……ね。ソフィアさんは嫌なんですか?」
「……まあ、愛のない結婚なんて、女の子は誰しも嫌ですよ。こんな貴族の暮らしなんていいから、普通に結婚して、普通に毎日を過ごして、普通に死んでいけたら、どんなに幸せだったか……。」
ソフィアさんが暗い顔で言った。
その横顔はそこはかとなく悲しそうで、俺の胸をギュッと締め付けた。
貴族。
俺は、それをただただ、遊び暮らすだけの市民の敵だと思っていた。でも、本物の貴族は違った。
優雅な暮らしなど、どうでもいいから、普通に暮らしたい。
いや、もしかしたら、ほとんどの貴族が、そう望んでいるのかもしれない。
家系という名の鎖に縛られない自由な暮らし。
今、この目の前に立つ少女は、それがどんなに幸せか、と言った。
それを聞いた俺は、安心させようと何か言おうとしたが、無理だった。
俺には、この貴族の少女の辛さがわからない。
相手の辛さが分からない者が、励ましの言葉をかけたところで、それは所詮、励ましにしかならない。
相手の心の底まで、伝わるような言葉はかけられないのだ。
そんな俺が咄嗟に言えたのは一言。
「……嫌なんだったら、我慢しないで逃げ出した方がいいですよ。」
苦し紛れの言葉だった。
でも、それしか、かけられる言葉が見つからなかった。
しかし、それに対するソフィアさんの反応は、想像以上のものだった。
ソフィアさんの頬を、太陽の輝きに反射して輝く、神秘的な液体がを伝っていた。
「あ、あれ? 私、泣いてる? 久しぶりに優しくしてもらえたからかなぁ……。」
ソフィアさんは、涙に顔を濡らしながら、寂しく笑った。
「……ありがとうございます。……なんか、ユウトさんのお陰で元気でました。」
「お、おお。そうですか。よかったよかった。じゃ、そろそろ行きましょうか。」
俺は、この雰囲気を紛らわそうと、空間転移を使おうとして、重要なことに気づいた。
……お、俺、空間転移のやり方わかんねえ……! よし! ここは!
『なあなあ、クロノス! 空間転移ってどうやるんだ?』
『ん? 空間転移は、とりあえず集中して、行きたい場所を思い浮かべて、なんかそれっぽいの唱えると出るぞ。やってみろ。』
ああ……。もうお前には聞かんわ。そんなので分かるわけねえだろ。アホか?
しかも、行きたい場所がわからなきゃダメなのか。
うーん。近くの街に一旦転移してから行くか。しょうがない。
「あのー、どこの街にあるんですか? ソフィアさんの家。」
「えっとですね。ダーマ王国の、アストラル地区なんですけど、分かります?」
……あそこ、地区に分かれてたんだな。いや、まあ、一つの王国って言うにはデカすぎるとは思ったけどさ。
「すみません。俺、ダーマ王国は分かるんですけど、アストラル地区がどこか分からないので、教えてもらえます?」
「そ、そうですか。えっとですね、ダーマ王国の門入って、すぐの所です。というか、門からある程度のところまでアストラル地区です。」
「門から入ってすぐか……。よしよし、あの辺だな。こっち来てください。」
俺が手招きをすると、ソフィアさんが不思議そうな顔をしながら近づいてきた。
「歩かないんですか?」
「あ、えっと、多分、空間転移ぐらいならできるので。」
「……え?」
何言ってんの? とでも、言いたげな表情をしているソフィアさんの顔を見た俺は、
「まあ、見た方が早いでしょうから、よーく見ててくださいね?」
俺は、(必要ないのかもしれないけど)クロノスを地面に突き刺して、とりあえず集中して、門の目の前の光景を思い浮かべ、なんかそれっぽいのを唱えた。
すると、地面に突き刺したクロノスから、少し小さな魔法陣が展開され、小さくピカっと光った。
俺の視界が真っ白になり、次の瞬間には、あの門の目の前にいた。
追いかけっこが始まってから、もう、六時間ほどたっただろうか?
