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11 ドジっ子受けの面倒みるのが幸せ過ぎる世話焼き系攻めx不幸体質と信じている受け/七夕BL(2023.07.07)
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昔から不運続きの受け。
友達と歩いていても水たまりの水を引っ被るは自分ばっかりだし、自動販売機でサイダーを押すと出てくるのは真夏なのにおしるこだったり。
今日だってそうだ。肝試しはくじ引きなのに、なぜかあぶれてひとりで歩かないといけなくなってしまった。
同級生の奴らはちゃんと女子とペアを組んでるのに、女子のひとりが熱を出して来られなくなったからだった。
「山を登った先に半分腐った鳥居がありまーす! そこに短冊が置いてあるから、自分の短冊を持ってきてこの笹に付けたらオッケー! じゃあ1組目からどうぞ!」
クラスの中心的存在のチャラ男が仕切る。
そもそもの言い出しっぺもこいつで、明日は七夕だからクラスのみんなで肝試ししようなんて突然言い始めた。
明るくてイケメンのチャラ男は、渋る受けも誘った。
そもそもグループ違うじゃんと思ったけど、「人数合わせで! お願い!」と言われてしまえば、基本断れない受けは頷くしかない。
そして結果はこれだ。何が楽しくてひとりで暗い参道を歩かないといけないのか。
受けが悶々としている間にも、ひと組戻ってきてまた次の組が出発している。
オカルトが苦手な受け、本当に嫌で、笹を持って仕切っているチャラ男の元へ。
「ねえ。俺数合わせだったし、帰っていい?」
すると何故かチャラ男が思い切り動揺する。
「えっ!? ま、待ってよ! 相手いないの!?」
「女子ひとり足りなくて」
「えっ! くじ運もわる……いや、じゃあ俺と行こう!」
何か聞こえたけど軽く睨むとチャラ男は頭を掻いてテヘヘと笑った。
全員戻ってきたところで、チャラ男が中のひとりに花火を渡す。
「ついでに上の片付けもしてくるから、みんなは先に河原で花火始めてて!」
と言うチャラ男に、女子は「えー」とか言ってたけど男子は「オッケー!」と女子たちを引っ張っていく。
「じゃあ行こっか!」
「え、あれ参加しなくていいの?」
行って帰ってくる頃には花火が終わってそうだ。
するとチャラ男はポケットから線香花火とライターを取り出してウインクする。
「これだけ確保しといたからさ、あとでやろうよ」
大勢でワイワイやる輪に入るのが苦手な受けは、チャラ男と二人静かにやるならいいか、と頷く。
てことで、いざ暗い参道へ。
懐中電灯は「受けが持つと電池切れそう」と言われてしまい、チャラ男が持った。
でも明かりが手元にないと怖い。
そんな受けの様子を見てニヤつくチャラ男。
「怖い?」
「こ、怖い」
すると、参道横の笹の葉がガササッといって
「うわっ!」
とビビる受け。
階段を踏み外して落ちそうになったところをチャラ男が
「危ない!」
と腕を掴んで引き寄せた。
「……あっぶな」
抱き止められて、この距離なんだよ!? と焦る受け。
「やっぱり危ないな。ほら」
「ほら? なんだよその手」
受けに差し出されたのは、チャラ男の手。
受けが掴もうとしないと、チャラ男は強引に手を繋いでしまう。
「お、おまえな! 男同士でなにを!」
「誰も見てないからいいだろ。危ないんだよ受けは」
と言われて手を繋いで参道を登る羽目に。
恥ずかしいやら情けないやらで落ち着きない受けだけど、チャラ男が話題を振ってくれるので助かった。
「真夏のおしるこは笑えたよな、ほんと」
「あーあれ、結局お前が交換してくれたんだもんな。あの時は助かった!」
どうしてもサイダーが飲みたかったのにおしるこ、しかも小銭がもうなくて凹んでいた受けとサイダーを交換してくれたのは、そういえばチャラ男だった。
