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4 塩がほしい
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この世界で調味料は貴重品だ。
せめてふんだんに塩を使えたらもうちょっと味わい深い料理が作れる筈だけど、岩塩は高い。交易品になるくらいの高級品だ。
海の塩はどうだろうと思ったけど、この国に海はないらしい。塩湖があると岩塩が採れるけど、塩湖の塩だって元は海水らしいから、海から遠いと岩塩だってないのかもだ。
監督者付きの異世界生活にもローランさんとのふたり暮らしにも、不満はない。むしろ、僕みたいな面白味のない異世界人を善意で受け入れてくれてる彼らには、感謝しかない。
なんだけど。
なんだけど!
「塩っぱいものが食べたい……っ」
塩が簡単に手に入らない地域でも、動物の血肉に塩分が含まれているから死なない程度に塩分は摂取できているんだろう。前に食卓塩を買い忘れて調べたら、そんな情報が手に入った。
でも、所詮は微々たるもの。ピリッとしたアクセントとしては、明らかに不足している。
この際、醤油は諦める。だけどせめて塩! 塩だけはもう少しお気軽に使えないものか。
ローランさんが僕の手料理を褒めてくれる度に、「もっと美味しいのが作れるんです……!」と主張したくて堪らなくなった。元の世界に全部を置いてきたと思っていたけど、食に対する欲だけは残っていたらしい。
……母さんが「美味しい」って言って笑ってくれた思い出が僕の心の中に残っているからかも、だけど。
そんなことを考えつつ、しゃがみながら家の裏側に穴を掘って生ゴミを埋めていると。
突然、頭上から影が差し込んで手元が暗くなった。
なんだろう、と思って上を見上げてみる。
「え……?」
大きな羽が何本も刺さった、えんじ色のツバ付き帽子。どこぞの貴族様ですか? みたいな帽子を被った青い髪の若い男が、僕をじっと見下ろしていた。
ローランさんとよく似た、コバルトブルーの髪。うなじが見えるくらいの短さで、耳からぶら下がったシャラシャラ揺れる金属製のピアスがオシャレっぽい。とりあえずこの村の人は装飾品なんて殆ど付けないから、この辺の人じゃないんだなあと識別はついた。
淡い色のタートルネックに、帽子と同じえんじ色のベストを着ていて、普段生成りの服ばかりなこの村では目立つ。田舎じゃ明らかに浮きまくる格好だったけど、目鼻立ちのくっきりとしたこのイケメンにはとてもよく似合っていた。
男が、観察するように青い目で僕をじっと見つめる。
「……お前、誰? なんでうちの裏で穴掘ってんの?」
その言葉で確証を得た。この人は、ローランさんが溺愛している上級冒険者の息子さんだ。
「あ、あの、僕はローランさんの所でご厄介になっている者で、」
「ん? 親父と住んでる? どーゆーことだ」
息子さんが、一瞬で凄んだ目つきに変わる。覇気をまとうってこういうことを言うんだろうか。背筋がぞくりとした。
抵抗したらもっと酷いことになる。学校で受けていた陰湿で終わりのなかった暴力からそのことを学んでいた僕は、文字通り固まってしまった。
息子さんは僕の横に膝を突くと、まじまじと人の顔を覗き込む。ど、どうしよう。怖い、でもローランさんの息子さんなら雰囲気は怖いけど案外いい人なのかも?
あまりにも見つめられ続けられて、居心地が悪くなりモゾモゾしてしまった。
何か打開策はないか。そ、そうだ、ローランさんを呼べば……!
と僕が思った、その時。
意外な言葉が息子さんの口から飛び出してきた。
「ふーん。確かに、すっげー可愛い顔してんな」
「へ……?」
何を言われているか一瞬分からなくて、思わずぽかんとした。
せめてふんだんに塩を使えたらもうちょっと味わい深い料理が作れる筈だけど、岩塩は高い。交易品になるくらいの高級品だ。
海の塩はどうだろうと思ったけど、この国に海はないらしい。塩湖があると岩塩が採れるけど、塩湖の塩だって元は海水らしいから、海から遠いと岩塩だってないのかもだ。
監督者付きの異世界生活にもローランさんとのふたり暮らしにも、不満はない。むしろ、僕みたいな面白味のない異世界人を善意で受け入れてくれてる彼らには、感謝しかない。
なんだけど。
なんだけど!
「塩っぱいものが食べたい……っ」
塩が簡単に手に入らない地域でも、動物の血肉に塩分が含まれているから死なない程度に塩分は摂取できているんだろう。前に食卓塩を買い忘れて調べたら、そんな情報が手に入った。
でも、所詮は微々たるもの。ピリッとしたアクセントとしては、明らかに不足している。
この際、醤油は諦める。だけどせめて塩! 塩だけはもう少しお気軽に使えないものか。
ローランさんが僕の手料理を褒めてくれる度に、「もっと美味しいのが作れるんです……!」と主張したくて堪らなくなった。元の世界に全部を置いてきたと思っていたけど、食に対する欲だけは残っていたらしい。
……母さんが「美味しい」って言って笑ってくれた思い出が僕の心の中に残っているからかも、だけど。
そんなことを考えつつ、しゃがみながら家の裏側に穴を掘って生ゴミを埋めていると。
突然、頭上から影が差し込んで手元が暗くなった。
なんだろう、と思って上を見上げてみる。
「え……?」
大きな羽が何本も刺さった、えんじ色のツバ付き帽子。どこぞの貴族様ですか? みたいな帽子を被った青い髪の若い男が、僕をじっと見下ろしていた。
ローランさんとよく似た、コバルトブルーの髪。うなじが見えるくらいの短さで、耳からぶら下がったシャラシャラ揺れる金属製のピアスがオシャレっぽい。とりあえずこの村の人は装飾品なんて殆ど付けないから、この辺の人じゃないんだなあと識別はついた。
淡い色のタートルネックに、帽子と同じえんじ色のベストを着ていて、普段生成りの服ばかりなこの村では目立つ。田舎じゃ明らかに浮きまくる格好だったけど、目鼻立ちのくっきりとしたこのイケメンにはとてもよく似合っていた。
男が、観察するように青い目で僕をじっと見つめる。
「……お前、誰? なんでうちの裏で穴掘ってんの?」
その言葉で確証を得た。この人は、ローランさんが溺愛している上級冒険者の息子さんだ。
「あ、あの、僕はローランさんの所でご厄介になっている者で、」
「ん? 親父と住んでる? どーゆーことだ」
息子さんが、一瞬で凄んだ目つきに変わる。覇気をまとうってこういうことを言うんだろうか。背筋がぞくりとした。
抵抗したらもっと酷いことになる。学校で受けていた陰湿で終わりのなかった暴力からそのことを学んでいた僕は、文字通り固まってしまった。
息子さんは僕の横に膝を突くと、まじまじと人の顔を覗き込む。ど、どうしよう。怖い、でもローランさんの息子さんなら雰囲気は怖いけど案外いい人なのかも?
あまりにも見つめられ続けられて、居心地が悪くなりモゾモゾしてしまった。
何か打開策はないか。そ、そうだ、ローランさんを呼べば……!
と僕が思った、その時。
意外な言葉が息子さんの口から飛び出してきた。
「ふーん。確かに、すっげー可愛い顔してんな」
「へ……?」
何を言われているか一瞬分からなくて、思わずぽかんとした。
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