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6 もう二度と受けを見失いたくなくて憎まれ口は言わなくなった攻めx王家御用達の花屋になる受けの話。(2023.06.26)
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魔力が強いほど偉いと言われる世界。
大抵の貴族は魔力を持っているのが当たり前。
なのに子爵令息の受けは魔力が発現しないまま、貴族学園に入学してしまった。
弟の方が先に強力な魔力を発現してしまい、受けは焦っていた。
勿論個人差もあるので、学園にはまだ未発現の生徒も数名だけどいる。未発現の生徒だけが集められた特別指導クラスでの勉強がスタートした。
でも、クラスメートは成長と共に魔力を発現して、どんどんクラスから卒業していく。
他のクラスの奴らからは馬鹿にされ、覚えたての魔法の実験台にされたりしても、残った三人で励まし合っていたからなんとか踏ん張れた。
三人の内、受けは子爵、ぽわわんとしてる優しいAは男爵。
残る一人はプライドの高い上位貴族(攻め)で、最初は
「俺はすぐにこんなクラスを卒業する! 馴れ合いなんてしない!」
とツンケンしていた。
何もかもがうまくいかなくて苛つく攻めを見てAは、
「めんどくさ~」
と笑って放置。だけど受けは、攻めが「このままだと嫡男から外される」と呟いていたのを聞いていたので、放って置けなかった。
「肩の力を抜きなよ」
「ほら、食堂に行こう?」
などと言っては構い続ける。
「受けはもっと焦ろよ! お前だって同じだろ!」
と攻めに言われるけど、受けは
「うちには優秀な弟がいるし」
と笑っていた。これには理由があった。
来年入学してくる弟は、なんと首席。親からは、一年経ってもだめだったら、一族の汚名となって優秀な弟の足を引っ張るから退学しなさいと言われていた。
退学したら、後を継ぐことも婿入りもほぼ無理。でも魔力はちっとも発現してくれなくて、受けも内心では「どうしよう」って不安だらけだった。だけど、攻めを励ましてる手前何でもないって顔をしてた。
すぐムキになる意地っ張りの攻めがなんだか可愛くて心配で、放って置けなかったのだ。
そうこうしているうちにAは魔力が発動して、クラスを卒業。でも「他の奴らと合わなくて~」と言いつつ、いつも受けに会いにきていた。
攻めは少しずつ魔力が出せるようになってきていたけど、ものすごく不安定。一年の最後の試験中にうまく発動できなければ、嫡男キープも危うい。
すると受けが試験前に、
「攻めならできる、大丈夫」
と励ます。
受けの言葉でスッと落ち着いた攻め、ここでようやく本領発揮。
無事に試験をパスし「受けに報告くらいはしてやるか!」と探していると、試験に不合格になった受けを見つける。
優しい声をかけようとした攻めだったけど、拗らせてるから
「ふ、ふん!予想通りの結果だったな!」
と言ってしまう。
見に来ていたA、
「……何にも知らない癖に!」
と落ち込む受けの肩を抱いて攻めの前から消える。取り残された攻め。今のは自分が悪い。これまで沢山励ましてくれた受けに対してあまりにもな態度だったと猛省した。
長期休暇に入るので、新学年になったら謝って今度は自分が励まそう、と決意。
だけど、新学期になっても受けが見当たらない。探して探してようやくAを捕まえて事情を問い詰めると、親に退学させられていたことを知り、ショックを受ける。
「居場所を知ってるか? 謝りたいんだ……!」
受けが攻めに仄かな恋心を抱いていたことに気付いていたAは、
「お前が最後のダメ押しをしたんだ。これ以上あいつを傷つけるな」
と普段とは全く違う調子で攻めを牽制した。
それでも諦めきれない攻め。
何だか分からないけど、事ある毎に受けの励ましの笑顔を思い出してしまう。
新入生の主席が受けの弟だと聞いて近付く。
その頃には努力家なお陰もあって結構魔力の扱いも上手になっていて、回りから一目置かれるようになっていた攻め。
弟に受けのことを聞くと、
「ああ、あの落ちこぼれ? 我が家の恥だから、支度金だけ与えて家から追い出しましたよ」
と返ってきた。
聞けば、貴族籍も剥奪し、遠い親戚(平民)の家が子供がいないからと養子に出してしまったらしい。