「ネタが増えた」なんて言ってアチチとしるこを飲んだチャラ男を見て、「あ、こいつ案外いい奴じゃん」と思ったのがチャラ男と話す様になったキッカケだった。
「あとあれあれ!」
チャラ男が楽しそうに続ける。
「前の日に大雨降ってさ、翌朝快晴だったのに受けがびしょ濡れで登校してきたことあったよな!」
「その節は助かった」
持ってきてたジャージもびしょ濡れでタオルもなくてさてどうしようと思っていたら、チャラ男がタオルとジャージを貸してくれたのだ。
チャラ男のジャージは受けには大きくて、そしたらチャラ男が「彼シャツみたい」と言うので怒った。
そうしたら、チャラ男とじゃれてると周りに思われて、「受けって話せる感じだったんだー!」と割と孤立してた受けがクラスに馴染むキッカケになったのだ。
「あとあれもさー」
次々と出てくる受けの不運話。その全部に手を差し伸べてくれたのはチャラ男だった。
思い返してみれば、受けの不運は全部チャラ男によって楽しかったり優しい思い出に変わっている。
そのことにようやく気づいた受けは、今更だと思いながら、
「チャラ男、その、いつもありがとうな」
と照れくさいながらもお礼を言った。
するとチャラ男が背中に膨れたリュックを背負っていることに気付く。
「チャラ男、そのリュック何が入ってんの?」
近所に肝試しに来るだけの荷物とは思えなくて尋ねると、チャラ男が答える。
「タオルだろ、着替えだろ? あと消毒用の水に、絆創膏に、あといざという時のサンダルに……」
と指を折りながら中身を教えてくれるチャラ男。
「なんでそんな重装備?」
思わず受けが笑うと、チャラ男が答えた。
「だって、お前放っておくと色々やらかすじゃん」
「待て、まさかそのフル装備全部俺用とか?」
いやまさかなんでそこまでこいつがするわけないし、と受けが思い直していたら、チャラ男は「そうだよ」とあっさり言う。
「学校にもフル装備一式置いてるし」
「は?」
「これは外出用フル装備」
「お前何言ってんの?」
「だってお前ドジっ子じゃん」
と薄く笑うチャラ男。いつもの明るい笑顔と違った笑い方に、受けはドギマギしてしまう。
「俺はドジっ子じゃねえ、不幸体質なだけだ」
「いや、大半が前方不注意的なやつだよ」
「断定するなよ」
納得のいかない受け、
「おしるこは前方不注意じゃないだろ!」
とムキになると、チャラ男は
「うん、あれはそうだね」
と穏やかに笑う。
こいつこんな笑い方するやつだったっけ? どうしたんだ自分の心臓、と内心アワアワしている間に、二人は鳥居に到着。
「話してたらあっという間だったろ?」
「お前まさかそれでずっと喋ってたのか?」
「だって受けは怖がってただろ?」
「……お前って本当そういうところ人たらしだよなー」
「そんなことないよ」
と謙遜するチャラ男。
「またまたー」
と言いながら、鳥居の前に置かれたお菓子の箱の中に残った短冊を手に取った。
事前に書いた願い事は、『不運がなくなりますように』だ。高校生の今はチャラ男がなんだかんだと面倒をみてくれてるからなんとかなってるけど、大学に進学したらそうもいかない。
なので、これは結構マジなお願いごとだった。
「で、笹に結ぶんだな」
「はい、これ」
百均で買った偽物の小さめの笹を繋いだ手とは反対の手に持っていたチャラ男が、受けに笹を見せる。
「持ってるから結んでいいよ」
「お前それも持ってきてたのか」
「だって置きっぱなしにしたらゴミだと思われるじゃん」
「そういうところきっちりしてるよなー」
なんて言いながら短冊を結びつけると、自分の短冊の裏側に何か書いてあるのに気付く。
「ん? こんなのあったっけ?」
「読んでみたら」
何故かささやき声のチャラ男。
受けが裏に書かれた字を読んでみると。
『その願い、叶えてあげます。』
とある。
「なんだこれ?」
一体誰が、と思って首をかしげると、いつもはうるさいくらい元気に喋るチャラ男が黙りこくっていることに気付く。まさか。
