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ミンス
ルミナス五才
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マジンが海から拾ってきた女達がポロポロと産み落とす赤ん坊達によってローゼンヘン館は保育園のような様相を呈していた。
ローゼンヘン館は大きく作られてはいたが、城塞というよりは学舎のようなつくりをしていて広くはあるが物が散らかっていたから広さは余り感じなかった。
マジン自身が館の広さに任せて家具や家財という建物の中の物を余り熱心に確かめなかったことも館の中が片付かなかった原因であった。十数年扉を開けていない部屋がいくらもある。
ローゼンヘン館に千人あまりの女達が飛び込んで来れたのも、鉄道が食料を潤沢に運び様々な経緯で便利に整備された厨房が十分に機能していたからで、文明のおかげではあったが、この後の八百だかの赤ん坊の数を考えれば流石に何とかする必要があった。
八百人も妊婦がいると日に二三人は生まれる勘定で、身分が確定していなかったり治療の途中だったりと、さまざまに面倒のある女達をこの先は手下として使うつもりであったマジンとしては放り出すわけにもゆかず、しばらくは館にとどまらせる必要もあり、療養院と産院を兼ねた別棟を北側に建てて備えることになった。
扱いの悪さを経験した女達は狭さになれていたが、生まれたばかりの赤ん坊はそうでもなく、医者たちの作業はそれなりの広さがないと面倒も増した。
今更女たちに館の中を片付けさせて間に合うとも思えない。手が空いているうちに一気に建物を作ったほうが、様々整理をして割り当てるよりも簡単そうにマジンには思えた。
ルミナスは突然に千人を超える女達を引き連れて帰ってきた父親が自分の弟妹を八百人も生ませるつもりだという話を聞いて、パニックに陥ってソラとユエに泣きながら相談していた。
兄のその有様を見てアーシュラは露骨にバカにして、レオナニコラは不思議そうにしていたが、妹達も屋敷の山側に真新しく母屋本館よりも大きくさえ見える産院が建てられ、中の様子を見るまでは八百人の赤ん坊というものが想像できていなかったことを驚きを持って示した。
ルミナスはその時までにすっかり落ち着いていたので、今更の妹二人の反応を兄らしい態度で諌めたりバカにできたりしていたが、事態が彼の手に負える種類のものでないことは明らかだった。
ルミナスはこれまで長男ではあっても、五人の姉がいる兄弟の真ん中やや下だったが、今年一年で八百人あまりのの下の弟妹を導く立場に置かれることになってしまった。
レオナニコラの、これから兄弟の顔と名前を覚えるの大変だね、という無邪気な言葉はルミナスにとって涙がでるほどの衝撃だった。
ルミナスにとってはもう一つ心安らかならぬ事があった。
一つというか四つも五つもあるわけだが、セントーラとその妹シェラルザードの娘三人のことであった。
年の頃、姉とさして変わらない年の頃のシェラルザードの娘二人がその母と同じく子供を孕んでいた。そのことも大いにルミナスの心をざわめかせたが、ミンスがそれを咎めるようにルミナスを見つめることに、彼の胸は傷んだ。
彼女たちは皆、あとから来た女達と同じようにルミナスを若様と扱っていたが、一番下のミンスは刺すような眼でルミナスを睨んでいた。
理不尽なその感情の意味がわからずルミナスは悶々としていた。
ゲリエ村の学校は私塾らしくわりと戸口をゆるく作っていて、子供たちが大勢で自分たちの課題で読み書き算盤を学ぶような、体制になっていた。
ある程度の年齢わけ級分けはしていたが、余りこだわっているわけではなく、子供たちは仲の良い子どもとまとめて扱って勉強をする、というゆるい集まりで物覚えも教え方も上手な子供であるルミナスは助教のような立場で、ここでも若様と皆から慕われていたが、どうやらミンスには嫌われている様子で、どうも上手くゆかない様子だった。
アーシュラとレオナニコラがミンスとの仲を取り持ってくれる努力をしたが、どうも上手くゆかなかった。
クァルとパミルはなにか心あたりがあるようでもあったが、気長にお付き合いくださいませ、と云うばかりだった。
八百人も弟妹が増えるとあれば、一人二人の女のことでグジグジしない、と元来大雑把な様子のアーシュラはルミナスをどつくように元気づけたが、ルミナスにとってはそういうわけにもゆかなかった。
なにせ母親たちが軍務に付く間、ルミナス達兄妹はローゼンヘン館に住まうことになっていて、その間、嫌でもミンスとは食事の席で一緒になる。マジンがそう決めた。
理由はセントーラがローゼンヘン館の家宰だからだという。