「僕は元兄さんと違って優秀ですよ。どうです僕と友人に……」
と弟が言ったのを聞いてブチギレ。
「受けに比べたらお前はクズだ!」
と言い捨てると、何とかして受けを探し出そうと考え始める。
だけど今更弟に聞けず、受けの実家に手紙を書くも「もうあれはうちの人間ではありません。弟は優秀で~」という返事があっただけ。
週末の度に当て所なく探す受けだったけど、ある時Aが贈り物の包みを持って出かけるところを目撃。
それまでにはAが受けを好きなんじゃないかと疑っていた攻めは、こっそり後をつけることにしてみた。
Aが向かったのは、王都のハズレの方。畑の多いのどかな地区。
その中の一軒家のドアをノックすると、中から出てきたのはずっと探していた受けだった。
贈り物をもらって嬉しそうに笑う受けを見て、愕然とする攻め。
「自分はあいつにあんな笑顔をさせたことはない」
と気付き、Aが受けの肩を抱いて家の中に入っていってしまったのを見て、すごすごと帰る。
悶々と過ごす攻め。
でもどうしても受けにもう一度会って謝りたくて、週末になるとこっそり受けを木のかげから覗き見る。
今日こそ話しかけよう! と王都で人気のお菓子を買ってきても勇気が出なくて、誰も居ない時にこっそり窓枠にいて帰ることしかできない。
受けはここのところ窓枠にお菓子やらなにやら置いてあるのを不思議に思っていたけど、王都でしか買えないものばかり。
Aは知らないと答えるし、一体誰だろうなんて考えていた。まさか攻めなんて夢みたいなことはないよねーと考えて、ちょっぴり寂しくなる受け。
受けが養子に貰われたのは遠い親戚の家で、平民の優しい養父母がいる。
これまで優秀でなかった故に厳しく躾けられていた受けには、こちらの家の方が暖かく感じられた。
だけどAは貴族だ。平民とあんまり仲良くしたら問題になるんじゃないかと心配になってAに聞く。だけどAは
「男爵家の三男だし~関係ない関係ない!」
と言ってくれたので、これまで通り交流を続けることにした。
でもプライドの高い上位貴族の攻めは、自分が平民になったと知ったら笑うかなあ……なんて考えて勝手に凹む受け。
「いつか立派になって堂々と会えるようになりたいな」
と考え始めた受け。平民になった以上は対等な立場にはなれないのは分かっていたけど、それでもいつかまた話せる日を夢見た。
それからもしょっちゅう窓枠に贈り物があって、最近はひとことメッセージが付けられる様に。
「応援してる」とか書いてあって、嬉しくなる受け。
なんだか心が温かいなと思ったら、ぽわんと何かが身体から出てきて、もう枯れかけていた花瓶に差さった花が生き返った。
「えっ」と驚く受け。
養父母は花農家で花壇がいっぱいあるので、もしかして、と試しに花壇にいって温かい気持ちを思い出しながら祈ると、蕾だった花が咲きまくる。
養父母は優しかったけど、正直受けは自分があまり役に立てていなかったと感じていた。だけどこれなら役立てる、と大喜びで養父母に報告。
養父母は喜んでくれたけど、
「魔力が発現したなら家に戻った方が」
と言い初めてしまった。受けは
「ううん、ここにいたい。ふたりと一緒にいたい」
と抱きつく。養父母は泣いて喜んで、受けを抱き締め返した。
色々と試した結果、受けの魔力を浴びた花は早く成長し、長持ちすることが判明。
Aも来て色々と調べてくれて、「生命力を与える魔力」と断定する。
そんなことは知らない攻め、受けが「感謝の気持ちを伝えたい」と隠れて訪れるのを待っていたところにやってきて、今日も窓枠に贈り物を置く。
思わず窓の向こうから顔を覗かせる受け。攻めは驚きすぎて腰を抜かす。
「な、な、働いている時間じゃ……!」
「これ……攻めからの贈り物だったんだね」
感動して泣き出す受け。
攻めは腰を抜かしたまま、受けの腕を掴んで引き寄せる。
「ずっと謝りたかったんだ。酷い言葉を投げつけてごめん。あと、ずっと言いたかった。ありがとうって」
試験に合格したのは、受けのことを考えたら心が暖かくなってできたことなんだと伝えると、受けが泣いた。
「僕の魔法も、贈り物をくれた人の温かい気持ちを考えたら自然と出てきたんだ」
と伝えると、攻めは耐えきれなくて受けを抱き締める。
「意地っ張りでごめん。受けが学校を辞めたと聞いた時、気付いたんだ。俺は受けが好――」