思わずチャラ男の目を見つめると、チャラ男が「……これ、俺」と真剣な表情をして言った。
「え、ど、どういう、」
「受けが困ったことになったらすぐに助けてあげられる様に、ずっと隣にいさせて下さい」
どういうことだろう? 隣にいるってどういうこと!? と受けが焦りまくっていると。
風がさああ、と吹いてきて、短冊がひとつクルクルと回った。
そこに書かれていた願い事は、『好きな人とずっと一緒にいたい』というもの。名前はチャラ男のものだった。
「え、す、好き……なの?」
「あ、うん」
チャラ男の顔が赤いのは、月明かりと足元を照らす懐中電灯の明かりだけでも分かった。
これまでのチャラ男とのことがあれこれと思い出される。
いつだって受けの隣にいてくれたのはチャラ男で、受けが困ったことになる度に飛んできて助けてくれながら「大丈夫」って笑い飛ばしてくれた。
チャラ男が休んだ日は不安で元気がなくなって、次の日顔を見ると嬉しくなったりしたことを思い出す。
あ、俺チャラ男のこととっくに好きじゃん、と気づいた受け。
受けは「すうっ」と息を吸うと、言った。
「その願い、叶えてあげます」
チャラ男が短冊に書いたのと同じ文章だ。
「受け……本当か!?」
「男に二言はねえ!」
「やばい……! 夢みたい」
と興奮するチャラ男。
「七夕の日にふたりとも願いが叶うなんてすごいな」
と受けが笑うと、チャラ男が天空に広がる天の川を見上げる。
「これだけキレイな天の川だから、会えた織姫と彦星が叶えてくれたのかも?」
なんてクサイ台詞を吐くチャラ男。
チャラ男は笹を鳥居に立てかけ、荷物を置いてからまた受けの手を握る。
「天の川キレイだよ。受けも見たら? 転ばないように俺が見守ってるから」
「お前な、俺が転ぶ前提かよ」
「だってやるでしょ」
「……くううっ!」
てことで、大人しく顔を思い切り上げて星空を見る受け。
ふと気配を感じて横を振り返ると、なんだか堪らなさそうな表情のチャラ男が受けを見つめてきており。
「……キレイだね」
と言った直後、チャラ男の唇は受けの唇に重ねられたのだった。
おわり
友達と歩いていても水たまりの水を引っ被るは自分ばっかりだし、自動販売機でサイダーを押すと出てくるのは真夏なのにおしるこだったり。
今日だってそうだ。肝試しはくじ引きなのに、なぜかあぶれてひとりで歩かないといけなくなってしまった。
同級生の奴らはちゃんと女子とペアを組んでるのに、女子のひとりが熱を出して来られなくなったからだった。
「山を登った先に半分腐った鳥居がありまーす! そこに短冊が置いてあるから、自分の短冊を持ってきてこの笹に付けたらオッケー! じゃあ1組目からどうぞ!」
クラスの中心的存在のチャラ男が仕切る。
そもそもの言い出しっぺもこいつで、明日は七夕だからクラスのみんなで肝試ししようなんて突然言い始めた。
明るくてイケメンのチャラ男は、渋る受けも誘った。
そもそもグループ違うじゃんと思ったけど、「人数合わせで! お願い!」と言われてしまえば、基本断れない受けは頷くしかない。
そして結果はこれだ。何が楽しくてひとりで暗い参道を歩かないといけないのか。
受けが悶々としている間にも、ひと組戻ってきてまた次の組が出発している。
オカルトが苦手な受け、本当に嫌で、笹を持って仕切っているチャラ男の元へ。
「ねえ。俺数合わせだったし、帰っていい?」
すると何故かチャラ男が思い切り動揺する。
「えっ!? ま、待ってよ! 相手いないの!?」
「女子ひとり足りなくて」
「えっ! くじ運もわる……いや、じゃあ俺と行こう!」
何か聞こえたけど軽く睨むとチャラ男は頭を掻いてテヘヘと笑った。
全員戻ってきたところで、チャラ男が中のひとりに花火を渡す。
「ついでに上の片付けもしてくるから、みんなは先に河原で花火始めてて!」
と言うチャラ男に、女子は「えー」とか言ってたけど男子は「オッケー!」と女子たちを引っ張っていく。
「じゃあ行こっか!」