森に来た時は、まだ、東から昇り始めたばかりだった太陽が、もう、真上まで来ている。
俺は、二匹から逃げ続け、今、やっと休憩時間になった。
なんか、もうね、限界を超えた気がする。クロノスに「そろそろ休憩だ!」って言われた時は、死の恐怖で保ってた身体中の力がスッと抜けて、俺、膝から崩れ落ちたからね。
……あの二人、マジやべえわ。この森の持ち主が可哀相なぐらい、地面を穴ボコだらけにしたからな。
「ところで、こんなことやって俺の能力が上がるのか?」
「当たり前だ。……お? 丁度いいな。おい、クロノス、ちょっと森の外に転移させてくれ。」
「ん? ……ああ。そういうことか。じゃあ、俺達は転移したらすぐに剣化しなきゃな。」
そう言って、クロノスは、青白い魔法陣を足元から展開させた。
「また、転移するのか? まあ、俺はお前達には逆らえないから付いていくしかないんだけど。」
「ま、とりあえず転移した先を見たらわかるさ。」
それを聞いた俺は、展開された魔法陣の上に乗った。
また、クロノスが何かを唱え、視界が真っ白になる。次の瞬間、俺達は、森の外――草が生い茂る草原に立っていた。
「なんでこんな所に連れてきたんだ? 特に何もな――」
俺が周りを見渡すと、そこには、大量のモンスターに襲われている少女がいた。
スラリと伸びた健康的な腕、風に吹かれ、サラサラと揺れる金色の髪。整った顔の輪郭。そして、大量のモンスターに襲われてなお、輝きを失わない、透き通ったその瞳。
俺の想像から出た二人と争っても、かなりいい勝負だろう。
いや、もしかしたら、あそこにいる少女の方が上かもしれない。
そんな少女が襲われているのを勿論、俺が見逃すなんてことは有り得ない。恩は打っといて損は無いからな。
俺は、クロノスとティアマトに向き直ると、
「よし! お前ら! あの少女を助けてやってくれ!」
だが、ティアマトとクロノスの二人は、小さく「フフッ」と笑ってから、自分でやれ、とでも言うふうに、無言で剣化した。
『さっきの、ユウトの呆然とした顔! 超面白かったんだが!』
『おお! やはり貴様もそう思うか! 実は私もかなり吹き出しそうになってたんだ! また見たいな! あの顔!』
……念話の声がダダ漏れしてるぞ、このくそドラゴン共めが……。
覚えとけよ……。神だろうがなんだろうが、俺がお前らを超えたら、倍返ししてやる……。
俺は心にそう誓ってから、二本の剣を拾い、少女の元へと駆け出した。
だけど、この数はちょっと多くないか?
一匹一匹が結構大きいし、俺がこの二本を持っていたとしても、キツい気がするんだが……。
ま、物は試しだ。敵全員倒しきれなくても、あの女の子、一人ぐらいなら、拾って逃げ出せるだろう。
しかし、結果は俺の予想に大きく反した。
しかも、いい方向に。
少女の周りにたかっていたモンスター達は一瞬で千切りキャベツのように切り刻まれ、無惨な姿になって朽ち果てた。
そのモンスター達の真ん中には、その血を浴びて、服を真っ赤に染めた少女だけが残っていた。
少女は少し呆然として俺を見つめてから、
「た、助けてくれてありがとうございます!」
ペコッとお辞儀をした。
俺もそれを聞いて、ハッと現実に帰ってくる。あまりの自分の力の強化に驚いていたのだ。
確かにあの追いかけっこは辛かったが、まさかここまで強くなるとは……。正直、嬉しい誤算だった。
「あ、えっと私の名前はソフィア=ノエルです。貴方は?」
「俺は如月 優斗です。……服汚しちゃって、すみません。」
俺は、ソフィアさんの服を見て申し訳なくなった。
守るためとはいえ、結構、高そうな服を汚してしまったのだ。
罪悪感の一つや二つは俺でも出てくる。
「い、いえ! こんなの全然大丈夫ですよ! それより、ユウトさんは強いんですね!」
「え? ああ。まあ。はい。でも、僕が強いというか、剣が強いというか……。」
ソフィアは、少し不思議そうな顔をしてから、可愛く笑って、
「つまり、強いんですね!」
「あ……。ま、まあ、それでいいです。はい。」
俺は、ソフィアさんの予想の斜め上をいく回答に少したじろぎながら、汚れてしまった服を見つめた。
こんなに高そうな服を魔物の血で汚してしまったのだ。
弁償しないと……。でも、そんな金無いしなぁ。
あ、でも、まだ、汚れたばかりの血ぐらいなら、この娘の家に行けば落とせるかな?
「美少女の一人歩きは危険だし、家まで送りましょうか?」
「え!? いいんですか!」
「いいですよ! 美少女だし俺も大歓迎!」
俺がそう言うと、ソフィアさんはパァっと顔を輝かせた。
……ぐぐぐ。今の表情を見て、一瞬胸がキュンとしてしまった……。か、可愛すぎるだろ……。
なんだこの生き物。人なのか? いや、もう可愛いからなんでもいいわ。可愛いは正義!
俺が、そんなことを考えながら、ソフィアさんをまじまじと見つめていると、
「そ、その、そんなに見つめられると恥ずかしいです……。」
ソフィアさんが俺から目を逸らし、恥ずかしそうに顔を赤くした。
『ズキューンッ!(←胸を打ち抜かれた擬音です)』
俺の中でそんな音が鳴り響いた。
……だめだ……。本当に可愛い。完全に胸を射止められた……。
お、俺の理性はちゃんと持つはずだよな……?