と告白する寸前に、
「攻め、なにやってんの!?」
と二人を引き剥がすA。
「俺は受けが好きなんだ!」
「僕だってずっと好きなんだ!」
とにらみ合いを始める攻めとA。受けは「え? そうだったの?」とおどろく。
「どちらが受けを幸せにできるか勝負だ!」
「受けて立つ!」
と何故か競争を始める二人。
貴重な魔力がばれて実家に連れ戻されたら堪らない、と囲い込みを開始する攻め。
だけど攻めもAもまだ学生で寮暮らし。ついこの前まで仲が悪かった二人が週末になると一緒に出かける姿を見た受けの弟が「怪しい」と調べて、追い出した受けに貴重な魔力があることを知ってしまう。
受けは穏やかに暮らしたいので花農家の事業を広げて安定させるのを目標にしていた二人だったけど、弟は「使えそうだ」と受けを無理やり連れ帰ろうとする。その際、嫌がる受けに言う事を聞かせようとしたのに腹を立てた弟、花畑を燃やしてしまう。
「金を払えばいいだろう」と言い捨てる弟に、受けは初めて反抗して頬を叩き、叱りつける。
「いくら魔力があっても、使い方が間違っていたら駄目人間だ!」
逆ギレして受けをぼこぼこにする弟。
Aが魔法で鎮火する中、攻めが助けに入る。
攻めが弟をぼこぼこにして、Aが「火事を起こした」と警ら隊に突き出した。
養父母は無事だったけど花畑が……と自分が悪い、消えたいと責める受け。
「そんなことない、受けがいるだけで自分は幸せ」
と攻めが滅茶苦茶口説く。
すると受けの身体が輝き、焼け野原から花がニョキニョキ。
花畑は前よりも咲き乱れて、
「僕も攻めが好き……!」
と泣く受けを見て、Aは「あーあ、やっぱりこうなるか」と悔しいながらも諦める。
攻めは怪我をした受けを実家に連れて帰ると、受けの愛らしさに家族はメロメロ。(同性婚が認められている世界)
あれこれやってあっという間に攻めの婚約者になる。
平民の畑を燃やしたと噂になり、以降は大人しくなる弟。
怪我が治ると受けは養父母の元に戻り、攻めの実家全面バックアップの上事業拡張開始。
花畑に行くと、いつも笑顔で魔力を放つ受けの姿と、その隣で幸せそうにその笑顔を見つめる攻めの姿が見られるようになったとさ。
尚、Aに「一度やってみろ」と花農家の手伝いをさせられている内に高かった鼻がぽっきり折れて、弟がAを追いかけ回すようになるのはまた別の話。
大抵の貴族は魔力を持っているのが当たり前。
なのに子爵令息の受けは魔力が発現しないまま、貴族学園に入学してしまった。
弟の方が先に強力な魔力を発現してしまい、受けは焦っていた。
勿論個人差もあるので、学園にはまだ未発現の生徒も数名だけどいる。未発現の生徒だけが集められた特別指導クラスでの勉強がスタートした。
でも、クラスメートは成長と共に魔力を発現して、どんどんクラスから卒業していく。
他のクラスの奴らからは馬鹿にされ、覚えたての魔法の実験台にされたりしても、残った三人で励まし合っていたからなんとか踏ん張れた。
三人の内、受けは子爵、ぽわわんとしてる優しいAは男爵。
残る一人はプライドの高い上位貴族(攻め)で、最初は
「俺はすぐにこんなクラスを卒業する! 馴れ合いなんてしない!」
とツンケンしていた。
何もかもがうまくいかなくて苛つく攻めを見てAは、
「めんどくさ~」
と笑って放置。だけど受けは、攻めが「このままだと嫡男から外される」と呟いていたのを聞いていたので、放って置けなかった。
「肩の力を抜きなよ」
「ほら、食堂に行こう?」
などと言っては構い続ける。
「受けはもっと焦ろよ! お前だって同じだろ!」
と攻めに言われるけど、受けは
「うちには優秀な弟がいるし」
と笑っていた。これには理由があった。
来年入学してくる弟は、なんと首席。親からは、一年経ってもだめだったら、一族の汚名となって優秀な弟の足を引っ張るから退学しなさいと言われていた。
退学したら、後を継ぐことも婿入りもほぼ無理。でも魔力はちっとも発現してくれなくて、受けも内心では「どうしよう」って不安だらけだった。だけど、攻めを励ましてる手前何でもないって顔をしてた。
すぐムキになる意地っ張りの攻めがなんだか可愛くて心配で、放って置けなかったのだ。
そうこうしているうちにAは魔力が発動して、クラスを卒業。でも「他の奴らと合わなくて~」と言いつつ、いつも受けに会いにきていた。