「え、あれ参加しなくていいの?」
行って帰ってくる頃には花火が終わってそうだ。
するとチャラ男はポケットから線香花火とライターを取り出してウインクする。
「これだけ確保しといたからさ、あとでやろうよ」
大勢でワイワイやる輪に入るのが苦手な受けは、チャラ男と二人静かにやるならいいか、と頷く。
てことで、いざ暗い参道へ。
懐中電灯は「受けが持つと電池切れそう」と言われてしまい、チャラ男が持った。
でも明かりが手元にないと怖い。
そんな受けの様子を見てニヤつくチャラ男。
「怖い?」
「こ、怖い」
すると、参道横の笹の葉がガササッといって
「うわっ!」
とビビる受け。
階段を踏み外して落ちそうになったところをチャラ男が
「危ない!」
と腕を掴んで引き寄せた。
「……あっぶな」
抱き止められて、この距離なんだよ!? と焦る受け。
「やっぱり危ないな。ほら」
「ほら? なんだよその手」
受けに差し出されたのは、チャラ男の手。
受けが掴もうとしないと、チャラ男は強引に手を繋いでしまう。
「お、おまえな! 男同士でなにを!」
「誰も見てないからいいだろ。危ないんだよ受けは」
と言われて手を繋いで参道を登る羽目に。
恥ずかしいやら情けないやらで落ち着きない受けだけど、チャラ男が話題を振ってくれるので助かった。
「真夏のおしるこは笑えたよな、ほんと」
「あーあれ、結局お前が交換してくれたんだもんな。あの時は助かった!」
どうしてもサイダーが飲みたかったのにおしるこ、しかも小銭がもうなくて凹んでいた受けとサイダーを交換してくれたのは、そういえばチャラ男だった。
「ネタが増えた」なんて言ってアチチとしるこを飲んだチャラ男を見て、「あ、こいつ案外いい奴じゃん」と思ったのがチャラ男と話す様になったキッカケだった。
「あとあれあれ!」
チャラ男が楽しそうに続ける。
「前の日に大雨降ってさ、翌朝快晴だったのに受けがびしょ濡れで登校してきたことあったよな!」
「その節は助かった」
持ってきてたジャージもびしょ濡れでタオルもなくてさてどうしようと思っていたら、チャラ男がタオルとジャージを貸してくれたのだ。
チャラ男のジャージは受けには大きくて、そしたらチャラ男が「彼シャツみたい」と言うので怒った。
そうしたら、チャラ男とじゃれてると周りに思われて、「受けって話せる感じだったんだー!」と割と孤立してた受けがクラスに馴染むキッカケになったのだ。
「あとあれもさー」
次々と出てくる受けの不運話。その全部に手を差し伸べてくれたのはチャラ男だった。
思い返してみれば、受けの不運は全部チャラ男によって楽しかったり優しい思い出に変わっている。
そのことにようやく気づいた受けは、今更だと思いながら、
「チャラ男、その、いつもありがとうな」
と照れくさいながらもお礼を言った。
するとチャラ男が背中に膨れたリュックを背負っていることに気付く。
「チャラ男、そのリュック何が入ってんの?」
近所に肝試しに来るだけの荷物とは思えなくて尋ねると、チャラ男が答える。
「タオルだろ、着替えだろ? あと消毒用の水に、絆創膏に、あといざという時のサンダルに……」
と指を折りながら中身を教えてくれるチャラ男。
「なんでそんな重装備?」
思わず受けが笑うと、チャラ男が答えた。
「だって、お前放っておくと色々やらかすじゃん」
「待て、まさかそのフル装備全部俺用とか?」
いやまさかなんでそこまでこいつがするわけないし、と受けが思い直していたら、チャラ男は「そうだよ」とあっさり言う。
「学校にもフル装備一式置いてるし」
「は?」
「これは外出用フル装備」
「お前何言ってんの?」
「だってお前ドジっ子じゃん」
と薄く笑うチャラ男。いつもの明るい笑顔と違った笑い方に、受けはドギマギしてしまう。
「俺はドジっ子じゃねえ、不幸体質なだけだ」
「いや、大半が前方不注意的なやつだよ」
「断定するなよ」
納得のいかない受け、