ウェッソンやリチャーズのような大人たちもまぁセントーラは家宰でしょうなぁ。というのではルミナスには為す術もなかったが、ともかく彼には口の中に砂が入ったような鼻の奥に何かが引っかかったような感じだった。
ローゼンヘン館は大きく作られてはいたが、城塞というよりは学舎のようなつくりをしていて広くはあるが物が散らかっていたから広さは余り感じなかった。
マジン自身が館の広さに任せて家具や家財という建物の中の物を余り熱心に確かめなかったことも館の中が片付かなかった原因であった。十数年扉を開けていない部屋がいくらもある。
ローゼンヘン館に千人あまりの女達が飛び込んで来れたのも、鉄道が食料を潤沢に運び様々な経緯で便利に整備された厨房が十分に機能していたからで、文明のおかげではあったが、この後の八百だかの赤ん坊の数を考えれば流石に何とかする必要があった。
八百人も妊婦がいると日に二三人は生まれる勘定で、身分が確定していなかったり治療の途中だったりと、さまざまに面倒のある女達をこの先は手下として使うつもりであったマジンとしては放り出すわけにもゆかず、しばらくは館にとどまらせる必要もあり、療養院と産院を兼ねた別棟を北側に建てて備えることになった。
扱いの悪さを経験した女達は狭さになれていたが、生まれたばかりの赤ん坊はそうでもなく、医者たちの作業はそれなりの広さがないと面倒も増した。
今更女たちに館の中を片付けさせて間に合うとも思えない。手が空いているうちに一気に建物を作ったほうが、様々整理をして割り当てるよりも簡単そうにマジンには思えた。
ルミナスは突然に千人を超える女達を引き連れて帰ってきた父親が自分の弟妹を八百人も生ませるつもりだという話を聞いて、パニックに陥ってソラとユエに泣きながら相談していた。
兄のその有様を見てアーシュラは露骨にバカにして、レオナニコラは不思議そうにしていたが、妹達も屋敷の山側に真新しく母屋本館よりも大きくさえ見える産院が建てられ、中の様子を見るまでは八百人の赤ん坊というものが想像できていなかったことを驚きを持って示した。
ルミナスはその時までにすっかり落ち着いていたので、今更の妹二人の反応を兄らしい態度で諌めたりバカにできたりしていたが、事態が彼の手に負える種類のものでないことは明らかだった。
ルミナスはこれまで長男ではあっても、五人の姉がいる兄弟の真ん中やや下だったが、今年一年で八百人あまりのの下の弟妹を導く立場に置かれることになってしまった。
レオナニコラの、これから兄弟の顔と名前を覚えるの大変だね、という無邪気な言葉はルミナスにとって涙がでるほどの衝撃だった。
ルミナスにとってはもう一つ心安らかならぬ事があった。
一つというか四つも五つもあるわけだが、セントーラとその妹シェラルザードの娘三人のことであった。
年の頃、姉とさして変わらない年の頃のシェラルザードの娘二人がその母と同じく子供を孕んでいた。そのことも大いにルミナスの心をざわめかせたが、ミンスがそれを咎めるようにルミナスを見つめることに、彼の胸は傷んだ。
彼女たちは皆、あとから来た女達と同じようにルミナスを若様と扱っていたが、一番下のミンスは刺すような眼でルミナスを睨んでいた。
理不尽なその感情の意味がわからずルミナスは悶々としていた。
ゲリエ村の学校は私塾らしくわりと戸口をゆるく作っていて、子供たちが大勢で自分たちの課題で読み書き算盤を学ぶような、体制になっていた。
ある程度の年齢わけ級分けはしていたが、余りこだわっているわけではなく、子供たちは仲の良い子どもとまとめて扱って勉強をする、というゆるい集まりで物覚えも教え方も上手な子供であるルミナスは助教のような立場で、ここでも若様と皆から慕われていたが、どうやらミンスには嫌われている様子で、どうも上手くゆかない様子だった。
アーシュラとレオナニコラがミンスとの仲を取り持ってくれる努力をしたが、どうも上手くゆかなかった。
クァルとパミルはなにか心あたりがあるようでもあったが、気長にお付き合いくださいませ、と云うばかりだった。
八百人も弟妹が増えるとあれば、一人二人の女のことでグジグジしない、と元来大雑把な様子のアーシュラはルミナスをどつくように元気づけたが、ルミナスにとってはそういうわけにもゆかなかった。
なにせ母親たちが軍務に付く間、ルミナス達兄妹はローゼンヘン館に住まうことになっていて、その間、嫌でもミンスとは食事の席で一緒になる。マジンがそう決めた。
理由はセントーラがローゼンヘン館の家宰だからだという。
ウェッソンやリチャーズのような大人たちもまぁセントーラは家宰でしょうなぁ。というのではルミナスには為す術もなかったが、ともかく彼には口の中に砂が入ったような鼻の奥に何かが引っかかったような感じだった。
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