攻めは少しずつ魔力が出せるようになってきていたけど、ものすごく不安定。一年の最後の試験中にうまく発動できなければ、嫡男キープも危うい。
すると受けが試験前に、
「攻めならできる、大丈夫」
と励ます。
受けの言葉でスッと落ち着いた攻め、ここでようやく本領発揮。
無事に試験をパスし「受けに報告くらいはしてやるか!」と探していると、試験に不合格になった受けを見つける。
優しい声をかけようとした攻めだったけど、拗らせてるから
「ふ、ふん!予想通りの結果だったな!」
と言ってしまう。
見に来ていたA、
「……何にも知らない癖に!」
と落ち込む受けの肩を抱いて攻めの前から消える。取り残された攻め。今のは自分が悪い。これまで沢山励ましてくれた受けに対してあまりにもな態度だったと猛省した。
長期休暇に入るので、新学年になったら謝って今度は自分が励まそう、と決意。
だけど、新学期になっても受けが見当たらない。探して探してようやくAを捕まえて事情を問い詰めると、親に退学させられていたことを知り、ショックを受ける。
「居場所を知ってるか? 謝りたいんだ……!」
受けが攻めに仄かな恋心を抱いていたことに気付いていたAは、
「お前が最後のダメ押しをしたんだ。これ以上あいつを傷つけるな」
と普段とは全く違う調子で攻めを牽制した。
それでも諦めきれない攻め。
何だか分からないけど、事ある毎に受けの励ましの笑顔を思い出してしまう。
新入生の主席が受けの弟だと聞いて近付く。
その頃には努力家なお陰もあって結構魔力の扱いも上手になっていて、回りから一目置かれるようになっていた攻め。
弟に受けのことを聞くと、
「ああ、あの落ちこぼれ? 我が家の恥だから、支度金だけ与えて家から追い出しましたよ」
と返ってきた。
聞けば、貴族籍も剥奪し、遠い親戚(平民)の家が子供がいないからと養子に出してしまったらしい。
「僕は元兄さんと違って優秀ですよ。どうです僕と友人に……」
と弟が言ったのを聞いてブチギレ。
「受けに比べたらお前はクズだ!」
と言い捨てると、何とかして受けを探し出そうと考え始める。
だけど今更弟に聞けず、受けの実家に手紙を書くも「もうあれはうちの人間ではありません。弟は優秀で~」という返事があっただけ。
週末の度に当て所なく探す受けだったけど、ある時Aが贈り物の包みを持って出かけるところを目撃。
それまでにはAが受けを好きなんじゃないかと疑っていた攻めは、こっそり後をつけることにしてみた。
Aが向かったのは、王都のハズレの方。畑の多いのどかな地区。
その中の一軒家のドアをノックすると、中から出てきたのはずっと探していた受けだった。
贈り物をもらって嬉しそうに笑う受けを見て、愕然とする攻め。
「自分はあいつにあんな笑顔をさせたことはない」
と気付き、Aが受けの肩を抱いて家の中に入っていってしまったのを見て、すごすごと帰る。
悶々と過ごす攻め。
でもどうしても受けにもう一度会って謝りたくて、週末になるとこっそり受けを木のかげから覗き見る。
今日こそ話しかけよう! と王都で人気のお菓子を買ってきても勇気が出なくて、誰も居ない時にこっそり窓枠にいて帰ることしかできない。
受けはここのところ窓枠にお菓子やらなにやら置いてあるのを不思議に思っていたけど、王都でしか買えないものばかり。
Aは知らないと答えるし、一体誰だろうなんて考えていた。まさか攻めなんて夢みたいなことはないよねーと考えて、ちょっぴり寂しくなる受け。
受けが養子に貰われたのは遠い親戚の家で、平民の優しい養父母がいる。
これまで優秀でなかった故に厳しく躾けられていた受けには、こちらの家の方が暖かく感じられた。
だけどAは貴族だ。平民とあんまり仲良くしたら問題になるんじゃないかと心配になってAに聞く。だけどAは
「男爵家の三男だし~関係ない関係ない!」
と言ってくれたので、これまで通り交流を続けることにした。
でもプライドの高い上位貴族の攻めは、自分が平民になったと知ったら笑うかなあ……なんて考えて勝手に凹む受け。
「いつか立派になって堂々と会えるようになりたいな」
と考え始めた受け。平民になった以上は対等な立場にはなれないのは分かっていたけど、それでもいつかまた話せる日を夢見た。