「おしるこは前方不注意じゃないだろ!」
とムキになると、チャラ男は
「うん、あれはそうだね」
と穏やかに笑う。
こいつこんな笑い方するやつだったっけ? どうしたんだ自分の心臓、と内心アワアワしている間に、二人は鳥居に到着。
「話してたらあっという間だったろ?」
「お前まさかそれでずっと喋ってたのか?」
「だって受けは怖がってただろ?」
「……お前って本当そういうところ人たらしだよなー」
「そんなことないよ」
と謙遜するチャラ男。
「またまたー」
と言いながら、鳥居の前に置かれたお菓子の箱の中に残った短冊を手に取った。
事前に書いた願い事は、『不運がなくなりますように』だ。高校生の今はチャラ男がなんだかんだと面倒をみてくれてるからなんとかなってるけど、大学に進学したらそうもいかない。
なので、これは結構マジなお願いごとだった。
「で、笹に結ぶんだな」
「はい、これ」
百均で買った偽物の小さめの笹を繋いだ手とは反対の手に持っていたチャラ男が、受けに笹を見せる。
「持ってるから結んでいいよ」
「お前それも持ってきてたのか」
「だって置きっぱなしにしたらゴミだと思われるじゃん」
「そういうところきっちりしてるよなー」
なんて言いながら短冊を結びつけると、自分の短冊の裏側に何か書いてあるのに気付く。
「ん? こんなのあったっけ?」
「読んでみたら」
何故かささやき声のチャラ男。
受けが裏に書かれた字を読んでみると。
『その願い、叶えてあげます。』
とある。
「なんだこれ?」
一体誰が、と思って首をかしげると、いつもはうるさいくらい元気に喋るチャラ男が黙りこくっていることに気付く。まさか。
思わずチャラ男の目を見つめると、チャラ男が「……これ、俺」と真剣な表情をして言った。
「え、ど、どういう、」
「受けが困ったことになったらすぐに助けてあげられる様に、ずっと隣にいさせて下さい」
どういうことだろう? 隣にいるってどういうこと!? と受けが焦りまくっていると。
風がさああ、と吹いてきて、短冊がひとつクルクルと回った。
そこに書かれていた願い事は、『好きな人とずっと一緒にいたい』というもの。名前はチャラ男のものだった。
「え、す、好き……なの?」
「あ、うん」
チャラ男の顔が赤いのは、月明かりと足元を照らす懐中電灯の明かりだけでも分かった。
これまでのチャラ男とのことがあれこれと思い出される。
いつだって受けの隣にいてくれたのはチャラ男で、受けが困ったことになる度に飛んできて助けてくれながら「大丈夫」って笑い飛ばしてくれた。
チャラ男が休んだ日は不安で元気がなくなって、次の日顔を見ると嬉しくなったりしたことを思い出す。
あ、俺チャラ男のこととっくに好きじゃん、と気づいた受け。
受けは「すうっ」と息を吸うと、言った。
「その願い、叶えてあげます」
チャラ男が短冊に書いたのと同じ文章だ。
「受け……本当か!?」
「男に二言はねえ!」
「やばい……! 夢みたい」
と興奮するチャラ男。
「七夕の日にふたりとも願いが叶うなんてすごいな」
と受けが笑うと、チャラ男が天空に広がる天の川を見上げる。
「これだけキレイな天の川だから、会えた織姫と彦星が叶えてくれたのかも?」
なんてクサイ台詞を吐くチャラ男。
チャラ男は笹を鳥居に立てかけ、荷物を置いてからまた受けの手を握る。
「天の川キレイだよ。受けも見たら? 転ばないように俺が見守ってるから」
「お前な、俺が転ぶ前提かよ」
「だってやるでしょ」
「……くううっ!」
てことで、大人しく顔を思い切り上げて星空を見る受け。
ふと気配を感じて横を振り返ると、なんだか堪らなさそうな表情のチャラ男が受けを見つめてきており。
「……キレイだね」
と言った直後、チャラ男の唇は受けの唇に重ねられたのだった。
おわり
応援ありがとうございます!
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