流石に今日、会ったばかりの人をいくら可愛くたって襲うような非常識なやつじゃない。……多分。
「ど、どうしたんです? なんか目が虚ろですよ?」
ハッと我に返る俺。
「い、いや、君のことを守れたのはいいけど……、君の貞操を守れないかもしれない……。」
「……え? それってつまり……」
はたまた、ハッとする俺。
「ぐぁぁぁぁぁ!? 何を言ってるんだ俺は!? すみません! 今のは聞かなかったことにしてください!」
「そ、それは無理だと思いますけど。……でも、そんなもの、もうすぐ無くなってしまうので、守っても意味無いですけどね……。」
ソフィアさんが悲しそうな寂しそうな顔で空を見上げた。
「え? どういうこと?」
俺は、言葉の意味を理解出来ず、首を傾げる。
すると、ソフィアさんは少し押し黙ってから、
「私、親にあと、1ヵ月丁度で、政略結婚させられるんです……。分かってた運命ですけど、近づいてくると、どうにも、心が落ち着かなくて……。」
「政略結婚……ね。ソフィアさんは嫌なんですか?」
「……まあ、愛のない結婚なんて、女の子は誰しも嫌ですよ。こんな貴族の暮らしなんていいから、普通に結婚して、普通に毎日を過ごして、普通に死んでいけたら、どんなに幸せだったか……。」
ソフィアさんが暗い顔で言った。
その横顔はそこはかとなく悲しそうで、俺の胸をギュッと締め付けた。
貴族。
俺は、それをただただ、遊び暮らすだけの市民の敵だと思っていた。でも、本物の貴族は違った。
優雅な暮らしなど、どうでもいいから、普通に暮らしたい。
いや、もしかしたら、ほとんどの貴族が、そう望んでいるのかもしれない。
家系という名の鎖に縛られない自由な暮らし。
今、この目の前に立つ少女は、それがどんなに幸せか、と言った。
それを聞いた俺は、安心させようと何か言おうとしたが、無理だった。
俺には、この貴族の少女の辛さがわからない。
相手の辛さが分からない者が、励ましの言葉をかけたところで、それは所詮、励ましにしかならない。
相手の心の底まで、伝わるような言葉はかけられないのだ。
そんな俺が咄嗟に言えたのは一言。
「……嫌なんだったら、我慢しないで逃げ出した方がいいですよ。」
苦し紛れの言葉だった。
でも、それしか、かけられる言葉が見つからなかった。
しかし、それに対するソフィアさんの反応は、想像以上のものだった。
ソフィアさんの頬を、太陽の輝きに反射して輝く、神秘的な液体がを伝っていた。
「あ、あれ? 私、泣いてる? 久しぶりに優しくしてもらえたからかなぁ……。」
ソフィアさんは、涙に顔を濡らしながら、寂しく笑った。
「……ありがとうございます。……なんか、ユウトさんのお陰で元気でました。」
「お、おお。そうですか。よかったよかった。じゃ、そろそろ行きましょうか。」
俺は、この雰囲気を紛らわそうと、空間転移を使おうとして、重要なことに気づいた。
……お、俺、空間転移のやり方わかんねえ……! よし! ここは!
『なあなあ、クロノス! 空間転移ってどうやるんだ?』
『ん? 空間転移は、とりあえず集中して、行きたい場所を思い浮かべて、なんかそれっぽいの唱えると出るぞ。やってみろ。』
ああ……。もうお前には聞かんわ。そんなので分かるわけねえだろ。アホか?
しかも、行きたい場所がわからなきゃダメなのか。
うーん。近くの街に一旦転移してから行くか。しょうがない。
「あのー、どこの街にあるんですか? ソフィアさんの家。」
「えっとですね。ダーマ王国の、アストラル地区なんですけど、分かります?」
……あそこ、地区に分かれてたんだな。いや、まあ、一つの王国って言うにはデカすぎるとは思ったけどさ。
「すみません。俺、ダーマ王国は分かるんですけど、アストラル地区がどこか分からないので、教えてもらえます?」
「そ、そうですか。えっとですね、ダーマ王国の門入って、すぐの所です。というか、門からある程度のところまでアストラル地区です。」
「門から入ってすぐか……。よしよし、あの辺だな。こっち来てください。」
俺が手招きをすると、ソフィアさんが不思議そうな顔をしながら近づいてきた。
「歩かないんですか?」
「あ、えっと、多分、空間転移ぐらいならできるので。」
「……え?」
何言ってんの? とでも、言いたげな表情をしているソフィアさんの顔を見た俺は、
「まあ、見た方が早いでしょうから、よーく見ててくださいね?」
俺は、(必要ないのかもしれないけど)クロノスを地面に突き刺して、とりあえず集中して、門の目の前の光景を思い浮かべ、なんかそれっぽいのを唱えた。
すると、地面に突き刺したクロノスから、少し小さな魔法陣が展開され、小さくピカっと光った。
俺の視界が真っ白になり、次の瞬間には、あの門の目の前にいた。
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