それからもしょっちゅう窓枠に贈り物があって、最近はひとことメッセージが付けられる様に。
「応援してる」とか書いてあって、嬉しくなる受け。
なんだか心が温かいなと思ったら、ぽわんと何かが身体から出てきて、もう枯れかけていた花瓶に差さった花が生き返った。
「えっ」と驚く受け。
養父母は花農家で花壇がいっぱいあるので、もしかして、と試しに花壇にいって温かい気持ちを思い出しながら祈ると、蕾だった花が咲きまくる。
養父母は優しかったけど、正直受けは自分があまり役に立てていなかったと感じていた。だけどこれなら役立てる、と大喜びで養父母に報告。
養父母は喜んでくれたけど、
「魔力が発現したなら家に戻った方が」
と言い初めてしまった。受けは
「ううん、ここにいたい。ふたりと一緒にいたい」
と抱きつく。養父母は泣いて喜んで、受けを抱き締め返した。
色々と試した結果、受けの魔力を浴びた花は早く成長し、長持ちすることが判明。
Aも来て色々と調べてくれて、「生命力を与える魔力」と断定する。
そんなことは知らない攻め、受けが「感謝の気持ちを伝えたい」と隠れて訪れるのを待っていたところにやってきて、今日も窓枠に贈り物を置く。
思わず窓の向こうから顔を覗かせる受け。攻めは驚きすぎて腰を抜かす。
「な、な、働いている時間じゃ……!」
「これ……攻めからの贈り物だったんだね」
感動して泣き出す受け。
攻めは腰を抜かしたまま、受けの腕を掴んで引き寄せる。
「ずっと謝りたかったんだ。酷い言葉を投げつけてごめん。あと、ずっと言いたかった。ありがとうって」
試験に合格したのは、受けのことを考えたら心が暖かくなってできたことなんだと伝えると、受けが泣いた。
「僕の魔法も、贈り物をくれた人の温かい気持ちを考えたら自然と出てきたんだ」
と伝えると、攻めは耐えきれなくて受けを抱き締める。
「意地っ張りでごめん。受けが学校を辞めたと聞いた時、気付いたんだ。俺は受けが好――」
と告白する寸前に、
「攻め、なにやってんの!?」
と二人を引き剥がすA。
「俺は受けが好きなんだ!」
「僕だってずっと好きなんだ!」
とにらみ合いを始める攻めとA。受けは「え? そうだったの?」とおどろく。
「どちらが受けを幸せにできるか勝負だ!」
「受けて立つ!」
と何故か競争を始める二人。
貴重な魔力がばれて実家に連れ戻されたら堪らない、と囲い込みを開始する攻め。
だけど攻めもAもまだ学生で寮暮らし。ついこの前まで仲が悪かった二人が週末になると一緒に出かける姿を見た受けの弟が「怪しい」と調べて、追い出した受けに貴重な魔力があることを知ってしまう。
受けは穏やかに暮らしたいので花農家の事業を広げて安定させるのを目標にしていた二人だったけど、弟は「使えそうだ」と受けを無理やり連れ帰ろうとする。その際、嫌がる受けに言う事を聞かせようとしたのに腹を立てた弟、花畑を燃やしてしまう。
「金を払えばいいだろう」と言い捨てる弟に、受けは初めて反抗して頬を叩き、叱りつける。
「いくら魔力があっても、使い方が間違っていたら駄目人間だ!」
逆ギレして受けをぼこぼこにする弟。
Aが魔法で鎮火する中、攻めが助けに入る。
攻めが弟をぼこぼこにして、Aが「火事を起こした」と警ら隊に突き出した。
養父母は無事だったけど花畑が……と自分が悪い、消えたいと責める受け。
「そんなことない、受けがいるだけで自分は幸せ」
と攻めが滅茶苦茶口説く。
すると受けの身体が輝き、焼け野原から花がニョキニョキ。
花畑は前よりも咲き乱れて、
「僕も攻めが好き……!」
と泣く受けを見て、Aは「あーあ、やっぱりこうなるか」と悔しいながらも諦める。
攻めは怪我をした受けを実家に連れて帰ると、受けの愛らしさに家族はメロメロ。(同性婚が認められている世界)
あれこれやってあっという間に攻めの婚約者になる。
平民の畑を燃やしたと噂になり、以降は大人しくなる弟。
怪我が治ると受けは養父母の元に戻り、攻めの実家全面バックアップの上事業拡張開始。
花畑に行くと、いつも笑顔で魔力を放つ受けの姿と、その隣で幸せそうにその笑顔を見つめる攻めの姿が見られるようになったとさ。
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